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第75話 どこの世界でもクラス分けはドキドキだよね

受付を終え、魔力測定の会場に進んだレイン。

珍しく緊張するレインだが…。

第75話、よろしくお願いいたします。

 受付を済ませた俺は、シロやシルヴィアとともに次の会場へと進んだ。

 ここでは自分の適正魔力に応じて所属するクラスを決めるらしい。

 体の大きなシロや目鼻立ちの整ったシルヴィアとともにいる俺は、にわかに注目された。

 だが他にも魔獣や従者を連れている新入生もいたので、しばらくすると興味は薄れていったようだ。


 この王都魔法学校は、学生は4つの組みに分けられ、それぞれ日々切磋琢磨するのだと同学校OGのゆるふわ母から聞かされた。


 1つ、風の属性を主とするクラス、ブルードラゴン。

 1つ、火の属性を主とするクラス、レッドフェニックス。

 1つ、土の属性を主とするクラス、シルバータイガー。

 1つ、水の属性を主とするクラス、ブラックタートル。


 自分の魔力量や適性のある魔力属性、その他諸般の事情でクラス分けはなされるが、クラス自体に優劣はなく、自分の得意分野を伸ばしつつ、効率よくその他の魔法や知識を学べるという仕組みだそうだ。


 クラス分けの方法はというと、会場に設置された台座の上に置かれた、俺の背丈程もある巨大な水晶体に手を触れ、魔力を流し込むんだと。

 例えば火の属性に適性を持った者がその水晶に魔力を流し込むと、そこから火の幻影が浮かび上がるらひい。

 そして、その形作られた幻影の大きさや勢いによって、魔力量も測定できるというとのこと。

 そうやって判明した自身の魔力適性や魔力量に応じて、それぞれのクラスに分かれてゆくのだ。


 余談だが、うちのゆるふわ母は、かつてレッドフェニックスクラスに所属していたらしく、件の水晶に魔力を流し込んだ際、巨大な火柱がうねりを上げながら天井まで駆け上がった後、会場中が火の海になり、幻影といえど、教授を含めたその場にいた全員が腰を抜かしたそうな。


(魔力は抑えた方がいいのかなぁ…うーん)


 俺はそんなことを考えながら、色んな人の組分けを見ていた。


 ブオフゥ!!


 うおおお!?


 その時、一際大きな火柱が、複数用意されたうちの1つの水晶から立ち昇り、会場を紅く照らした。

 その大きさと勢いにどよめく会場。


(おお?あの女の子すげぇな…。これはうちの母と同じくレッドフェニックスか?)


「うんうん、なかなかいい炎だね。君の名前は?」


 魔法学校の教授と思しき検査官が、嬉しそうに女の子に尋ねる。


「わ…私は、クワトロ領から来ましたアイラと申します」


 女の子はうつむき加減に答える。


「ほほう。ご両親も魔法使いなのかな?」


「…い…いえ…。実家は農家なんですけど…」


 少しおどおどしながら話すアイラと名乗った少女。


「成程、農家か!素晴らしいじゃないか。今度先生にも君の家で獲れたおいしい農作物を売ってくれ!そして今日は、ご両親にとてもいい手紙が書けそうだね。はい、では次のひとー!」


 優しい検査官の言葉に、アイラと名乗った女の子は丁寧にお辞儀すると、飛び切りの笑顔でスキップしながらその場を立ち去った。


(うんうん、なかなかいい教授じゃあないか。あんな人ばかりならいいんだけどなぁ…)


 それからも俺は、自分の順番が回ってくるまで検査官と新入生のやり取りなどをじっと見ていた。


「おお、なかなかの竜巻だね!君はブルードラゴンへどうぞ!」


「ちょっと水が少ないようだけど、まだまだ覚えられる魔法は多いわよ!ブラックタートルで頑張りましょう!」


「あぁ?貴族だぁ?ここではそんな肩書なんの意味もねぇぞ!?ごちゃごちゃ言わずにレッドフェニックスで精進しろい!」


「君はドワーフか!見事な土の塊だね。ではシルバータイガーで頑張ってくれたまえ!」


(…うんうん、貴族がどうのこうのなんてここでは関係なさそうでよかった~。これは意外にのびのびできる環境かも…。もしかすると考えようによっては、ここが食っちゃ寝の桃源郷なのでは…)


「はい、では次のひとー。どうぞー!」


 検査官が叫ぶ。


 おお、しょうもないことを考えているうちに、どうやら俺の順番が回って来たらしい。

 俺は検査官の方へ進もうとした。

 だがその時。


 ドンッ!


