今後に向けて
夜と闇の支配する46階層。
僕たちは襲撃してきた魔王軍の一部を返り討ちにした。
思ったより簡単に勝てて良かったけど、次はどうなるかはまだわからない。
僕たちは今後について話し合っていた。
「これなら、魔王も簡単に倒せそうですの」
「でも、クウデリア様油断は禁物ですよ。向こうにも強い人たちがいるかもしれないんですから」
そうは言ってみたけど、今の僕たちより強い魔物なんてそうはいないと思う。
階層主級を数体当てられても、今の僕たちなら負けることはないはずだ。
「主よ。他の悪魔からの情報で魔王の居場所はわかっています。いつでも出陣は可能です」
「ありがとう、ノワール。ダンテ、どうする?……って、ダンテ?」
僕たちも襲われた以上、魔王を襲い返しても文句を言われる筋合いはない。
でも、ダンテは暗い顔をしていた。
「ダンテ、元気ないポル」
「そんなことはないのだがな。やはり、知った顔を斬るというのは少し堪えるものだな」
今日の戦闘の中にダンテの知っている魔物たちが混じっていたようで、ダンテは一瞬戸惑いながらも魔槍で貫いていったという。
僕が斬った中にも、そういった魔物たちがいたのかと思うと、素直に喜べない。
幸いにも、ダンテの側近だったものたちの反応はなかったという話だったけど、次はどうなるかはわからない。
う~ん、ダンテの知り合いを遠慮なく倒せるかと言われると、ちょっと難しいかもしれない。
「必要な犠牲だ。次の戦闘でも俺様に遠慮することはない」
「でも、ダンテが悲しいなら別な手段も考える必要があるかな」
「何かいい方法があるのか?」
「僕にはないよ」
そっけなくいう僕に、だったらいうなよというような空気が流れる。
でも、僕には思いつかなくても、他にいい知恵を持っている人物(?)に心当たりはある。
ここは知識が豊富なサラに聞いてみよう。
(サラ、なんか殺さないで無力化する方法はない?)
『だとしてら、我がダンテに与え進化した《怠惰上手》を使ってみればよい。あれも色欲に負けない最上級の力の1つには違いないからな』
へぇ、名前のわりにすごい能力だったんだ。
早速ダンテに教えて上げよう。
「ダンテ、《怠惰上手》を使ってみるといいよ」
「《怠惰上手》か。そういえば、どういう能力であるのかまだ知らなかったな。アルルの虹色に光る手は他者の情報を読み取ることもできるのだったな。頼めるか?」
「いいよ」
僕は神の手(仮)を発動させると、ダンテの《怠惰上手》がどんな能力であるのか知るために情報を読み取っていく。
なになに。
《怠惰上手》
状態異常無効
回復効果・・・少しの時間で全回復する
催眠効果・・・強制的に睡眠に陥らせる
高速演算・・・思考速度が上がり時間がゆっくりに感じる
他にもいくつか効果があり、サラが最上級の能力の1つというのもわからなくはない。
その中でも、強制的に眠らせるって催眠効果は、ダンテの知り合いたちを傷つけないようにするって手段に使える気がする。
「だが敵の数は今回を上回るだろう。俺様の側近たちを気にして、アルルや他のものが傷ついてしまっては元もこもないぞ」
「どれだけ甘いって言われても、大事な人を傷つけないですむ方法があるなら挑戦してみようよ」
「すまないな」
「違うな。ダンテよ、そこは謝るところではない」
「そうですの。ダンテの望みをなるべく叶えたいというのがアルルの願いでもあるんですの」
「アルルにとっては、いつものことポル」
ダンテの謝罪の言葉にリアさん、クウデリア、ポルンが笑顔で言葉を返す。
そんな様子を見て、ダンテも改まった真剣な顔から力の抜けた表情になる。
「そうだな。ここは謝罪ではなく感謝すべきところなのだろうな」
「そうだね。僕もみんなから、そう教わったよ」
「アルルと一緒か……悪くないな。みんな、感謝する」
そう言ってダンテは僕たちに向けて深々と頭を下げた。
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