VS 氷大亀 決着
雪と氷に閉ざされた32階層。
氷山の中の洞窟の奥、ドーム状の空間で氷大亀と戦っていた。
クウデリアは天使化して翼を生やして僕を抱えながら飛んでくれていて、リアさんは愛剣を片手に翻弄する囮役、ポルンは炎狼状態で氷大亀の背中の氷を融かそうとそれぞれ頑張ってくれている。
えっ、僕の役割はって。
僕も皆の様子を観察しながら指示だしたり頑張ってるよ。
氷大亀はポルンを振り落とそうとして必死に動き回っている。
囮役をしてくれていたリアさんから意識が外れている感じだ。
「クウデリア様、リアさんをいったん回収しましょう」
「わかりましたの」
「リアさん、こっちへ」
「了解した」
リアさんの手を掴むと、すぐにクウデリアに上空への避難をしてもらう。
ポルンの熱で氷大亀の甲羅に張りついた小さめの氷山のような氷塊に陥没した穴が開いていた。
すると、業を煮やした氷大亀が手足を引っ込めた。
何か大技を出す気みたいだ。
「ポルンの助太刀に行く。王女、氷大亀の真上へ」
「わかりましたの」
氷大亀の真上へ来ると、リアさんは飛び降りた。
ポルンの熱で融けた穴に飛び込むと愛剣を背中の氷に突き刺した。
「ポルン、熱量を落として、私に掴まれっ!」
「ポル」
ポルンがリアさんに捕まるとほぼ同時に、氷大亀が回転を始める。
そして、回転の速度が最高に達すると暴れ独楽のように床を滑っては壁に衝突して方向を変えるというのを繰り返す。
あっぶな、床にいたら必殺の一撃を食らっていたな。
だけど、僕とクウデリアは上空で飛行中。
ポルンとリアさんも氷大亀の背中に突き刺した剣で体を固定し、遠心力になんとか耐えたみたいだ。
しばらく衝突を繰り返したあと、氷大亀はようやく停止し手足を出した。
息を整えるように大人しくしてくれている。
「ポルン、もう一息頑張れるか」
「ポルル」
リアさんの言葉にポルンが元気に応える。
ポルンが熱量を最大まで上げていく。
氷を融かしつつ、リアさんの愛剣ロングにも熱を伝えてて、ロングの剣身が赤く色付いていく。
剣を持つリアさんの手から、ジュゥっという肉を焼く嫌な音が聞こえた。
リアさんの手は炎熱耐性なんて持ってないし、ああなるのは当然の結果だ。
痛そうだけど、リアさんは気にしない。
「ポルン、十分だ」
氷大亀の背中、リアさんが氷が融けて薄くなった甲羅部分に愛剣ロングを剣の半分が埋まるくらいに突き立てた。
王宮の記録通りなら、あそこの近くには氷大亀の弱点があったはず。
そこに突くと焼く、その同時の攻撃はサイズ違いの氷大亀にも相当な効果があったようだ。
絶叫する大亀。
だが残念ながら、まだ止めにはいたっていないようだ。
氷大亀の目はまだ死んでいない。
「ロング、私の考えにお前は軽蔑するか。そうか賛同してくれるか…………すまないな」
リアさんは愛剣ロングから手を離すと、その柄頭を思い切り踏みつけた。
「これで、どうだ」
リアさんの愛剣ロングは完全に氷大亀の中に埋没してしまった。
再び大絶叫を上げると、氷大亀は動かなくなる。
少し様子を見ていると、その巨大な体が少しずつ光に還元され始めた。
「終わったようだな」
「ポル」
「やりましたの」
どうやら僕たちは皆の活躍で、なんとか32階層をクリア出来たみたいだ。
読んでくださり、ありがとうございます。
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