ジルエルの解放
奥深い森の39階層。
エルフの里の牢屋の中に僕はいた。
牢屋で出会った第4王子ジルエルは、第3王女クウデリアの兄で重度のシスコンだった。
王族にシスコンなんて言ったら不敬罪で裁かれそうだから言葉には注意しないとな。
「ジルエル様はクウデリア様を大事にしているんですね」
「大事にというか、愛しているのさ!」
うーん、言葉を選んだのに台無しだ。
せっかくイケメンで王子なんて生まれも育ちもいいのに……神様は意地悪だな。
同情せずにはいられない。
「あー、ごめんごめん。妹のクウデリアのこととなると我を忘れてしまってね。悪い癖さ」
そう言って、ジルエルは鬼神の形相からイケメンへ早変わり。
もし、僕がクウデリアの胸を揉んだり、抱き締められて空を飛んだりしていることを知ったら、このシスコン王子ジルエルがどんな行動を取るのか考えただけで怖い。
「もし、もしですよ。妹のクウデリア様に不用意に馴れ馴れしく触れたりする男がいた場合、ジルエル様はどうするんですか?」
「クウデリアが認めた奴で……半殺しだな」
ジルエルの目は本気だと告げている。
本人に認められて半殺しなら、僕みたいなど庶民じゃ全殺し確定だ。
絶対に知られないようにしないと。
とりあえず、話題を変えておく。
「ジルエル様はここから魔法や能力を使って脱出とかしないんですか?」
「あいにくと魔法も能力も封じられていてね」
そう言ってジルエルが自分の手を見せてくる。
ジルエルの手には黒い拘束具がつけられていた。
僕が前にザザンたちに使われたやつと雰囲気が似ている気がする。
このことからも星光教やエルリックが、どこかでエルフに関わっているのは間違いない。
「ちょっと見せてもらいますね」
「?」
僕はジルエルの手にある拘束具に触れる。
ピコーンという音とともに、いつもの声が聞こえた。
(封印耐性(手)レベル5が、封印耐性(手)レベル6に上がりました。封印耐性レベル6が、封印耐性レベル7に上がりました。封印耐性ーー)
僕の封印耐性(手)はレベル10になった。
本当なら何回か触ってレベルを上げようと思っていたのに1回でレベル10まで上がるなんて、どんだけ強力な封印だったんだろ。
まあ、これで封印効果の破壊は出来なくても、一時的な解除は問題なく出来るしいいか。
僕が手を離すとジルエルの拘束具がポトリと床に落ちる。
「これでジルエル様は好きに出来ますよ」
「そんな、まさかあんな強力な封印がこんな簡単に解除できるだなんて」
ジルエルが驚きの表情をしている。
「アルル、君はどうするんだい?」
「僕は仲間を待ちます。僕には頼れる仲間がいるんで」
「そうか、それなら封印を解いてくれた礼として君の仲間がくるまで君に付き合おうじゃないか」
ジルエルがそんなことを言ってきた。
あれ、ひょっとしてそれだとクウデリアと再会しちゃったりして、場合によっては僕に敵意が向くんじゃないかな?
キラキラしたイケメンビームを僕に向け続けているジルエルに大丈夫と言っても聞かなさそうだ。
封印も解いちゃったし、もしかして僕は星光教の狂信者以上の脅威を生み出しちゃったのかもしれない。
読んでくださり、ありがとうございます。
まだまだ拙い文章なのにブックマークや評価してくださった方もいて励みになります。
m(_ _)m




