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2 俺が5才になって、前世の記憶を取り戻したんだが

「いってきまーす!」

「フォルト、転ばないように気を付けて行ってらっしゃい! 夕飯までには帰って来るのよ!」

 家の奥から母さんの声が聞こえる。

「は~い!」

「あと山の奥には行ってはだめよ」

「分かってる。分かってるって!」

 俺は小さなかごを背負い近くの森に入る。

 幸いなことにこの森は大した魔物も出ず、頻繁に村の人も入っているので、日中の近場なら子供でも安全に立ち入ることが出来る。

 と言うか、この世界マジで魔物がいる。前世のクラスメイトが聞いたら、実情は無視し狂喜乱舞して「来たぁ~!」とか絶叫しそうな環境だ。

 自分もまだ直接見たわけではないが、親の話や周りの大人たちの話からこの世界にはいろいろな魔物が生息しているらしい事は理解できた。

 ドラゴンだっているらしい。それは確かに見てみたい気もするが、実際に見ることになったら命が危ない。

 そんな中で比較的安全な場所に生まれた事は助かった。

 俺の異世界転生を担当した薄紫髪の天使、確かパスティエルって言ってたっけか。

 そのパスティエルが言うには基本的に生まれる地域や生まれる種族は選べないが、『転出証明書』に記載しておく事によって転入先の異世界である程度は考慮こうりょされるそうだ。

 ただ、転入手続きの時には当人は真っさらの魂の状態でスタートするから本来は殆ど自覚はないらしい。

 俺の場合は何か事情があるらしく特別に前世の記憶を持ち越すことが許可され、知的生命体として転生ができる事になっていたそうだけど。

 ただ、赤ちゃんから少し経った時点で意識が戻るらしかったので、体を動かすことが好きな俺は身体が動かせないままなのが長く続くのは厳しいとこぼしたところ、記憶が戻るタイミングを身体がある程度動かせるようになる5歳か6歳くらいからではどうかと提案されたので、それで頼むことにした。

 そう俺は5才児になりました。

 あの薄紫色の髪のツインテール天使と相談した通り前世の記憶を持ち越して。

 記憶を思い出したのはつい最近の事だけどな。

 不思議な事に前世の記憶を取り戻しても赤ちゃんからの記憶がなくなる訳では無く、すんなり融合した様だ。だからこの世界の家族を父さんなら父さん、母さんなら母さんと違和感なく思い受け入れることができた。

 まあ、それまでの記憶は小さかったので朧げにしか覚えていないんだけどな。

 それにしても『転出証明書』とか『転入手続き』とか、マジで役所だな。いやまあ、引っ越しとかした事無いからよくは解らないけどさ。多分あんな感じなんだと思う。

 それはそうと、今俺は畑で草むしりをしたり、森の浅い所に入って野草を取ったりして日々を過ごしている。遊んでもいるが、この世界では5才でもある程度の労働力と見なされている。前世地球なら児童ウンチャラで大騒ぎなんだろうけど、この世界でそんな事は言ってられない。そう言う事が言える世界はある程度平和で豊かな良い世界なんだと思うけど、同時にそんな世界でも争いだの戦争だのはなくならないし。

 おっと、話がれたが、そんな感じで、俺は今日森の浅い所で両親に教えてもらった食べられる野草や薬になる野草なんかを探している。

 もっとも、まだお手伝いと言うより周りからは真似事と見られている様だ。

 これは俺としても都合がいいので、自由に村の中や森を動き回っている。

 まあ、頭が重く重心が悪い為、歩きづらいところは難点ではあるが。すぐそれも慣れるだろう。

 俺が転生した村はスパレク村と言う。この村は全部で人口2~300人程。聞いた話を総合してみたところだと、中くらいか大きい方の村だそうだ。

 そこそこ開けたところはあり畑なんかもあるが、ある程度行くと周囲は森に囲まれている。自然豊かなところだ。

 転生前に、中世ヨーロッパ風のところと聞いていたので想像通りと言えば想像通り昔のヨーロッパの田舎の村といったイメージだ。都市に行けばもっと発展しているのだろうが、ここからだと少し遠いらしいので良く分からない。