「ぁ痛っ!?」


 突然背中に強い衝撃を感じた俺。


 別に痛くはなかったが、ついつい反射的に声が出てしまった。

 俺はそのまま後ろを振り向く。


 そこにいたのは、背丈は俺の半分程度の小さな男。

 七三分けの金髪に、全身真っ白で統一された派手な貴族の装いだが、その腹はでっぷりと前に突出している。

 …ちょ…ちょっと同級生には見えないぞ?


「邪魔だ、どけ!!お前のようなみすぼらしい奴が私の視界に入るな!」


 男は突然俺に向かって、甲高い声を張り上げた。


「…えぇ…?」


 いきなり子豚のような男に背中を突き飛ばされた挙句、罵声を浴びせられ、俺は強烈な氷の魔法でもかけられたかのように固まってしまった。


「ふんっ!この由緒正しき、アルバトロス男爵家が嫡子、クリントン・アルバトロスを見て恐れをなしたようだな!!わはははは!!そこで彫像のように固まったまま、私の雄姿を見て才能の違いに悔し涙を流し、地団駄を踏むがいい!!」


 ビシッ!っと俺を指さし、そして堂々と順番抜かしをしてのっしのっしと水晶玉の方へと歩み寄っていくクリン(トン)

 彫像は涙を流したり、地団駄は踏まんと思うが…。


「君が先に実施するんだね。さあ、ではこの水晶体に魔力を流し込んでごらん」


「ふん!私は既に高名な魔法使いにより、水の属性に適性があることがわかっているぞ!地の果てまで荒れ狂う水竜を顕現させる我が魔力、その目に焼き付けるがいい!ふははははははははははははは!!」


「…ほら、まだ待ってる子もいるからね。さっさとするよ?」


「…あっ、はい…」


 検査官にたしなめられたクリン豚は小さく返事をすると、ふんぞり返りながら、ぷにぷにした手を水晶玉に添えた。

 そして。


「ほあぁぁぁぁぁぁああああ……!!」


 クリン豚は額に青筋を立てながら、水晶玉に触れた右手に思い切り魔力を込める。

 すると水晶玉が淡く光りはじめたかと思うと、次の瞬間、ほんの少しだけ、表面に水が滴り始める。


(あ…荒れ狂う水竜が出現する兆しか…?)

 

 俺もちょっとドキドキしながら、クリン豚を見守る。


「ぬおおおおおおおあああああああ……!!!」


 なおも必死に魔力を流し続けるクリン豚。

 その鬼の形相は、かなりの迫力を感じさせられる。

 こ…こいつはやはり、凄まじい魔力を保有しているのか…?


 ポタッ…。

 ポタッ…。


 水晶の表面を水滴が流れ、台座から床へ向けて、ほんの少しだけ水がしたたり落ちた。

 

 ここからシルヴィアに勝るとも劣らないような大きさの水の竜が出現するのか…!?

 ドキドキ…。


「ぷっはぁーーーーーー……はあっ!はあっ!はあっ!ど…どうだ…!?私の魔力は!うははは!!」


 え…?

 えぇ…終わり!!?

 ズコーーー!!


