合流
雪と氷に閉ざされた32階層。
僕とクウデリアは氷の割れ目の底から、クウデリアの能力で無事に脱出し、若干飛び上がりすぎた僕たちの眼下には、リアさんとポルンが待っていてくれた。
リアさんとポルンの無事な姿に安心する。
向こうも僕たちと同じ気持ちのようだ。
「王女、ご無事でしたか。アルルも怪我はないか?」
「私は大丈夫ですの」
「僕も大丈夫です。リアさん、心配かけました」
僕はリアさんに謝罪する。
だが、なんかおかしい。
謝罪もしたはずなのに、僕たちを見るリアさんの表情が、どんどんと険しくなっていく。
どういうことだろう?
「リアさん、どうしたんですか?」
「いや、アルル、お前のほうこそ、どうしたというのだ。もう、地上に降り立っているのだし、そろそろ王女と抱き合う必要はないと思うのだが?」
リアさんに言われて気づく。
僕とクウデリアは抱き合ったままだった。
「ん? そう言われたら、そうですよね。クウデリア様、すみませんでした」
そりゃ、王宮騎士のリアさんの目の前で、僕みたいな得体の知れない奴が王女と抱き合ってるなんて、いい度胸だと思われてもしょうがない。
「アルル、私のほうこそ、申し訳ありませんの」
僕とクウデリアは慌てて離れる。
「まったく、アルルは不敬にもほどがあるぞ。でも、本当に無事でよかった」
リアさんが心底安心した顔をしてくれる。
王女はともかく僕のことまで、こんなに心配してくれていたなんて嬉しかった。
そういえば、さっきからポルンがリアさんの隣でグッタリしているんだけど、そんなに雪熊との戦いが激しかったんだろうか。
怪我はしてないみたいだし、大丈夫だと思うんだけど何があったんだろ。
「リアさんたちも僕たちを助けようとしてくれていたんですか」
「もちろんだ。私は何度も割れ目から飛び込もうとしたんだが、ポルンに止められてしまったのだ」
ポルン、リアさんを止めてくれて、ありがとう。
さすがに、能力に不慣れなクウデリアでは3人での飛行はキツかったかもしれない。
そもそも飛行というか浮遊みたいな感じだったし。
「しょうがないから、ポルンの尻尾の毛を繋ぎ合わせて垂らすことが出来ないか試そうとしたんだが、ポルンが毛を抜くと痛がったので、それも断念したのだ」
ポルン、本当によく頑張った。
今のポルンの疲れ具合は、リアさんとの戦いによるものだったと納得する。
今日の夕飯は、ポルンの好きな猪肉を使ったものにしようと心に決める。
「アルル、それで、何が起こったのか教えてくれるんだろうな?」
「もちろんです。王女の能力についても聞いておいてもらいたいですし、食事を食べながら、ゆっくり説明しますよ」
僕たちは、32階層の中間地点にある休憩できる岩場地帯まで移動した。
岩場の隙間に布を張り、今日はここで夜営の予定だ。
夕飯の準備をしつつ、僕とクウデリアに起こったことの説明をする。
もちろん、《おっぱい耐性(手)》についてだけは絶対に秘密にする。
それを獲得した経緯も能力名も、クウデリアやリアさんの前で発表するにはハードルが高過ぎる。
「そうですか、王女にも眠っていた能力があったのですね」
「《天使の移し身》っていう能力みたいなんですの。アルルに能力の一部を解放してもらったら、翼が生えましたの」
「ということは、王女もアルルの従魔に……」そんなことを呟きながら、リアさんが僕のほうをチラリと見る。
不可抗力です! それで脱出できたんだし許してください。
「ええ、自分の目で見ても信じられませんでしたが、確かに王女に翼が生えていて空に浮かんでいましたね。アルルの手の能力ほど異常ではないですが、王女の《天使の移し身》という能力は飛べるという以上に凄まじい能力である可能性があると思います」
いやいや、リアさん、その言い方だと僕の能力のほうが、すごいってことになっちゃいますよ。
僕の手なんて、ただちょっとした耐性があるだけだ。
ここは訂正しておいたほうがいいよね。
「リアさん、さすがに天使みたいになるクウデリア様の能力ほど、僕の能力はすごくないですよ」と僕が言うと、全員の視線が僕に集中する。
「アルルの手のほうが異常過ぎだ(です)」
えっ、翼が生えて天使みたいになるクウデリアの能力より、僕の手の能力のほうが、異常って、どういうこと?
でも、自分でも理不尽過ぎだと思うこともあるし、言い返せないのが、ちょっと悔しかった。
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