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新しい仲間

 燃え続ける火竜の鱗を持って様子をみていると、僕の中に何か流れ込んでくる感覚と共に《炎熱耐性(手)》がレベル3に上がったという声が響いた。

 なるほど。

 僕の場合、耐性を使えば使うほど経験値が溜まり能力のレベルが上がるって仕組みなのかもしれない。



「どれだけ能力のレベルってのが上がるかわからないけど、僕のはあまり戦闘向きの能力じゃなさそうだから、今は身の安全の確保が先かな。そういえばあの女騎士さんどうなったんだろ。生きてたら迎えに行くって言ってたんだっけ……行ってみるか」



 僕は31階層から30階層の猛毒エリアを目指す。

 主の火竜を退治できていたおかげか、猛毒エリアへの移動は比較的安全にできた。

 僕は気になっていた置き去りにされた女騎士さんのその後を確認しに行く。

 もし、何もなければ死んだってことだろう。

 その時は何か遺品だけでも回収してあげたい。



「たしか、あの辺に女騎士さんがいたはずだけど」



 ん、あそこに何かいるぞ。

 見ると、女騎士さんのフルプレートメイルに猛毒のスライムが群がっていた。

 遅かったかと思ったけど、プレートメイルは人の形を保ったままだ。

 ひょっとして、まだ間に合うかも!

 僕は魔法のポーチから火竜の鱗を取り出しスライムに投げつける。

 燃える鱗を嫌がりスライムたちが逃げ出していった。



「お姉さん、大丈夫ですか?」


「ううぅ」



 女騎士さんはまだ息があった。

 僕は顔のガードを外すと状態を確認する。

 鎧は毒の影響で少し腐食が進んでいるが、おかげで体が毒に触れずにすんだみたいだ。

 女騎士さんが目を覚ます。



「君は、私に薬をくれた医術士見習いの子だな」


「僕はアルルと言います」


「私は君の薬のおかげで命拾いしたのかな」


「いえいえ、僕の薬なんてほとんど影響はないですよ。お姉さんの運が良かっただけですよ」



 あとちょっと遅ければ鎧の隙間からスライムが入ってダメだったかもしれないけど、なんとか間に合った。

 それが全てだ。

 お姉さんに解毒の処置を実施する。



「なんとか動けるようになったよ。ありがとう」



 お姉さんが微笑む。

 長い金髪を編み込んだ、つり目がちな美人さんだ。

 身長も僕より少しだけ高く、話し方や雰囲気は女性なのに騎士然とした佇まいだ。



「君がここにいるということは王子殿下や他の者たちはどうされたのだ?」


「王子たちですか」



 正直に伝えるか一瞬悩んだけど、どうせ遅かれ早かればれると思うし伝えることにする。



「バカ王子は魔術師のセレーナと共にダンジョンから脱出して、他の騎士さんたちは1つ下の階層で階層主の火竜との闘いで僕を残して全滅しました」



 僕はありのままに伝えた。



「そうか、全滅したのか。……それにしても、バカ王子か。まあ、君や我々のされた仕打ちを考えたらそういいたくなる気持ちもわからなくはないな。今は私たち2人しかいないし、不敬なのは不問としよう」


「ありがとうございます。ところで、これに見覚えがありますか?」



 僕が拾った魔法ポーチを差し出すと、女騎士さんが反応する。



「これをどこで?」


「僕を守ってくれた騎士さんの遺品だと思うんですが知っているんですか」


「父のものだ」



 なんとも言えない空気だ。



「そうか、父は最期に君を守って……」



 なんて声をかけていいかわからない。



「このポーチは返しましょうか?」


「いや、いい。今はそのまま君が持っていてくれ」


「わかりました」



 本人がいいと言うなら無理強いはしない。

 さっきもこのポーチがあったから火竜の鱗でスライムを追い払うことが出来たわけで、今の僕の唯一の攻撃手段と言ってもいいものだ。

 また、ダンジョンを脱出して落ち着いたときに所有権をどうするかは話し合えばいい。



「それより、君の話が本当ならエルリック王子殿下の言葉で私は騎士をクビになったということだろう。それなら父の遺志を継ぐ訳じゃないが、少なくともダンジョンから出るまでは命の恩人でもある君のことを守らせてくれ」


「願ってもない話です」


「良かった。私はリア、宜しくな」



 こうして、ダンジョン置き去りにされた僕に初めての仲間ができた。



読んでくださり、ありがとうございます。


まだまだ短い文章なのにブックマークや評価してくださった方もいて励みになります。

m(_ _)m

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