50階層
ついに僕たちは50階層にきていた。
メンバーは僕と人型のリアさん、クウデリア、ポルン、悪魔のノワールの5人だ。
他の悪魔たちはダンテたちの復興の手伝いをするように命じてある。
え~と、ここが神界か。
神界なんて仰々しい呼ばれかたをしている場所なんて、どんなところだろうと思っていたけど、空には雲も流れ大地には森や川があるし、見た目はポルンの故郷の29階層と変わりはなかった。
もちろん違いもある。
空を飛んでいるのは神鳥や神竜だし、出会うのは神獣と呼ばれる希少性や能力の獣たちだけだ。
普通の魔物なんて見当たらない。
こちらから仕掛けなければ襲ってこないのか、僕たちに気付いてるはずなのに素通りしていったりしている。
「なんか……普通ですの」
「そうですね。もっと神秘的なところを想像していました」
「ポルンの里のある場所にそっくりポル」
「これなら僕が人の姿をしていても不思議はなさそうですね」
「これからどうしますの?」
「とりあえず、どこかで神族に会えたらいいんですけどね」
そううまく行くかはわからない。
神族が何人くらいいるのかもわからないし、もし少数民族みたいな感じならダンジョンなんて広大すぎて会えない可能性もある。
数万を越える魔王軍の戦力にも負けないらしいし、暴れたりしたら出てきてくれる可能性もあるけど、それじゃ敵対するって宣言をしているってことになっちゃうし、本当に難しい。
「リアさん、クウデリア様、ここは元魔王のクローゼスに教えてもらった情報を参考にさせてもらうのが確実じゃないでしょうか」
「ああ、あの魔神の卵だか世界樹の種子だかは55階層に安置されているというやつか」
「55階層ってことは、王宮の記録に残るダンジョンの最高到達深度に並びますの」
「クウデリア様、嫌ですか?」
「いえ、望むところですの」
55階層到達ということは、単なる発言権の増強という意味で終わらない。
本当の意味で王国の歴史に名を刻むことになる。
良い意味でも悪い意味でも注目され、それをクウデリアがどう感じるのか少し心配になっていたけど、本人は問題ないと笑顔を返してくれた。
本当に13歳とは思えないくらい強い王女様だ。
「リアさんもそれでいいですか?」
「今の私は剣だ。主の好きにすればいい」
「じゃあ、主のクウデリア様の意見に反対はしないってことでいいんですね」
「?」
「どうしたんですか、リアさん」
「いや、今の私の主はアルル、お前だぞ」
「へっ!?」
「私の能力が進化する時に声が聞こえたが、お前のことを主魔、私のことを従魔と言っていただろう。あの認識でいいと思うぞ」
「え~と、その認識でいくと、僕みたいなのがクウデリア様の主ってことにもなっちゃうんですけど、いいんでしょうか?」
「当然そうなりますの。というか今の私は神人で、半分神で半分人みたいな感じなので、神族のアルルより格は下で間違いないですの」
クウデリアの説明を聞いたらなるほどと納得する部分もある。
クウデリアは神人。
リアさんは神剣。
しかも、2人をその状態に改造したのは間違いなく僕と僕の黒い右手に宿っている原初の存在のサラだ。
ここは諦めて2人の主張を受け入れよう。
因みに、ポルンにも確認してみたけど、問題なく僕が主だと言ってくれていた。
悪魔のノワールには……聞くまでもないか。
作ったときから僕のことを主って呼んでたしね。
神剣を携え、神人と神獣と悪魔を従えながらの里帰り。
もし僕のことを知っている神族がいたとして、いったいどう思うんだろ?
そんなことを考えながら僕は先の階層に向かった。
読んでくださり、ありがとうございます。
拙い文章ですが励みになります。
もう少しだけお付き合いいただけたら嬉しいです。
m(_ _)m