 森に入ってから人目に付かない所まで行き、人気のない事を確認してから適当な岩の上に腰を下ろす。

 耳をすませば辺りでは木の葉が風に吹かれ擦れてサラサラと涼やかな音を奏でている。

 ここで、薄紫髪ツインテール天使のパスティエルに付けてもらった空間収納のスキルについてや諸々の事を、毎回考えている。

 それに当たり、この世界に来てからクラスメイト達が話していたゲームやらネット小説やらの話を出来るだけ思い出すようにしていた。

 それから、思い出したことで試せそうなことがあれば、ここでいろいろ試したりもしている。

「あいつらには感謝だな」

 ゲームをやらない訳でもないし、漫画もアニメも見ない訳でもないけど、自分はどちらかと言えば身体を動かす方が性に合ってるんでやりこんでいるのでもないし、詳しくも無い。

 皆でゲームセンターに行った時も、どちらかと言うと併設されているバッティングセンターに行ったり、ゲームもリズムゲームやモグラやワニやカニたちと戯れるゲームをよくしていた。

 だから大体の場合、この手の話は聞き役にてっしている事の方が多かったんだよ。

 それを今、一つでも多くの事を思い出すようにしている。

 確かクラスメイトが騒いでいた空間収納の話の中に「この能力は内緒の方が良い」というのがあったので、この空間収納の能力については家族にも話していない。

 まあ、そうだよな。前世日本でさえこんな技術有り得ないんだから、ばれたらえらいことになるのは俺でも想像できる。

 そして、まず初めにこの空間収納の機能について把握はあくするところから始めることにした。

 どのくらい入るのか?

 入っている物はどういう風に感じられるのか?

 時間経過は有るのか?

 レベルアップみたいなものはあるのか?

「あと、どんな事言ってたっけな?」

 まあ、おいおい思い出していけばいいか。

取り敢えず、この空間収納の能力について、いろいろ自分でちゃんと機能を把握はあくしておく必要がありそうだ。

 だから 一先ずは思い付いたことを一つ一つ確かめて行くことにしよう。

 まずはお手伝いの為、背負ってきたかごにお目当ての草やキノコを入れていく。

 前世、部活でバックネット裏の雑草取りとかはよくやってたから、こういう作業はそれ程苦にはならない。

 かごいっぱいに草やキノコを取った後、空間収納へ手あたり次第、石や木や草やキノコを放り込んでいく。

 空間収納への取り込みは手で触れることで可能になる。

 と言うか正確に言うと取り込む意思を持って対象物に触れようとする直前に取り込む事ができるのである。だから土とかを取り込もうとした時も手が汚れることがない。これは便利だ。

 ただ、触れる直前の物を取り込めるのであって、手から離れている遠隔の物を取り込めるわけではない。

 これは訓練次第で間が空いていても取り込めるようになるのだろうか? やっぱレベルとかいうのがあるのかな?

 後、見え方だが前世、パソコンとかでおなじみの階層分けで管理できるみたいだし、ある程度は自動で分類分けをしてくれるみたいだ。

 なので適当に放り込んでも石なら石に、草なら草に分類してくれる。更に草でも種類ごとに分類してくれるし、簡単な説明が付くときもあるのでホントこれは便利だ。

後から思い付いたんだけど、そこら辺にある草やキノコを適当に空間収納に取り込んで整頓された物をかごの中に出せば良いんじゃないかと気が付いた。手もよごれないし。

 なので早速やってみた。

 かごの中の物をいったん空間収納にしまう。

 そして空間収納に意識を集中してみる。

 おお! 出来た出来た。うまく行ったじゃないか。

 かごの中の結果はこんな感じだった。

 


