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第62話 素敵なプロポーズ!?

突然訪ねてきたドラゴンに、レインは…。

第62話、よろしくお願いいたします。

「エ…エ…エンシェントドラゴンって…。あ…あの時の…?」


「うむ。ようやっと思い出したかレインよ。よもや忘れられているのではと思い、この我も少々焦ってしまったではないか」


 再び腕を組み脚を組み、不敵な笑みを浮かべながら、ドカッとソファーにもたれかかるドラゴン少女。

 しかしこの姿は…。


「んん…?なんじゃ、まだ得心がいかぬという顔じゃな。あぁそうか、我のこの容姿故にか?まだあまり術になれておらんでな。しかし、ぐふふふ…そういうことならば…」


 目の前の美しい少女が二ヤリと笑う。

 金色の大きな目の中心、真円を描いていた黒い瞳孔が突如、爬虫類のそれを思わせるような縦長に形を変える。


(ん…?おいおい…。ま…まさか…!?)


「…我の真の姿、とくと思い出すがよーーーい!」


「ちょ…!わー!?待て待て待て待て…!!」


 …バ…バカッ!

 こんな家ん中で————————!!


 ミシミシ…ミシミシ…!

 バキ…バキバキバキ…!!

 ぼっかーん!!


 響き渡る破壊音。

 弾け飛ぶ柱。

 吹き飛ぶ天井。

 踏み潰される家具や調度品。


(あぁ…。や…やっちまったよ…)


『グオォ—————…ン!!』


 眼前に顕現した強烈な存在感。

 改めて間近で見ると、もはやちょっとした山だねこれは…。


「ミ…ミリア…これは夢だよな?」


「あらあらグレン、あなたもそう思う?でも2人でずっと同じ夢を見ていられるなんて、とてもロマンチックじゃないかしら?」


 ソファーに座って()()を見上げたまま、引き攣った笑いを浮かべるマッチョ父。

 ゆるふわ母は微妙に平常運転だが…。


「わー!すごくおおきいです!竜のおねたま!!」


「おお、坊っちゃま…。種族を超えた、なんと広き交友関係…。このフリード、嬉しく思います…」


 エリーは全く怖くないのか、珍しくスタンディングオベーションで大はしゃぎ。

 その傍らでフリードはそっと涙を拭う。


『グワッハッハッハッ…!どうだレイン!我の姿、しかと思い出したか?ほ~らほら、もっともっと近くで見てよいのだぞ?どうした、んん?久し振りの再会に、嬉しくて声も出ぬか?』


 どんな硬いものでも噛み砕くであろう顎。

 立ちはだかるもの全てを容赦なく切り裂くような爪。

 大地に根を張る大木ですら一振りで薙ぎ倒す巨大な尾。


 俺たちの目の前であどけない美少女は、その身を神々しいまでの銀色に輝かせる、巨大なエンシェントドラゴン本来の姿へと変貌させた。


 …無論、本人に悪気はないのだろうが、目の前のバカでかい…いや、馬鹿なでかいドラゴンをマルっと収容できるほどのキャパはうちの応接間にはない。

 国立競技場でもなし、あるわけがないだろう。


(…いっそコイツを丸焼きにして、家の修繕費として素材を売りにでも出すか…)


 目の前で何度もかっこいいポーズを取り、その度に家を破壊していく駄竜に、俺もシロも呆れるばかりであった…。


 ぽかーん。


 ※※


「す…すまぬ…我としたことが…」


 由緒ある屋敷が半壊し、突然青空の下でピクニックをするはめになったプラウドロード家の面々。

 俺たちはもとより、メイドさんや料理人などに怪我人が1人も出なかったことが救いか。


 目の前には、しゅんとなって地面に正座する少女。

 再び巨大なドラゴンから美少女へと姿を変え、申し訳なさそうに小さくなっている。


 俺は父や母に、エルフ村で出会ったドラゴンとの経緯を説明した。

 ふと頭の中に、なぜエリーはこの少女がドラゴンだとわかったのか…という疑問がよぎったが、とにかく今はそれどころではない。


「本当の本当に申し訳ない…いや…ありません…」


「…はぁ。今更起こってしまったことを嘆いても仕方ありません…。幸い怪我人が出なかっただけでもよしとしましょう」


「うぅ…すまぬ…すまぬぅ…」


 俺が肩を落としながらそう言うと、少女はこの世の終わりのような表情で何度も謝りながら、どんどん小さくなってゆく。


「ま…まあほら、ドラゴン殿。ことの経緯はよくわかりました。レインもこう言っておりますし、家はまた建て直せば問題ありません。我々は気にしていませんので、もうそのように落ち込まなくてもよいではありませんか」


「うう…お義父上…こんな愚かな我に対し、なんと優しいお言葉…。我は嬉しいです…」


 あまりの少女の落ち込みようにいたたまれなくなったのか、父も優しく慰める。

 …誰がお義父上だ。


「…まあ、僕としてもお会いするのは久し振りですし、どうせまたお腹を空かしているのでしょう?とにかく、これをどうぞ」


 キィィ—————…ン!


