僕の能力
僕は火竜と騎士さんたちが戦った場所から少し離れたところにある岩場の影にかくれて、自分の身に起きたことを検証する。
僕は能力を手にいれたらしいけど、《炎熱耐性(手)》、《毒耐性(手)》って何?
手だけに耐性ってこと?
剣術や魔法を強くする能力は聞いたことあるし、体全体の耐性とかならわかるけど、体の一部分って意味あるのかな。
わからない。
「まあいいや。丁度ここら辺は焼けた石とかもいっぱいあるし、ちょっと試してみようかな」
試しに、焼けた石に触れてみる。
「全然熱くない」
これだけ押し付けても皮膚が焼ける気配がない。
一応、手のひら以外で焼けた石に触れてみる。
あっつーーーーーっ!
普通に皮膚が焦げるところだった。
いろいろ試して、熱くないのは指先から手関節までということがわかった。
手持ちに残っていた火傷の薬をすり込みつつ、僕は確信する。
手だけの耐性。
どうやら、これが僕の得た能力らしい。
こんなものでどうしろと思いつつ、ちょっと待てよと手にいれた能力の有効利用を思いつく。
これなら燃えるような火竜の鱗も拾えるかも。
僕は火竜と騎士たちが戦った場所に戻る。
僕たちのいる世界は人も魔物も死ねば誰しも光の粒子になる。
そうして光の粒子は世界に還元される。
それが普通のことだ。
僕が戦闘のあった場所に戻ると巨大な火竜が丁度光の粒子になっていく途中だった。
火竜より小さい騎士さんたちの死体は、もうすでに光の粒子になって世界に還元されたあとのようだ。
いくつか鎧と剣が落ちているだけで死体は見当たらない。
火竜の鱗は死体に付いているままだと光になり世界に還元されるけど、辺りに散らばった分や採取した分は残る。
僕は火竜の鱗を探し始める。
「あれ、これは?」
騎士か誰かの持ち物だろうか。
袋が落ちていた。
「これは魔法のポーチ?」
魔法のポーチは空間魔法の応用で見た目以上の物が入る。
便利だけど高価な物だ。
とりあえず、ここに置いたままより預かっておいた方がいいよね。
「丁度いいから落ちてる鱗を入れるのに使わせてもらおうかな」
普通の袋だと燃えてしまうけど、魔法のポーチなら大丈夫でしょ。
僕の手より少し大きめの魔法のポーチを腰にぶら下げながら、3枚目の火竜の鱗を手にいれる。
「すごい、燃えるような熱さも全然苦にならないや」
そして、4枚目の鱗を手に取ろうとする。
すると、ピコーンと頭の中で音がして声が響いた。
(《炎熱耐性(手)》が、《炎熱耐性(手)》レベル2になりました)
えっ、何、能力ってレベルがあるの?
そして、上がるの?
まだ僕の知らない世界の新事実だ。
読んでくださり、ありがとうございます。
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