第3王女クウデリア
森と草原の広がる29階層。
コボルトの里に僕とリアさんはいた。
里のある森の入り口でコボルト相手に回復魔法を連発して気を失った女の子を運び込む。
里のコボルトたちも回復魔法の礼だとばかりに手伝ってくれた。
「リアさん、この子は本当に王女なんですか?」
「このお顔、間違いない」
騎士のリアさんが言うのなら間違いないだろう。
僕は改めて女の子を見る。
長い髪をツインテールにして、仕立てのいいショートドレスに身を包んだこの女の子は、リアさんの話では第3王女クウデリアという話だった。
第3王女クウデリアと言えば、僕の記憶が正しければ僕より年下の13歳にも関わらず、王宮の良心とも云われている。
回復魔法に精通していて、時間を見つけては市中に出てきて、恵まれない貧民層にも無料で回復魔法を施してくれるそうだ。
不定期すぎて僕は出会ったことなかったけど、患者さんからそんな話を聞いたことがある。
師匠は商売敵だと怒っていたけど、僕に悪い印象はない。
王女様なんて生き物をこんな近くで見るのは初めてだけど、さすが王女というだけあって顔が整っているんだな思う。
「なぜ王女がダンジョンに……」
「回復魔法の鍛練とか?」
「そうであれば、もっと上層の階層でもいいと思うのだがな」
リアさんが言うのも、もっともだ。
危険をおかしてまで、こんな階層までくる必要なんてない。
「あっ、目を覚ましそうですよ」
王女が目覚める。
「ここは?」
「私はリア・ウィリアム。王宮騎士を務めておりました。こちらはアルル・シフォン。故あって行動を共にしているものです。失礼ながら、あなたは王女殿下ではないでしょうか」
リアさんの言葉に王女は顔を背ける。
「……違います。人違いです。私はクウデリアではありませんの」
理由はわからないけど、王女は僕らを警戒しているようだ。
「でも、僕もリアさんも王女の名前を言っていないのに自分で名前を言っちゃってますよね?」
第3王女ってことは、最低でも他に2人は王女がいるはずだ。
自分で名前を言っちゃうなんて、本当に隠す気があるんだろうか?
「こら、アルル、王女に対して不敬だぞ。たしかに王族の証の指輪をつけたままであるし、王家の紋章の入った杖を持ち、そのようなご年齢で高等な回復魔法を多数扱える高度な教養を身に付けられる環境が王族以外にあるわけはない。だが、そんな誰でも気付く嘘をつかれたとしても、ここは聞き流して差し上げるべきであろうが」
「多分ですが、この場合リアさんのほうが不敬にあたると思いますよ」
僕はよく知らないけど、王族侮辱罪とかがあればバッチリ適用されそうだ。
「あっ!?」
僕とリアさんの指摘で王女の顔が真っ赤になる。
うん、その反応で証拠としては十分。
王女は、いろいろ迂闊だけど嘘をつけないいい子なんだと思う。
というか、リアさんはもうすでに王女と確信して接しているし、今さら隠すのは無理なんじゃないだろうか。
クウデリア王女は覚悟を決めたように口を開く。
「たしかに私はクウデリアですわ」
「やはり」
「でも、私はその名前も地位も捨てるんですのっ!」
第3王女クウデリアは羞恥に染まった顔をさらに赤くしながら、そう僕らに宣言した。
どういうこと?
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