 イヤシンス(薬用) 12束

 クエ草(食用) 27束

 ミテル茸(食用) 6本

 クダス茸(毒キノコ) 4本

 ハラクダス茸(毒キノコ) 5本

 

 分類してみたら、食べられると思って取ってみたキノコの半分以上が毒キノコだった。これはしまっておこう。

 もっと早くに気が付いていれば俺の苦労も少なくて済んだし、もっとちゃんとお手伝いできたのに。

 きっと今までも、かご一杯に持ち帰って行ってても使える草やキノコはほんの半分程度だったんだろうな。

 両親も教えてくれればいいのに、あれかな? まずはお手伝いをしているという形から入って行かせようという感じかな。めて育てるとか、そういうの。

 さっき、真似事と見られていると言っていたけど、まさにその通りだったという事だな。そこまで子供じゃないのに……5才児だから仕方ないか。

 でも何となくお手伝いが出来ている気になっていたのが恥ずかしい。

 それにしてもこっちの世界の発音何だろうが、どれも何か微妙な名前なんだよな。まあ、気にしないようにするか。

 さっき直接空間収納に適当に放り込んだのも合わせて今必要な物をかごに移す。

 右手をかごの中に向けてかざし、出すものを選択して出すイメージをすれば空間収納から取り出すことが出来る。

 結構、適当に取っていた物の中にも食べられそうなものとか薬になりそうな物とかがあった。

 それはそれで複雑な気持ちにはなるが。

 改めて思う。もっと早く思い付けばよかった。

 気が付いてしまったがゆえか、微妙に疲労感が出てきたな。

 ……そろそろ帰るとしようか。

 時刻は昼過ぎ。

 この世界は一日二食が普通で夕方前に夕食となる。なので帰っても夕食までにはまだ間がある。

 だけど、何と無く疲労感に包まれつつ、籠を背負い森を出て家に帰ることにした。

 ここはまだ村でも安全な場所なので、子どもでも自由に歩き回らせてくれる。

「フォルトちゃん、また森に入ってたの?」

 森から出て家に帰る為に道を歩いていると村の子供でリノアが声を掛けて来た。一応同い年だ。可愛い女の子と言えば可愛いのだがまだ5才なのでそれだけだ。

「リノア、フォルトなんて放っておいてオレたちと川にいこうぜ」

「オレたちが魚たくさん釣って見せるぜ!」

 さらに後から、一つ年上のデミスとアグレインがやって来た。

 この村には子供と呼べる年齢の子は15歳までで大体3~40人いる。15歳までといってもそのずっと前から家の仕事はしているのであくまで都市の基準に合わせての話だ。

「いいけど、フォルトちゃんも一緒に行こうよ」

「ああ、うん、いいけど、このかごを家に置いて来てから出ないと」

「なら、待ってる! いいよねデミスちゃんアグレインちゃん」

 にっこりリノアに尋ねられた二人は顔を赤くして了承している。

 それにしても、リノアが俺に話掛けると、デミスとアグレインの表情が不機嫌になっていくのがわかる。

 これは、あれだな。二人ともリノアを気になっているんだな。

 まあ、この村の中の同世代の女の子の中では一番かわいいし、将来性はあるだろうけど、5才だぞ……って、同世代か俺も。

 一先ず家に帰ってかごを置いてくることにした。

その時母親に「随分綺麗に取って来たのね」と言われて悪い事をしたわけではないけど少しあせる。

 しまった。空間収納から出した物は、というか入れる物はある程度余分な物は取り払われているから、手で取った時より遥かに綺麗な状態になるんだった。

 籠に戻したときに上からでも土を振り撒いておけばよかったかな? ……それはそれでなんか嫌だな。

 俺は返事もそこそこにそそくさと家を飛び出す。

 それから三人に合流して近くの川へと向かった。

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