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VS 魔王

 夜と闇の支配する49階層。


 魔王と対峙している僕とダンテ。

 魔王は《色欲の移し身》の力を使用して、直轄の部下100人の身体を100本の肉の槍と化してしまった。

 色欲の移し身で心身を支配された者は、最終的には身体の形状の自由すら相手に握られることになると、サラが教えてくれたけど、あれって槍というか、絞りかすみたいに見えるよね。

 宙に浮かぶ槍たちからは、怨嗟の声が聞こえてきそうな感じだ。



「ダンテ、魔王は昔から槍を自分の血を使って槍を操れていたんだよね。そのときは何本くらい使ってたの?」


「そのときは色欲の移し身など持っていなかったからな。父上の貸し与えた1本の槍だけだった」



 う~ん、それじゃ今回の場合、あんまり参考にならないかな。

 でも、本数が違う程度なら昔から知っているダンテなら癖とかで対応できたりして?



「ダンテ、あれって何本くらいなら避けられそう?」


「さあ、やってみないとわからんな」


「まあ、そうだよね」


「アルル、ここは俺様が1度受けてみるのが1番だろう。さあ、クローゼス、やってみるがいい」



 ここは幼い頃には勝ち越していたというダンテに対応の見本をみせてもらおう。



「くらいなさい」



 魔王が優雅に指を振るうと、100本の槍が高速でダンテに殺到する。

 一瞬で血煙となるダンテ。

 えっ、何の抵抗も出来ずにダンテがミンチ以下にされたんだけど、どんな威力なの!?



「ビックリしたぞ」と、ダンテが僕のそばで復活する。

 うん、僕もビックリしたよ。

 まあ、ダンテは魔神族となったいまでも《不死の才》を有してるから死にはしないけど、今のでだいぶ力が削り取られたようだ。



「アルル、気を付けろ。お前が当たったら死体も残らず一瞬で消し飛ぶぞ」


「そうだろうね」



 僕には刺突無効(手)があるとはいえ、それは手限定。

 他の部位に当たれば致命傷は避けられない。

 100本の槍の同時攻撃なんて手や剣だけで防げるわけがない。



「さあ、次、ダンテお兄様のお友達、いきますよ」


「うわっと!」



 僕は連続の短距離転移で移動して回避しながら、近くにあった何本かの肉の槍を神剣で斬りつける。

 肉の槍は簡単に破壊されても、すぐに何事もなかったかのように復活した。

 数を減らすってのは出来ないってことか。

 槍の形状になっていても不死族の特性は失っていないらしい。

 厄介だ。

 でも、壊せないってだけなら、対応は可能だ。

 僕は心の中でサラに合図する。



(サラ、頼んだ)


『よかろう』



 サラの宿る僕の右手のひらに水晶の瞳が出現する。

 サラに神剣や神人となったリアさんやクウデリアでさえも閉じ込められた晶氷姫の瞳を再現してもらったのだ。



「それは、なんだ?」



 魔王が尋ねるが答える義理もない。

 さっさと終わらせる。



「全部固まれ」



 水晶の瞳の視界に入った肉の槍たちが、地面から伸びる水晶の中に閉じ込められていく。

 あのダンテを血煙にした肉の槍の破壊力は、十分な加速があって初めて得られるものと考え、動く前に固めてしまえば槍自体に威力はほとんどないんじゃないかって思ったけど、うまくいったようだ。

 魔王が指を動かしているみたいだけど、水晶に閉じ込められた肉の槍は動くことはなかった。



「面白い能力をお持ちですね。配下をいただくことはあっても奪われるのはあまりない経験でした」


「あんなになっていても配下だとは思っているんですね」


「ええ」


「さあ、クローゼス、お前はもう武器もないし、配下もほとんどいないが、どうする?」


「おかしなことを聞きますね。たしかに周りのものたちは固められましたけど、まだ使えるものはいるじゃないですか」



 そう言って、魔王の瞳が妖しく光る。

 また《色欲の移し身》の不可視の力を使ったようだ。

 でも、僕にはサラが対策してくれているし、ダンテやリアさんもクウデリアがそういう洗脳系のものから加護で守ってくれている。

 それなのに何ができるんだろ?

 そう思っていると、遠くのほうで何か凶悪な獣のような咆哮が聞こえてきた。



「今のは?」



 僕らが困惑している中、何も言わず魔王は微笑んでいる。

 そこへ、悪魔のノワールが報告と確認にやってくる。



「主、ポルン様が魔王の能力に影響を受けてしまったようでございます。いかが致しましょう」



 どうやら、僕らは魔王の能力の有効範囲を甘くみていたようだ。




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