魔王のもとへ
夜と闇の支配する49階層。
僕たちに迫っていたはずの魔王軍。
そんな魔王軍は僕の神剣リア・ウィリアムの一撃を叩き込まれて半壊状態。
50%程度の神剣リア・ウィリアムの一撃で大地は抉れ、遥か遠くの魔王城にまで亀裂が走っている。
うん、あり得ない威力だよね。
リアさんが僕に嘘をついたのもしょうがない。
数万はいたと思われる魔王軍も半数は直接喰らったり、巻き込まれたりして数を減らしていた。
「アルル、私の尺度では何がなんだかわからないくらい、すごい一撃でしたの。でも、魔王軍の数と戦意を削ぐには、これ以上ないくらいの効果があったと思いますの」
クウデリアがやって来て、顔を紅潮させながら称賛してくれているけど、僕たちのことが怖かったりしないんだろうか?
でも、クウデリアの顔を見ても、その表情には一片の恐怖や不安もない。
それが僕やリアさんへの信頼からきていると思うと、その信頼に応えられるようにもっと頑張らないといけないなと思う。
「クウデリア様、ちょうどいいんで、この抉れた大地をなぞるようにダンテを魔王城まで護衛してもらえませんか?」
「ダンテだけで大丈夫ですの? 安全性を考えるなら全員で動くこともできますの」
「他のみんなには僕と一緒に左右に残った魔王軍の相手をお願いしたいと思っています」
そこまで言ったときにノワールが口を挟んできた。
「主よ、差し出がましい口を聞くことをお許しください。残りの魔王軍の掃討など、主の御手を煩わせることもございません。主はポルン様と我々に、ただ敵を殲滅せよ、とお申し付けくださいませ」
「え~と、魔王軍は減ったとは言え、残りは1万以上もいるんだよ。ポルンやノワールだけで、大丈夫?」
「あのような有象無象の群れなど、恐れるに足りません。それよりも、先程の主の世界をも斬り裂かん一撃に昂った心を落ち着かせるためにも、どうぞ我々にも活躍の場を賜りたく、何卒御命じください」
う~ん、どうしよう。
でも、魔王城に控えている相手はもちろん魔王。
それに、実力未知数の幹部クラスが何人か控えているかもしれない。
確かにダンテ1人で向かわしていいか心配だ。
予備戦力を割かないといけないとしたら、魔王軍相手だと過剰戦力とも言える僕とリアさんが適任だろう。
「わかったよ。それじゃあ、ノワール、ダンテやポルンや他の悪魔のみんなにも、そういう作戦でいくって伝言をお願いしたいんだけどいい?」
「畏まりました」
慇懃に振る舞いながらも、ノワールの顔には喜びの色が見てとれた。
ノワールは、小声で「主の素晴らしさを目の当たりにしたとはいえ、このように心を揺さぶられ取り乱すようでは私もまだまだですね」と言いながら、早速動き出してくれる。
僕は知らない間にノワールの主としての威厳を示したことになっているらしい。
まあ、大きな問題はなさそうだし、今は触れずにいこう。
少しして伝言を受けたダンテがやってくる。
「アルル、呼んだか」
「ダンテ、ノワールから聞いたかもしれないけど、僕たちは先に魔王に会いに行こう」
「ついに、あいつに会えるのか……」
ダンテが感傷に浸っているようだけど、色々な思いを吐き出すのは、実際に魔王にあったときにしてもらおう。
僕はダンテに短く問いかける。
「ダンテ、いける?」
「もちろんだ」
これだけで今の僕らには十分意志疎通ができた。
「クウデリア様、魔王城までの手助けを頼みます」
「わかりましたの」
戦女神化したクウデリアが僕らの進む道を空から照らしてくれる。
僕は神剣リア・ウィリアムと共に近距離転移と斬撃、ダンテは魔槍アメージスと共に飛翔と刺突をそれぞれ繰り返し、邪魔になる魔物だけを蹴散らしながら魔王城を目指した。
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