クウデリアの能力
雪と氷に閉ざされた32階層。
僕とクウデリアは氷の割れ目の底にいた。
脱出のために、お試しでクウデリアの能力の解放をしてみようとしたところ、クウデリアには何かの能力があり解放可能なことが判明。
(《封印耐性(手)》レベル5の効果により、従魔クウデリアの能力の一部を解放しますか yes/no)
僕に選択権が委ねられてるけど、やっぱり相手は王女だし、一応確認したほうがいいよね。
「クウデリア様、いいですか」
「はい」
僕の問いかけに、クウデリアの迷いのない静かで力強い言葉が帰ってきた。
「いきます」
僕は、yesを選択する。
(従魔クウデリアの能力、《天使の移し身》の一部を解放します)
クウデリアの能力は、《天使の移し身》と言うらしい。
リアさんの剣の才やポルンの踊り上手みたいに、僕の能力、《封印耐性(手)》で使用が可能になったはずだ。
その能力、《天使の移し身》による変化は劇的だった。
クウデリアに1対の純白の翼が生える。
「この翼は?」
「クウデリア様、まるで天使みたいです」
思わずそんなことを言ってしまった。
だって、美少女の背中に真っ白な鳥のような翼。
これが天使じゃなかったらとしたら、何を天使というのか僕の目の前にきて説明してほしい。
「わっ、自分の意思で動かせますの」
クウデリアが翼をパタパタ動かして遊んでいる。
でも、身長に対してクウデリアの翼はちょっと小さい気がするけど飛べるんだろうか?
「クウデリア様、翼を動かしたりして飛べそうですか?」
「試してみますの……お願いします、私を飛ばしてください」
白い羽が光を帯びると、ゆっくりとクウデリアの体が浮かび上がる。
僕の腰の辺りまで浮いたところで止まった。
原理はわからないけど、無理にパタパタと翼を動かさなくても飛べるならありがたい。
「ア、アルル、私どうなってますの」
「クウデリア様、浮かんでますよ。そのまま高さを変えられるか知りたいんで、上下どちらかに動いてもらえますか?」
「わかりましたの」
クウデリアの体がゆっくり上昇していく。
うん、……たしか、クウデリアって、マントの下はショートドレスを着ていたよね。
あんまり上がりすぎると、スカートの中の見ちゃいけないものが見えそうだ。
ちょっとだけ離れとこうかな。
「クウデリア様、そこから降りてこれますか」
「や、やってみますの」
クウデリアは上ったときより、さらにゆっくりと時間をかけて底に降り立った。
速度はともかく、問題なく上下移動はできるようだ。
「クウデリア様、これで脱出できそうですね」
「やりましたの」
僕は出していた道具を魔法のポーチに片付ける。
よし、忘れ物はないな。
「さあ、どうぞ」と、クウデリアが両手を拡げてくる。
どうしたんだろう?
「アルル、構いませんので、私に抱きついてください」
「クウデリア様、なにをっ!」
「だって、私だけで上がるわけにはいかないですの。他に2人で上に上がる方法があるなら言ってほしいですの」
そう言われたら反論はできない。
だけど、クウデリアは王女、その王女の胸を鷲掴みにして、ドレスの下から際どい部分を見てしまい、最後は抱きつけと。
いい加減に僕の命を狙って国が動いたりしない? 大丈夫?
「アルル、能力がいつまで使えるかわからないから、急いだほうがいいですの」
「……それでは、クウデリア様、失礼します」
「アルル、もっとしっかりと掴まっててください」
「こ、こうですか」
僕はクウデリアを強く抱き締める。
うわ、めっちゃ華奢で僕の非力な力でも壊しちゃいそうなんだけど。
僕の心音は目茶苦茶早く強くなっている。
ねえ、この状況、本当に大丈夫?
密着しすぎて、僕からはクウデリアの顔が見えないっていうのがさらに不安を煽ってくる。
そんなことを考えているうちに、クウデリアはゆっくりと上昇していく。
こうして、僕たちは色々ありながらも、とりあえず脱出することができた。
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明日は日曜日。
申し訳ありませんが、明日は更新お休みして、月曜日からチョロチョロ更新させてもらいます。
ではでは(^^)/