 俺はそう言いながら、右手に光の魔力を集中させる。


(こないだのは確か治癒の光魔法だったか…。けどまあ今は怪我しちゃいないし、一応小さい女の子の姿だし、食べやすそうな飴玉の形でも作ってやるか)


 そんなことを考えながら、俺は光の魔力を小さな飴玉としてイメージして凝縮し、できあがったものを少女の口元へ差し出した。


「…えぇ!?くっ…くく…くれるのか?このような無様な大失敗をしてしまった我に…ウロコ剥ぎ剥ぎの刑に処されても文句言えない我に…。お…お主はそれでも魔力を分けてくれるというのか…?」


 目に一杯涙を溜めながら、今にも消え入りそうな声でつぶやく少女。

 ウロコ剥ぎ剥ぎの刑…?

 …なんだその聞くだけで痛そうな刑罰は?


「…もちろん分けるに決まってるじゃあないですか。さ、どうぞ」


 何をどう勘違いして婚約者などと口走っているのかは知らんが、この光魔力を食べてもらって、ササッとお引き取り願おう。

 確かに見た目はめちゃ可愛いが、ずっとこんなの相手にしてたら、こっちの神経がもたん。


「お…おぉ…?これはまた…凄まじいまでの光の魔力じゃ!安心したぞ…。やはり()()()()()()()()()()()()…?我とてあの時のお主の言葉を胸に、今日まで方々飛び回ってきたからのう…。ぐふふふ…今全てがここに、この小さくとも強く輝く光の魔力に回帰したということなんじゃなぁ…。あぁ…感無量じゃ…」


「…?…それはよかったですね…?」


 今度は一転、俺が創り出した飴玉型光魔力をじっと見つめながら、ブツブツと呟き、何やら自己完結している少女。

 だ…大丈夫か…?

 そして。


「う…うう…うまーーーい!うまいうまいうまい…うっまーーーーーい!!」


 飴玉型光魔力をペロリと口にした少女は、両方のほっぺたを両手で押さえながら飛び上がって喜んだ。

 狂喜乱舞の様子はそれにとどまらず、幸せそうに部屋…とはもはや呼べない場所だが、あちらこちらをぐるぐると飛び回っている。

 おぉ、翼がなくとも飛べるんだな。


「くっふぅううぅぁああ…!!お主の魔力が…我の肉体の…うくっ…隅々にまで…沁み渡る…。ふああああ…!この心の底から…次々に押し寄せる満腹感と充足感よ…!やはり我の心と身体は、もはやレインなくしては生きていけぬ…!」


 これでもかという程飛び回った少女は地面に降り立った。

 今度は顔を真っ赤にしながら、恍惚の表情で俺の手を握ってくる少女。


 ちょ…言い方ね?言い方。

 また母がオロオロし出すだろうが。

 どっかわけわからん場所に連れてかれるだろうが。


「ぐっふっふっふっ!あの闘いの後、突然人の子たるお主からプロポーズされた時は心底驚いたが…。今では受け入れてよかったと、我は心から思うておるぞ、レインよ?」


「え…?プ…プロポーズ…?」


 少女は俺の手に頬擦りしながら、プロポーズ云々とまたぞろ訳の分からないことを言い出した。

 だがその仕草と表情に対し、不覚にもつい顔を赤くしてしまう俺がいる。


(な…なに言ってんだコイツ?プロポーズって一体なんの話だ?誰かと勘違いしてんのか?)


「ふふふ、レインよ。あの時お主は我に言うたな?僕なんかの魔力でよければ、必要なら毎日でも差し上げますから…と。我は知っているぞ?人の世では、その言葉は他ならぬ結婚の申し出たるプロポーズと称する儀式なのであろう?あの時の驚き、そしてそれを上回る喜びと言ったら…。我も雌竜故な…思い出すだけでも恥ずかしいがの…!」


「…あ…」


 …そういや、そんなこと言ったかも…。

 いやいやいや、けどそれはお前…別にそんな意味じゃあ…。

 というか、お宅が雌だったなんて話、今の今まで知らんかったしね!?


