サイド:エルリック4
王宮内、王族の暮らす居住区の一室。
朝も早い時間に第6王子エルリックはここにいた。
意匠の凝らされた豪華な椅子に座り、関係各所からの極秘の報告に目を通しながら、エルリックが満足そうに頷く。
「ダンジョン細胞も完成に近づいたようだな」
「ええ、間違いなく」
そう言って微笑むセレーナは、一糸纏わぬ姿でシーツに残された微かな温もりを1人堪能していた。
しかし、さすがに仕事の話となれば、妖艶な四肢を惜しみもなく晒しながらも際どい部分はシーツで隠し、さらなる妖しくも薫り立つような色香を発揮させて座り直す。
「ダンジョン細胞には第2王子や第3王子も興味を示して、我先にと移植の希望を申し出てきてますわ」
「いいではないか。移植してやれ」
「宜しいのですか?」
「かまわん。今まで俺に便宜を図って協力してきてくれた礼だ。それに王族とダンジョン細胞との親和性のデータをとれる絶好の機会だしな」
エルリックの言葉をきき、セレーナがさらに問う。
「もしダンジョン細胞が適合しなかった場合、他の者同様、魔物に体の一部を乗っ取られる危険もありますが宜しいのですね」
「その場合、王位の継承権がより俺に近づくだけだ」
「ですが、もしダンジョン細胞が適合した場合、エルリック様より、先に王の座につく可能性もあるのでは?」
「それならそれでかまわんさ。俺は第6王子で元々継承権があるとはいっても王の座からは遠い存在だからな。そんな一時の王の座よりも余程いいものを俺は手に入れてみせる」
「それが、神の力ですか」
「そうだ」
その想いがあったからこそエルリックは星光教なんて妖しい連中とも手を組んで飼っていたし、ときには自分の蓄財を兄姉たちへの資金として惜しみ無くバラ蒔いてまで情報を集め続けた。
全てはその時のために。
「エルリック様は神の力を手に入れて何をなさろうとしているのですか?」
セレーナのその質問にエルリックは不敵に笑うばかりで明言を避けた。
だが、神の力を手に入れるというエルリックの言葉、セレーナがエルリックに付いていく理由としては、それだけで十分だった。
「そういえば、エルフの里の現在の状況はどうなっているのでしょうか」
「そろそろエルフの巫女に移植したダンジョン細胞が侵食を終わらせている頃合いか。何やらおかしなドワーフのせいで少し計画が遅れているらしいが問題はあるまい」
「それでは計画通りに?」
「ああ、エルフの里をダンジョン内の地図から消せと星光教の奴らに伝えろ。エルフの巫女は回収し、痕跡は残すなとな」
「かしこまりました」
セレーナが恭しく一礼する。
そうして、衣服を纏い身だしなみを整えると何事もなかったかのように退室していった。
1人、残された室内。
エルリックは嗤う。
「さあ、もう少しだ。もう少しで俺の願いが叶う」
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