 思わず、ズッコケそうになる俺。


「うーん…ちょっと魔力は少ないねぇ…。ま…まあこの学校で学べることは多いからね。気を落とさず、ブラックタートルで頑張ろう?」


 あまりにもクリン豚の魔力量がショボすぎたのか、さしもの検査官も苦笑いでフォローする。


「ば…馬鹿を言え!私の魔力量が少ないだと!?私はこの魔法学校を首席で卒業するため、はるばる来てやったのだぞ!?…いや、私はどうあっても首席で卒業せねばならんのだ!!この水晶体に不備があるのではないか!?…や…やり直しを要求する!!」


「…?別に構いませんが…。どうぞ?」


 検査官は意に介する様子もなく、もう一度水晶で魔力を検査することを承諾した。

 

 …だが再び挑戦したクリン豚の結果は、さっきとまるっきり同じものだった。

 肩を落としたクリン豚は、しょんぼりしながらそのまま立ち去っていった。


(…ク…クリン豚、なんだか哀愁漂う背中だぜ…。貴族とか何とか言ってたけど、従者なんかも連れてきてないのか…?)


 ちょんちょん…。


 その時シルヴィアが、指で俺の肩を突っついてきた。


「にしししし、レイン!ようやくお主の番じゃな!!かっこいいところを見せてくれよ?」


『ワン!ワン!』


「…そ…そんなにプレッシャーかけないでよ…。じゃあ、まあ、行ってきますね」


 俺はシロやシルヴィアに手を振った。


 カツ、カツ、カツ…。


 今日のために両親が仕立ててくれた新しい革のブーツに、心なしか、いつもより小気味よく感じる自分の足音。

 胸はドキドキと早鐘を打ち、ちょっと緊張している。


「はい、君で最後だね?では早速水晶体に魔力を流してね」


「は…はい…」


(うう…やっぱり緊張するなぁ。母もこんな気持ちだったんだろうか…?いや、いやいやいや。うちの母に限ってそれはないな…。特になんも考えず思いっきりやってそうだよな。…ははは…よし。俺もあれこれ考えるのはやめだ!グイッといくぞ…!!)


「ではいきます。要領はよくわかりませんが、()()()()()()()()()()()()()()()()()?」


「…んん…?それはどういう…」


 検査官の頭には?のマーク。

 俺は気にせず、右手を水晶玉へ。

 そして———————。


「…はああああああ…!!」


 ※※


「そろそろ…ですかな…?」


 国王ルーファスの横に立っていた宰相のセドリックは、静かにつぶやいた。


「うん?何か言ったか?」


 ルーファスはセドリックの方に目をやった。


「ええ。おそらく魔法学校で最初の魔力適性検査が始まっている頃かと思いましてな」


 ルーファスはセドリックから目を逸らし、小さくため息をついた。


「セドリックよ…。朝から妙にソワソワしているなと思ってはいたが、それが理由か?」


「…ふっふっふ…。レインフォード君の入学という私の願いが、ようやっと叶いましたのでな…。何通も何通も意中の女性に恋焦がれるような手紙を書きましたぞ…。昔を思い出しましたわい…」


 セドリックは顎髭を撫でながら、静かな口調のまま相槌をうつ。


「ぷっ…くくく…セドリックが…恋文かよ…くくく。し…しかしまあ、そりゃあよかったな。けどレインフォードか…。あいつは規格外過ぎて、学校なんて場所で大人しくしてるタマじゃあないと思うぞ…?学生の成長を促す起爆剤にでもなりゃあいいけどなぁ」


 セドリックのラブレター作戦がよっぽどツボにはまったらしく、半笑いのルーファス。


「にやにやと楽しそうですな、王よ…?先月の串焼き屋台の経費は、国費ではなく、王のお小遣いからきっちり差っ引いておきますからな。…さて王よ、一緒にバルコニーに出てみましょう。あそこは見晴らしもいい。今日は気持ちよく晴れております故、魔法学校の立ち姿も見えましょう」


