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67  俺が、ラドンツの町を眺めていたんだが

 ラドンツの町に着いた。

 俺がこの世界に転生して、前世の記憶(きおく)を取り戻してから、初めての大きな町という事になる。

 見た感じ、前世のお伽(とぎ)の国系のテーマパークといった感じだ。

 あちこちにそれらしい衣装(いしょう)、じゃなかった服装(ふくそう)をした人々が行きかっていて、活気があって賑(にぎ)やかだな。

 今にも何処(どこ)かの道端(みちばた)に、手回しのオルゴールだっけかオルガンだったっけかを回している人や、アコーディオンとかヴァイオリンを弾(ひ)いているひとがいて、楽し気な音楽が聞こえてきそうな雰囲気がする。

 折角(せっかく)だから、いろいろな所を見て回れたらいいな。

 気分は観光客(かんこうきゃく)だ。

 今から楽しみだな。

「こら、フォルト、今回、遊びに来ているわけじゃないんだからな。その辺を分かっているか?」

「はーい」

 オズベルト父さんから注意が飛ぶ。

 多少浮(う)かれているのがバレバレらしい。

 そういえばとリノアを見る。

 俺は前世、日本に住んでいた記憶があるから、これくらいの町や人の数にはなんという事もないが、リノアは正真正銘初めての大きな町ということになる。

 気後(きおく)れしていないだろうかと心配したが、街並みや店、行きかう人々を見て、キラキラとした瞳(ひとみ)を浮(う)かべていた。

 どうやら、取り越(こ)し苦労だったようだ。

「どうしますか? 私(わたし)たちは正式に教会から召喚状(しょうかんじょう)を貰(もら)っているので、教会内の宿舎(しゅくしゃ)に泊(と)めてもらうこともできますが? それか、通常の巡礼者(じゅんれいしゃ)としての宿泊もできますけど」

「そうですなあ、うーむ……いや、荷馬車だけ停(と)めさせてもらって、宿は教会の近くの場所を適当に探(さが)しましょう。教会の関係者でもあるヒューク司祭の前でいうのもなんですが、事情が事情です。フォルトとリノアちゃんが巻き込まれている以上、教会とはある程度の距離(きょり)を取っておいた方がいいでしょう」

「構(かま)いませんよ。なるほど、そうですね。折角なのでフォルト君とリノアさんにラドンツの町を見せて回りたいので、教会の寄宿舎(きしゅくしゃ)を出入りするより町の中の宿屋の方が行動しやすいからとでも言えば、納得(なっとく)してもらえるでしょう」

 とりあえずの方針(ほうしん)は決まったようで、俺たちは一先(ひとま)ず、ラドンツの月の双子女神エボーナ神とボニーナ神を祀(まつ)っている教会支部へと向かうことになった。

 どう動くにしても、この荷馬車と荷物を安全に停(と)めておける場所に置いておかないと落ち着いて行動することが出来ないだろうし。

 教会であれば、その辺りは安心して任(まか)せられるだろう。

 その後で、適当な宿屋を探すことになる。

 街中で馬車を走らせていくと、やがて、教会支部の建物が見えてきた。

 流石(さすが)に、パスレク村の教会とは比(くら)べ物にならないくらいに大きくて立派だ。

 これでも、地方の町の教会という事になるそうな。

 教会の総本山(そうほんざん)とも言うべき場所は別の国にあるらしい。 

 ドーザリブ王国の本部は王都ドーザリブにあって、ここラドンツの町にあるのは教会支部に当たるのだとヒューク司祭が教えてくれた。

 それで、この大きさか。

 ということは王都ドーザリブの教会はもっと大きいという事になるのだろう。

「ようヒューク、久しぶり!」

 教会の入り口付近にいた、ヒューク司祭と同じ紺色(こんいろ)の法衣(ほうい)を着た男の人がにこやかにヒューク司祭に声をかけてきた。

「おお、エメンズ! 久しぶりですね! 何年ぶりになりますかね?」

 それにヒューク司祭も笑顔で答えている。

 どうやら、知り合いらしい。

 まあ、ヒューク司祭は冒険者(ぼうけんしゃ)として、あちこち旅していたのだから、いろいろなところに知り合いがいてもおかしくはないだろう。

 それも一番近くの大きな町の教会関係者なら猶更(なおさら)。

「ヒュークがこちらに顔を出さないのが悪い。冒険者(ぼうけんしゃ)ギルドの用事でついでに尋ねてくるミリアーナちゃんの方がよっぽど顔を合わせているくらいだぞ」

 ミリアーナ先生も知っているのか。

 そういえば、ミリアーナ先生は助祭見習(じょさいみなら)いで冒険者(ぼうけんしゃ)ランクはEランクだったっけ。

 確か、Eランクだと、定期的に依頼(いらい)を熟(こな)さないと冒険者(ぼうけんしゃ)資格を失効(しっこう)してしまうんだっけか。

 ミリアーナ先生は冒険者(ぼうけんしゃ)ギルドの依頼(いらい)という形で、回復薬を作って定期的に冒険者(ぼうけんしゃ)ギルドに収(おさ)めることで、冒険者資格(ぼうけんしゃしかく)の更新(こうしん)をしているそうだ。

「それより、手紙を読んだぞ。ついに見つけたんだってな!」

「ええ、まあ」

 ヒューク司祭は照(て)れくさそうに控(ひか)え目に返す。

「やったじゃないか! 長年の苦労が、やっと、実を結(むす)んだわけだ」

 それに比べてエメンズ司祭? の方が大喜びしているように見える。

 たぶんこの二人は良い友人関係なんだろうと思う。

「有難う!」

「で、そっちの子たちが例の子たちか?」

 どうやら、さっきの会話から、事前に送ったという手紙をエメンズ司祭? も読んでいたようだ。

 ある程度の事情は理解しているらしい。

「ええ、そうです。一人は見ての通り男の子なんですけどね」

 エメンズ司祭? が俺のことを見る。

「確かに」

「で、オルレライン司教と大司祭の様子はどうですか?」

「大司祭はお前がドーザリブの本協会にも手紙を出していたことを苦々(にがにが)しく思っているみたいだぞ」

「でしょうね」

 あれ?

 ヒューク司祭が、珍(めずら)しく人を名前で呼んでない。

 エメンズ司祭? も同じだ。

 司教様の方は名前も言っているのに。

 司教様も大司祭様も、ヒューク司祭よりどちらも上の人だよね。

 ひょっとして、大司祭とは折(お)り合いが悪いのかな?

 もしかして、前に手柄(てがら)を横取りされるんじゃないかって俺が、心配していった時、対策を打っているから大丈夫みたいなことを言っていたけど、この事だったのかも。

 だとすると、この様子なら、こちらの教会にはエメンズ司祭宛てに送っていたのかもしれないな。

 そこからオルレライン司教に報告(ほうこく)してもらったのかもしれない。

 その方が確実に思えるし。

「オルレライン司教は今、所用で出ているよ」

「そうですか。では、どうしましょうか?」

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