リアさんの能力?
僕の解毒治療で動けるようになった女騎士のリアさん。
年齢は17歳、僕より少しお姉さんで長い髪を編み込み纏めている、美人さん。
「てやっ!」と、掛け声と共に剣で毒狼を倒してくれた。
「ふむ、まだ本調子じゃないけれど、魔物も一匹くらいならなんとかなりそうだな」
自分の状態を確認しつつ、リアさんが言う。
僕たちはまだ30階層の毒エリアにいた。
「アルル、これからどうする? 我々もダンジョンからの脱出を目指してみるか?」
「う~ん、それは、まだやめときます」
「ほう、それはどうしてだ?」
「いくつかの懸念事項があるからです」
僕は自分の考えをリアさんに話す。
「あれだけ自尊心の塊のバカ王子が、火竜に怖じ気づいてノコノコ撤退したという事実を知っている僕たちのことをそのまま放っておいてくれるとはとても思えません。嫌がらせくらいならまだしも下手したら殺されそうじゃないですか」
「なるほどな。その可能性はかなり高いな」
「そこは自分の主ですし、一応は否定しとかなくていいんですか?」
「否定する要素がまるで見当たらん」
他の人が聞いたら、立場的にリアさんの言葉のほうが不敬罪で裁かれそうだ。
だが、僕よりバカ王子のことをよく知っているリアさんがそう思うなら、やっぱりそんな暴挙に出る可能性は高いということだろう。
「それに、ここはダンジョンの30階層です。たとえ脱出するにしても僕とリアさんだけじゃ単純に戦力不足だと思います」
「ふむ、それならどうする?」
「僕たちは、このまましばらくダンジョンを探索して暮らしましょう。せめて、あのバカ王子の嫌がらせに抵抗できるだけの力が付くまでは」
「そう上手くいくものだろうか」
「大丈夫だと思います」
僕はリアさんに能力を見てもらう。
僕が燃える火竜の鱗を平気な顔で持ってみせると、リアさんが驚きの声をあげた。
「驚いたな。何か能力を獲得したのか」
「はい。それなんですけど、僕の場合、手だけに耐性が付く能力みたいなんです」
「手だけに耐性など、初めて聞いたな」
リアさんも、そんな話は聞いたことがないようだ。
騎士さんたちの中には、ちらほらと能力保持者もいて、リアさんのお父さんも《剣術の才》という能力を持っていて、御前試合でも好成績をおさめていたらしい。
どうせ貰えるなら、僕も医術士見習いとして人を助けられる能力とかが良かったな。
「ここはダンジョンですし、何か特別なことがおきてもおかしくはないですよ。リアさんもなんか能力を獲得しているかもしれないですよ」
僕たちの世界では経験や体験、本人の資質で獲得した能力を意識を集中すると脳裏に浮かべることができた。
リアさんも当然それは知っているし、確認は一瞬で済むはずだ。
「ははっ、まさか」と、僕の言葉を笑い飛ばそうとしたリアさんの顔が固まる。
「リアさん、どうしたんですか?」
「どうやら、私も本当に能力を獲得していたようだ」
「本当ですかっ!」
言っておいてなんだけど、本当に獲得しているとは思わなかった。
驚きだけど、これはかなり心強い。
「どうやら、私の獲得した能力は《剣の才》という名前のようだ。これも聞いたことのない能力だな」
リアさんの獲得していた能力は、《剣の才》という能力らしい。
あれ、剣術じゃなく剣?
どういうことなんだろう。
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