VS 魔法士
森と草原の広がる29階層。
森の中にあるコボルトの里。
そこで僕とリアさんは、クウデリアを探しにきた襲撃者たちと対峙する。
3人の襲撃者たちは僕たちを値踏みしてくる。
「女とガキの2人だけか、少し予想と違いますが、こいつらがひょっとして」
「へへへ、そうかもしんねぇなぁ」
「こいつら相手なら勘繰るより直接聞いたほうが早そうだ。おい、お前らは、生き残りか?」
強面の男が僕たちに短く質問してくる。
もし違うといったら、どうなるんだろう?
やっぱり、見逃してくれるっていうのはないだろうな。
騎士のリアさんはともかく、勢いで出てきたはいいけど、こんな状況に慣れていない僕は足が震えている。
リアさんは堂々とした態度で一切怯む様子はない。
「やはり、王女の護衛というのは建前で、我々を探しにきた輩か」
「そのいいよう、間違いないようだな。生き残りはお前らだけか?」
「そうだ。父も仲間も全員死んだ」
「そうか。思ったより楽な仕事になったな」
リアさんの言葉で強面の男は確信し納得したようだ。
残りの2人に指示を出す。
「上からの指示では、生死の確認さえできれば、あとはどうでもいいということだ。お前ら好きに選んで遊んでいいぞ」
遊びって、カードやボードゲームじゃないよね。
怪力自慢の大男はリアさんのほうに行ったから、魔法士の優男のほうは僕を選んだようだ。
優男が僕の前にくる。
「俺の相手はガキか。どうせなら女騎士様を切り刻みたかったなぁ。 まあ、俺は女だけじゃなくガキにも優しいから、ゆっくり刻んでやる。……せいぜい良い声で泣けよ」
あっ、こいつもクズの部類か。
まあ、バカ王子エルリックの関係者なら当然かな。
ちょっとだけ、僕にもやる気が出てくる。
剣なんかの武器なら怖いけど、相手は魔法士とはいえ持っているのは短杖くらいだ。
それに剣狼に比べたらどうってことのない迫力だ。
しかも使っていた魔法は状況からみて切断系。
それなら僕には《斬撃無効(手)》がある。
あとは勇気を振り絞るのみだ。
「いくぞ、風刃」
優男の持つ短杖から風の刃が放たれる。
魔法の風で作られた刃は殆どの物質を切断する。
それこそ人体なんて紙切れのように斬れる…………優男はそう思ったはずだ。
優男が自分の魔法を信じたように、僕は自分の手を信じる。
「頼む、僕の手っ!」
キンっという高い音を残して風の刃が消失する。
間抜け顔になって油断しきった優男の顔面に、僕は拳を叩き込んだ。
「な、なんで俺の魔法が……こいつ、何かしやがったのか、それとも偶然か」
僕の拳自体は大したダメージは与えられていないみたいだけど、優男の鼻血を垂らしながらの間抜け顔が、ちょっと面白い。
僕の《斬撃無効(手)》は魔法で作った刃にも効く。
それが立証できた。
そんなことを思っていると、僕の頭でピコーンと音がなる。
「おっと、どうしたんだろ? もう僕の手って斬撃に関しては無効にまで上がってるんだけど」
続く脳内の言葉に僕は絶句することになる。
(《魔法耐性(手)》を獲得しました。《魔法耐性(手)》が、《魔法耐性(手)》レベル2に上がりました)
「…………」
その言葉を聞いたときの僕は優男に負けないくらい間抜けな顔をしていたと思う。
えっ、何? 魔法耐性って?
本当に僕の手の能力は意味不明だ。
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