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48 俺が雨宿りの野宿の次の日の朝、森で食材集めをしていたのだが

 夕方前から、あいにくの雨模様。

 仕方なく、少し進むと開けた所があり、俺たちはそこで馬車を止め休むことになった。

「まだ、暗くなるには早いがこの天候じゃ、今日はここまでだな」

「そうですね。子供たちもいますから、無理をしても意味がありませんし」

「うむ、そうですな」

「ではテントの準備をしましょう。フォルト君、リノアさん、手伝ってください」

「「はーい!」」

 結局、馬車の前方にあやしい雲が広がり始めてからしばらくして雨が降ってきた

 幸い早めに発見できたため、雨を凌ぎながら野宿のできそうな場所を見つけることが出来、テントを張るのが、多少()れたものの、何とか間に合った。

 明日には雨が通り過ぎてくれることを祈りつつ待つことにする。

「雨、明日にはやむかなあ?」

「う~ん、結構降ってるし、どうだろう?」

 リノアと俺はテントの入り口から二人で縦に顔を出して空を見上げる。

「ほら二人とも、そんなことをやっていると頭がれて風邪をひくぞ。大人しく中に入っていなさい」

「「は~い」」

 テントの中に顔をひっこめる。

 このテントはヒューク司祭が冒険者時代に仲間と使っていたもので、パーティーを解散してパスレク村に来る際に、教会で何かあった際に使えるかもしれないということで、仲間内でパーティーの所有していたものを分けるときにもらい受けたものだという。

「うちにもあるの?」

「いや、うちのは俺たちより遠くの国に行くことになっていた仲間に渡した」

 俺が尋ねてみると、木のコップにミリアーナさんがせんじて持たせてくれた疲れのとれる薬湯茶を飲みながらオズベルト父さんが答えてくれた。

「そっか、ちょっと残念」

 まあ、うちにあったら、間違いなく、アムルト兄さんとハワルト兄さんと俺の3人で遊んでいただろうな。


   ◇


 次の日の朝。

 雨はすっかり止んでいたけど、結構(きり)が出ている。

 まあ、もう少しすればうすれてくるだろうけど。

 ただ、道がぬかるんでいるから移動はちょっと大変そうだ。

 とりあえず、朝食の準備をする。

 俺たちは森に入り、食べられそうな野草やキノコを探すことにした。

 たきぎになりそうな木は昨日あらかじめ雨が降る前にテントの中に集めてある。

 森の中は雨上がりの木々から発せられる香りと、少し重たい体にまとわりつく独特の湿しめり気をびていた。

 地面にき詰められた枯葉も普段のシャクリシャクリという小気味の良い音ではなく、ショリショリという水気をびた音を立てている。

 リノアと俺は少しはなれて手分けして食材を集めることにした。

 俺はリノアに見られない位置で、空間収納の中に野草やキノコを放り込んでいく。

 空間収納を使うことで毒キノコか否かが確実に判断できるので便利だ。

 今は旅の途中だし、お腹をこわしたり、体調をくずしたりするのは絶対にけたいしな。

 それで、見付けられたのはこんな感じだ。


 イヤシンス (薬用) 3束

 クエそう (食用) 27束

 アブルだけ (食用) 14本

 ハラクダスだけ (毒キノコ) 3本


 アストランの森では見たことがなかったものもいくつかあるけど、こういったものも分類にかけると食べられるものか、薬効があるものか、毒があるものかなんかが見極みきわめられるので本当便利だ。

 とりあえず食べられそうな物だけ空間収納から取り出して、袋に移す。

 食べられない物はそのまま空間収納に入れておく。

 まだ、空き容量に余裕があるし、いつか何かの役に立つときが来るかもしれない。

 いらなくなれば、その時に捨てればいいわけだし。

「こんなもんかな?」

 俺は伸びをして、リノアに声をかけようとしたその瞬間。


「きゃああぁー!」


 リノアのさけぶ声がする。

「リノア、どうした!?」

 俺は咄嗟とっさにリノアのいる方に振り向きさけぶ。

 見れば丁度リノアが何かに追いかけられるように、こっちに向かって走ってくる姿が目に入ってきた。

 ミスった。

 知らないうちに少し離れ過ぎてしまっていたようだ。


 ズルッ ズルッ


 なんだあれは?

 パッと見、ぶよぶよした感じの物体が、うようにリノアの後ろからリノアを追いかけて向かってきている。

 よく見ると、巨大なナメクジの姿をしていた。

 あんな巨大なナメクジ、前世でも見たことないが、口らしき部分から見えかくれする歯はギザギザしているみたいで意外とするどそうに見える。

「リノア、こっちへ走れ!」

 巨大なナメクジのくせに意外と速い!

 ぬかるんで足場の悪い森の中でリノアも転ばないように走っているのだろう。

 手に袋も持っているし、思うようにスピードが出せないと見えて、逆にぬかるんでいる場所が得意そうな巨大ナメクジとほとんどど差が付かず振り切れないでいる。

「リノア、袋を捨てるんだ!」

 リノアは俺の言ったとおりに袋を横に投げ捨てる。

 俺は巨大ナメクジを牽制けんせいすべく、後ろ手で空間収納から手ごろな石を取り出し、思いっきり振りかぶって巨大ナメクジに向かって投げた。

 ヒュンッと石が空気を切るおとがして、巨大ナメクジの顔面? に見事ヒットする。

(よしっ! ストライク!)


 ギュアアアッ!


 巨大ナメクジが大きな悲鳴を上げて一瞬怯み動きを止める。

「今のうちだ! 逃げるぞリノア!」

「フォルトちゃん!」

 俺はリノアが通り過ぎてから、リノアの跡を追って走り出す。

 ただ歩いているときはすべってころばないようにだけ気を付けていればよかったから、そんなに感じなかったけど、こけがびっしり生えているうえ、秋も終わりで枯葉も多く、結構滑りやすい。

 しかも、石を投げつけられて怒ったのか、何となくだけど、ってるのにも関わらず、さっきより速度が速くなっている気がする。

 失敗したかな?

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