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悪役令嬢と呼ばれた少女

プロローグ

【タイトル、話し→話】あるところに、エアル王国という国がありました。


この国にはネフリティス学院という貴族子女が通う学校がありました。


16歳から18歳まで通えば、卒業までに立派な紳士淑女になるという、国一番の学校です。


ある年の卒業後パーティーで、1人の淑女が断罪されました。


女性の名前はマリン・クォーツ

クォーツ公爵家の長子にてこの国の王子ジェイド・スカイレッドの婚約者でした。


彼女は幼い頃から、次期王妃としてそれは厳しい教育を受けてきました。

貴族の子弟に必要とされているマナー・乗馬・剣術・知識・多数の語学力あらゆる分野で最高の成績を修めました。

そんな彼女は、学院一の淑女と呼ばれていました。




そんな彼女が断罪された理由、それは王子が他の女性に恋をしてしまったからです。


お相手はストレンジャー男爵の娘、カレン・ストレンジャーです。


カレンは男爵の私生児でしたが、跡取りであった1人息子を事故でなくしてしまい、跡取りに困った男爵がカレンを引き取ることに決めました。


カレンは街で評判な働き者でした。母親と共に朝から晩まで働いていました。


母を亡くしたところ、ストレンジャー男爵はカレンを養子に迎えました。


男爵家に引き取られた後も、その懸命さは変わりませんでした。カレンは早く新しい生活に慣れようと必死に努力しました。だけど多くの貴族令嬢たちは、必死に努力する彼女を笑いました。


王子は、カレンのそんな姿に恋をしました。


その恋心は本物でした。


自分より劣っているカレンに婚約者の王子を奪われたことに、マリンは嘆き激怒しました。


あるときは貴族のマナーができていないカレンを見てはしたないと、眉をひそめました。


『私のマナー教師を紹介しましょうか?』という嫌みつきでした。


また、あるときは一世代前に流行ったドレスを着てきたカレンを古臭いと嘲笑いました。


『我が家御用達の仕立て屋で、最新のドレスを作ったらどうですの?』と嫌みをまた言いました。


マナー教師への謝礼金も仕立て屋も、どちらも公爵家や次期王妃にふさわしい価値があるだけに、とても高額でした。


とても、男爵家には支払えない金額でした。


しかし、不思議なことにマリンが嫌みを言われた次の日には、何故か優秀なマナー教師や一流の仕立て屋がカレンの元にやって来ました。


カレンが『代金を支払うことができない』というと。


『とある方から既に、代金は頂いております』と毎回返答が返ってきます。


『お礼をしたいので、お名前を教えて下さい』と言っても


『お名前をお教えすることはできません』と返ってきます。


そのためカレンは毎回、お礼の手紙をしたため、マナー教師たちに託しました。そして、次に来るときには必ず返事を持ってきました。


返事の内容は、手紙に対するお礼やいつも他愛のない物ですが、毎回必ず

"貴女の頑張りをいつも見守っています"

と書かれていました。


カレンは、水を掛けられる、愛用の剣を折られるなど学園で受けた激しいイジメをこの言葉に元気付けられ、いつも乗り越えて来ました


そんなある日、事件が起きました。


カレンは階段から突き落とされてしまったのです。


ジェイドと特にカレンに好意を持つ男子生徒たちは犯人を血眼になって探しました。だけど、どんなに探しても見つかりませんでした。


しかし、卒業パーティーの一週間前にジェイドの元に匿名の手紙と荷物が届きました。


手紙にはカレンに嫌がらせをしていたのは、マリンであると書かれていました。荷物の中身は、マリンがカレンに嫌がらせをしていた証言や証拠が詰まっていました。


そして、卒業パーティー当日


「マリン・クォーツとの婚約を破棄する。そして、ジェイド・スカイレットの名をもって、そなた国外へ追放する。カレンに対する嫌がらせは、目を覆うものばかりだ。公爵令嬢としてあるまじき、行為。恥を知れ」


ジェイドは皆の前で声高らかに宣言しました。


驚きにざわめく生徒たち


目を見開き驚き、崩れ落ちるカレン


カレンを慰め、マリンを責め立てるジェイドの取り巻きたち


凜として佇み、真っ直ぐジェイドを見つめるマリン


「私がやった証拠でもありますか?」


マリンは鈴のような声でジェイドに話しかけました。


「ああ、もちろん」


ジェイドの言葉に、侍従は送られてきた証拠の数々を持ってきました。


マリンはキッと侍従を睨み付けました。


「はしたないぞ!クォーツ公爵令嬢!」


「国一番の令嬢の名が泣きます」


「大人しく、罪を認めろ」


「従兄弟として恥ずかしい」


その態度が気に食わなかったのか、ジェイドとその取り巻きはマリンを怒鳴り付けました。


「わかりました」


マリンは、ため息まじりにいいました。


「それでは、罪を認めるのだな」


「いいえ、私は何もやっておりません」


マリンは傲慢なまでのジェイドの言葉を遮りました。


「私は、カレン・ストレンジャーに嫌がらせを行ったことはありません。しかし、殿下がわたくしとの婚約破棄と追放を望むのであれば、わたくしはそれを受け入れましょう」


ジェイドの目を見ながら、堂々と言うマリンに、周りは圧倒されました。


その姿は断罪された哀れな少女ではなく、王妃のようは誇り高い女性の姿でした。


「ジェイド様。わたくしは、今夜限りでこの国を去ります。


……ジェイド様これだけは覚えておいてください。私は今までも、今も、そしてこれからも、あなた様のことを愛しております。




それでは皆様ごきげんよう」


マリンは最高位の礼をして颯爽とパーティー会場を後にしました。


カレンは、口を手で押さえながら涙を流し続けました。


王子は、そんなカレンの涙を優しく拭いました。


王子の取り巻きは、疲れているだろうと、カレンを宿舎に送り届けました。


次の日、宿舎を訪れると、カレンは宿舎から忽然と姿を消していました。


ジェイドと取り巻き達は、カレンを探しましたが見つけることはできませんでした。

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