食料調達
女騎士のリアさんも《剣の才》って能力を獲得していることはわかった。
だけど、どんな能力かは不明。
一応、リアさんに動いてみて何か変化がないか確認してもらう。
僕の前で、力強く剣を振る、リアさん。
「ふむ、やはり体の動きや技のキレに変わりはないな」
剣の腕が向上したりはしてないようだ。
ただ、リアさんは騎士として十分に強いし、当面は能力がわからなくても問題ないだろう。
水は階層と階層の間に小さな湧き水がどの階層にもあったので、それで大丈夫。
今一番問題なのは食料だ。
「アルル、食べ物はどうする?」
「僕に考えがあります」
僕たちはまず30階層ではどこにでもいる毒鳥を探した。
見つけた毒鳥を追っていくと巣を発見。
リアさんに木の枝を使って巣の中から毒鳥の卵を何個か落としてもらい、僕は魔法のポーチで直接受け止め収納する。
その後、僕らは安全な場所まで移動した。
「アルル、どうする気だ。毒鳥の卵の殻は外的から守るために強い毒で覆われていて食用には出来ないはずだぞ」
「一般的にはそう言われているみたいですね」
そう言いながら、僕はポーチから毒鳥の卵を取り出した。
「おい、バカ、直接触ると毒にやられるぞ!」
慌てるリアさんをよそに僕は涼しい顔。
僕の《毒耐性(手)》の効果だ。
「なんか、僕には毒にも耐性があるみたいでして」
「ひょっとして、また手だけか?」
「手だけです」
言っていて少し悲しくなる。
でもまあ、気にしててもしょうがない。
僕は手近な平らな石に卵の中身を割り落とす。
卵の中からは、キレイな黄身と白身が出てきた。
僕は火竜の鱗を石に置くことで、石の表面温度を上げていく。
ジュウジュウといい色に焼けた目玉焼きの完成だ。
「……普通に食せそうだな」
「食べられると思いますよ。毒鳥の卵って、わりと愛好家も多い食材なんですよ。ただ、割るときに失敗したり、殻に誤って触れて死んじゃうって人が多いだけで」
「それだけ、うまいってことか」
「だと思いますよ。上流階級の人たちでは馴染みがないでしょうけど、市民の間では年間で100人以上が犠牲になってるくらいですからね」
僕が前にいた診療所でも、よく運ばれてきたっけ。
懐かしい思い出だけど、怖い師匠にしごかれた記憶も蘇るし、あんまり思い出したくはないかな。
「では、食してみるか」
「あっ、食べるのは少し待っててください」
そう言って、僕は自分の手のひらを目玉焼きに押し当てる。
「アルル、何をするんだ!」
「まあまあ」
慌てるリアさんをよそに僕は余裕の表情だ。
僕は《炎熱耐性(手)》もあって、手だけなら火傷とか関係ない。
しばらくして、何も起こらないことを確認。
よし、大丈夫そうだ。
「リアさん、食べていいですよ」
「アルル、何をしていたのだ?」
「念のための毒の有無の確認をしていました」
もし、目玉焼きに毒が含まれてたら僕の手の耐性が反応するはずだけど、そんなことはなかった。
「このキノコたちも食べて大丈夫ですよ」と、僕は途中で何本か摘んでいたキノコも石の端っこで炙り出す。
移動中に僕の《毒耐性(手)》で反応したキノコは、有毒ということで魔法のポーチに放り込んである。
「アルル、君のその能力は意外と便利だな」
感心したようにリアさんが言う。
僕もそう思った。
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