 がっくりと肩を落とす王を連れ、セドリックはバルコニーの方へ歩いてゆく。


「王よ、先程レインフォード君のことを起爆剤、とおっしゃいましたな?」


「…ん?ああ、言ったぞ。成長を促す起爆剤になってくれりゃあいいと思ってな」


 玉座の間の横に設置された広いバルコニーから、遠く魔法学校を望むセドリック。

 何十年も変わらぬその姿を見つめながら、かつて自分が水晶体に魔力を流した遠き日を思い出す。

 その時だった。


「お…王よ…!あれを…!!」


 セドリックは遠く見える魔法学校を凝視しながら叫んだ。


「うん?…ってええ!?な…なんだありゃ!!?学校から凄まじい火柱が…!?い…いや…火…なのか…?一応火に見えるが…色が…青い…?」


 セドリックやルーファスの目に飛び込んできたのは、渦を巻きながら空高く燃え上がる炎。

 だがその色は輝くように青く、この世界においては誰も目にしたことがないような極大の火柱だった。


 丁寧に装飾の施されたバルコニーの柵。

 それを握っていたセドリックの手の平に、ジンワリと汗が滲む。


「あぁ、消えた…と思ったら、…こ…今度は複数の竜巻だと…?しかも、空の上まで続いてるぞ…?あれは…一体…」

 

 王は遠く人見える光景に自身の目を疑うが、セドリックも同じものを見ているので、夢でないことは確かだ。


「こ…これ程とは…。…王よ、あれこそレインフォード君の力ですよ。起爆剤…?いやいや、そんな言葉では生ぬるい。正しく形容するなら、もはや兵器…いや…天災のレベルですかな…」


「…災害かよ…。大丈夫かそれ…?」


 竜巻がかき消えたかと思うと、今度は学校から凄まじい勢いで、膨大な量の水が吹き出した。

 あれが幻影でなく実体を持ったものであれば、王都まで水没してしまいそうな勢いだ。


 続け様に巻き起こる異様な光景に、城壁の上にいた物見の兵士たちは、一体何が起こっているのかが理解ができず、呆然とその場に立ち尽くす。


「ふふふ…よいのです、これでよいのです王よ。確かに魔法学校は身分の差など関係なく、未来ある若葉たちが平等に魔法を学べる場所です。だが才能溢れる彼らには、そんな環境にだけ満足して成長を止めてもらっては、この国にとって大きな損失となりましょう。…無論、学生だけでなく、それは教授たちにも言えることですがな」


 その時、セドリックはおもむろに右手を前に出した。


 キィーーーーーン…!!


 その右手には強力な風の魔力が凝縮され、小さいながらも暴風渦巻く球体が顕れる。

 そして。


「ふん!!」


 バシュン!!

 

 …ゴトッ…!


 気合いとともにセドリックの右手から放たれた風の刃は、バルコニーの柱の装飾の一部をいとも簡単に切断した。


「セドリック…お前…魔法詠唱を…」


 セドリックは再び顎髭をさすりながら笑う。


「ふふふ…。以前レインフォード君に教えてもらった無詠唱の魔法行使…、私も密かに訓練しておりましてな…。お陰様で、無詠唱の魔法とともに、この歳になって魔力量の底上げもできましたぞ…?」


「ふふっ。…嬉しそうだな、セドリック」


 セドリックはルーファスを見ると、にっこりと笑った。

 その顔は、いたずらに成功した子供のようにも見えた。


 普段は一国の宰相として、眉間にシワを寄せて難しい顔をしているセドリックの、まるで子供のような笑顔に、ルーファスもまた、心の中に温かいものが広がってゆくことを感じた。


「…けど、柱の弁償はお前の給料から天引きだからな?…この柱はガラテア工房への特注らしいから、高いぞ〜?」


「…あっ。私としたことが。ふむ、これは一本取られましたな、柱だけに…」


 ルーファスとセドリックはお互いに顔を見合わせた。


「ぷっ!」


「ぶっ!!」

 

「「わはははははは!!」」


 ふと魔法学校の方を見ると、今度は白く輝く光の柱が立ち上り、学校だけでなく、その周辺の大地までも明るく照らしだしていた。


 その様子はまさに、王国の未来を照らす希望の光が天から降り注いでいるかのようだった。


 いつも応援ありがとうございます!

 よろしければ、下部の

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の所に評価をいただけませんでしょうか。

 ☆が1つでも多く★になれば、作者は嬉しくて、明日も頑張ることができます。

 今後ともよろしくお願いいたします。

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