78 俺がお屋敷の中を、案内されているんだが
ミューケンシュタウス子爵様のお屋敷に到着した。
「ようこそ、おいでくださいました。先日はキサナティアお嬢様の危ないところを助けていただき、私からもお礼を申し上げさせていただきます」
キサナティアお嬢様付きのメイドのクレールさんが、ニッコリとした笑顔で、丁寧な態度で出迎えてくれた。
なんか不思議な感じだ。
ラドンツの町に来る間、一緒に旅をしてきたけど、女騎士のエニムさんほど警戒心は向けられてはいなかったものの、ここまで砕けた態度で接してくれたわけでもなかった。
だけど、今は警戒心もなく接してくれている。
そのメイドのクレールさんの案内で客間らしきところに通された。
途中の廊下が、これが家かと思うほど、前世の学校の廊下みたいにものすごく長い。
その長い廊下の所々に、まるで美術館の展示物のように壺や絵画が飾られているのが印象的だ。
流石は貴族様のお屋敷って感じがする。
まあ、前世のテレビとか動画とかゲームとかのイメージなんだけどさ。
やがて、一つの部屋に通された。
クレールさんに促されるまま、一先ず皆、客間のソファーに腰掛ける。
ベーシウス様だけは座らずに、扉のあたりに立って控えているみたいだ。
俺たちの前にはそれぞれクレールさんが飲み物を用意してくれた。
思わず、ホッと一息つく。
しばらくして、扉が開き、キサナティアお嬢様と女騎士のエニム様が入ってきた。
あんなことがあったにもかかわらず、以前とあまり変わらないような感じがする。
それに合わせて、オズベルト父さんたちが立ち上がったので、俺とリノアも慌ててそれに倣って立ち上がった。
一応、俺なりにお土産になるものは用意してある。
空間収納にしまってあるけど、出すときに怪しまれないようにナップサックのような背負い袋をしょっている。
本当はウエストポーチのようなものの方が便利なんだろうけど、何分7才の体つきじゃあ、ある程度の大きさがあるものを入れておいたというのは不自然だ。
「先日は私の危ないところを救っていただき、感謝いたします」
そういうと、キサナティアお嬢様はきれいなお辞儀をしてくれた。
「もったいないお言葉です」
オズベルト父さんが返事をする。
俺じゃあ、貴族様に対してなんて話したらいいのかわからないので、基本的にやり取りはオズベルト父さんに任せることになっていた。
一通りのやり取りが終わった後。
「早速で悪いのですけど、私の後についてきてくれるかしら。会わせたい人がいるの」
と、キサナティアお嬢様が切り出してきた。
「キサナティア様。まさか私室に通すおつもりでは!?」
「それは流石に……」
その言葉に驚いたエニム様とクレールさんが難色を示す。
「本人の希望です。直接会ってお礼を述べたいと」
「……わかりました」
クレールさんは仕方ないという感じで、エニム様は何かもの言いたげな感じだけど、それ以上何かを言うことはなかった。
これってもしかして、いきなり、ミューケンシュタウス子爵様に会うことになるという流れじゃないのか?
うえぇ。
できれば、そんな偉い人に会うのは遠慮したいな。
礼儀作法なんて前世の一般的な知識ぐらいしか持っていないし、それだって、この世界の礼儀作法に合っているのかもわかんないし。
貴族様の前で粗相なんかしたら、子供だからって許されるかも分からない。
そんな俺の心の内などお構いなしにキサナティアお嬢様は部屋を出てしまう。
はあ、ついていくしかないよね、これ。
そして、この部屋に通された時も思ったけど、前世の学校の廊下のように長い廊下に出ると、俺たちの前を先導するように歩いていくキサナティアお嬢様。
俺やリノアとは同い年とは思えないくらいな見事な姿勢で歩いている。
俺たちだってボライゼ師匠から剣を習っているから、それなりに姿勢は良い方だと思う。
けど、俺たちとは何処か違う感じがする。
どことなく凛とした品格があるというか何というか。
同い年なんだけど。
病弱にもかかわらず、やっぱりこういうところが、貴族としてのマナーとして教え込まれている所なのだろうかな?
素直に感心する。
そして、しばらく歩いていくと、キサナティアお嬢様は一つの扉の前で立ち止まった。
「入ります」
短くそういうと、徐に扉を開けていく。
そこから見えた部屋は子爵様の部屋というには妙に女性らしい色合いの部屋だった。
ミューケンシュタウス子爵の当主様だからてっきり男性だと思っていたけど、もしかして女性当主様?
一瞬そう思った。
いや、でも、ベーシウス様の話では俺たちが泊まっている宿はキサナティアお嬢様の父親である子爵様が取り計らってくれたと言っていたはずだし。
「どうぞ」
「失礼します」
そしてメイドのクレールさんに更に中に入るように促され入室すると、本当に自室なのだろうこれまたかわいらしいお姫様のようなベットがあり、そこには。
(えっ!? キサナティアお嬢様がもう一人?)