 小さな耳の先まで赤く染め、両手で顔を覆う少女を見ながら、あの時のやり取りを思い出して軽率に口走ってしまった言葉に顔を青くする俺。


「いや、その…。確かにそんなこと言ったかもしれませんけど…。ぼ…僕は…そんなつもりじゃあ…」


「ん…そんなつもりじゃあ…なんじゃ?…まさかお主、今さら違うとでも…」


 一瞬不穏な空気が流れ始めたその時だった。


「レイン」


 しばらく黙っていたゆるふわ母が、静かに口を開いた。


 …おぉ、母。

 こんなところで助け舟を出してくれるとは流石!

 マッチョだけが取り柄の逃げ出そうとした父とは違うぜ!

 このドラゴンさんにそれとなく察してもらえるような、画期的な方法をお願いしゃす!


「あなた本当に彼女にそう言ったの?」


「は…はぁ。確かにそんな感じのことは言いましたが…。しかしその時は竜の姿であって…」


「いや~ん、レインったら。いやんいやんいやん!!聞きましたか、グレン?この子ったら、あなたと()()()()()()()()女性にプロポーズしたんだって…。うふふふ…血は争えないわね…」


「ふっ。私の力…これからは毎日君のためだけに捧げよう、か…。覚えていてくれたのか、ミリア」


 鼻の下に手を当て、赤くなる父。

 なんの話だ、おい。


「当然ですわ、グレン。…あぁ、私の愛するグレン」


 熱っぽい視線を父に送る母。

 おいおい、子供の目の前だぞ…って、そうじゃなくですね…。


「ミリア…!」


「グレン!!」


 ひしっ…!


 何やら熱い抱擁を交わし始めるマッチョ父とゆるふわ母。


 おーーーい!?

 さっきから一体なんの話してんだ、両親たちはぁ!?


「うう…シクシク…。お義父上、お義母上…。なんと尊く…そして美しき夫婦の愛よ…。そのようなお二人が歩まれた軌跡…はからずもレインと我が辿っておったとは…。もはや奇跡という他あるまい…シクシク…」


 いや、なんかそんな上手いこと言われても…。


「うんうん、わかるわ。プロポーズっていうのは、それぐらい女の子にとって大事なものですもんね?私だってもしあの時グレンから、ごめん…やっぱり他の女性と…、なんて言われてたら、きっと心臓を中心に、身体の内部から髪の毛一本に至るまで全てを焼き尽くしてしまっていたと思うわ」


「そ…そうか。だが私の選択に間違いなどあろうはずがなかろう、ミリア。私は今こんなにも幸せさ」


 マッチョ父が一瞬顔をこわばらせる。

 ひえ…。

 物理的な恨みの炎こわ…。


「うんうん、そうじゃそうじゃ!我もきっと勘違いなどと言われたら、ショックでこの大陸ごとブレスで消滅させてしまうわい!」


 ほわぁ…!?

 お…俺の言葉一つで、うちだけでなく、この大陸の生きとし生けるものの命運が…。

 こ…これあかんやつや…。

 お宅の考えすぎです、勘弁してくださいよ?なんてことは死んでも言えん…。


 その後も勝手に盛り上がる両親と少女。

 次はなれそめなどを話し始めた母に、少女は目をキラキラさせながら聞いている。


「おにたま。ご婚約、おめでとうござます。でもこれからもエリーと、たくさんたくさん遊んでね」


「坊っちゃま…。そのお歳でまさか異種族間結婚を決断なされるとは…。なんと雄々しい…うぅ」


 ズシッと俺の肩にのしかかるエリーの祝福。

 フリードはもういいよ!


「なぁシロ…。どうしよう?」


『…フンス…』


 たまらず話しかけたシロは、プイッとそっぽを向くと、少し離れた日向で寝始めてしまった。


(あぁ…シ…シロまでが俺の不甲斐無さに怒っているのか…?)


 1人取り残された俺をよそに、家族全員がなぜか祝福ムードで微笑み合っているのであった。

 誰か止めてくださーい…?


いつも応援ありがとうございます!

 よろしければ、下部の

  ☆☆☆☆☆

の所に評価をいただけませんでしょうか。

 ☆が1つでも多く★になれば、作者は嬉しくて、明日も頑張ることができます。

 今後ともよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] この母、クソBBA!って位にイラってするわぁ 他人の言い分を自分の好みで取り入れるくせに息子の話聞かないわ そのくせ思い込みで行動するわ、たんなるサイコパスじゃん。
[良い点] シロ…メスだな… [一言] 楽しく読ませてもらってます!
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