コボルトとの遭遇
本日2話目の投稿となります。
僕とリアさんは草原と森の広がる29階層にいた。
リアさんは今、川で水浴び中。
僕はリアさんに背を向けて、見張り兼護衛対象中という状態。
僕は師匠に叩き込まれた薬の調合方法や病気の知識について必死に暗唱して、無の境地を実現していた。
そんな僕にリアさんが後ろから声をかけてきた。
「アルル、遠くで物音がしないか?」
「物音?」
全力で音声を遮断するようにしていたから気付かなかったが、たしかに耳を澄ますと遠くで音がする。
リアさんが岩場にかけ上がる音が聞こえた。
「向こうで何かが争っているようだ。様子を見に行ってみるとしよう」
「はい……って、リアさん、なんて格好をしているんですか。まずは服を着てください!」
リアさんは右手で剣を取り、反対の手に持った服で体の前面の最低限しか隠せていない状態だった。
とっさに目をそらしたけど、リアさんの鍛えられつつも柔らかそうな肢体のいろいろ際どい部分が見えてしまった気がする。
え~と、これは不可抗力だよね。
服を着つつ、籠手とか最低限の部位だけ鎧を装着する、リアさん。
残りの鎧は僕の持つ魔法のポーチに放り込んでおいた。
「アルル、待たせたな、行くか」
「はい!」
僕たちは音のするほうへ身を隠しながら移動を開始する。
そこにいたのは、犬の頭と人間の体を持ったコボルトの子供だった。
コボルトは土潜虫こと、2体のワームに襲われている。
ワームの体長は僕の身長くらいで、太さは木の幹ほどもある。
「ワームは目が退化した肉食の魔物なので、なんでも襲う習性がある。大人のコボルトなら敵ではないだろうが、あの子供のコボルトでは、いずれ狩られるだろう」
たしかにリアさんの言う通り、コボルトも頑張ってはいるが未熟な爪や牙じゃ、ワームの皮膚を傷つけられないみたいだった。
本来はダンジョン内の自然な食物連鎖の一貫なんだろうけど、あんな小さい子が気持ち悪いワームに食べられるのを黙って見ていられない。
リアさんも助けたい様子だし、僕たち2人の考えは同じはずだ。
「リアさん、助けましょう」
「よし、わかった」
僕はワームに向かい、火竜の鱗を投げつける。
怯んだワームが、コボルトの子供から少しだけ離れてくれた。
そこへ、リアさんが切り込む。
「てやっ!」と、1体のワームの胴体を両断した。
「これでも食らえ」
僕は土の中に逃げようとした、もう1匹のワームに毒鳥の卵を投げつける。
毒鳥の卵が命中したワームは土の中に逃げ込んだけど、じわりじわりと毒が回り、やがて絶命するはずだ。
「終わったようだな」
「はい」
29階層での初めての戦いを終えた僕たちを、子供のコボルトは愛らしいキョトンとした瞳で見つめている。
自分を助けてくれたっていうのが何となくわかっているのか、コボルトは僕たちのことを警戒している様子もない。
こうして僕たちは目的のコボルトと意外な形での初接触をすることになった。
読んでくださり、ありがとうございます。
まだまだ短い文章なのに、ブックマークや評価してくださった方もいて励みになります。
ブックマークもようやく2桁。
まだまだ精進して参りたいと思います。。
m(_ _)m




