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霊能者のお仕事  作者: 津嶋朋靖
呪殺師は可愛い男の子が好き

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地上げ屋

「ふむ」


 権堂氏は僕らを見回すと、不意に樒の前に進み出た。


「な……何ですか?」


 自分よりも頭一つ分背の低い老人に見上げられ、樒は若干狼狽(うろた)える。


 老人はしばらくの間見つめてから、ぼそっとつぶやくように言った。


「地上げ屋じゃよ」

「は?」

「他にもいろいろとやっておったが、地上げ屋が一番儲かったな」

「あの……地上げ屋って?」

「ん? もしかして、地上げ屋は死語になってしまって、今の若い子は知らないのか?」


 いや、若い僕でも「地上げ屋」は知っていますが……樒だって知っているだろ?


 それよりなぜ、ここでそんな事を?


 話が、全然つながっていないのですけど……


「簡単に言うなら、安い土地に住んでいる貧乏人にありとあらゆる嫌がらせをやって、土地から立ち退かせてから、その土地を安く買い叩き、高く転売するという商売じゃな。地上げ屋とは」

「いや、私だってバブル経済の頃の日本に、地上げ屋という人達がいたことぐらい知っていますよ」

「なんじゃ嬢ちゃん。知っておったのか」

「バブル経済の日本は、私にとってあこがれですから」


 金の好きな、樒らしいな。


「あの頃の霊能者は、地上げ屋さんとグルになってブイブイ活躍していたと聞いています」

「ほう。懐かしいのお。確かにあの頃は、土地から立ち退かないで自殺する貧乏人が相次いで、そいつらが自爆霊になって困っていたわ。そんな時に、霊能者を高額で雇って払ってもらったものだ」


 そういう非道ひどい話を、なつかしいそうに語らないでほしいのですけど……


「へえ! バブルってそんな良い時代だったのですね」


 いや、樒。全然良くないぞ。


「で? 地上げ屋がなにか?」

「なにって嬢ちゃん、さっき聞いておっただろう」

「なにを?」

「どんな悪いことをすれば。こんな大きな家に住めるかと。だから、ワシは地上げ屋という悪いことをしていたと、答えただけじゃ」

「ゲ!」

 

 樒の顔がサッと青ざめる。


 門の前で樒が言っていたこと、聞かれていた? 隠しマイクか。

 

「あの……それはですね」

「ハハハ! 気にすることはないよ。嬢ちゃん。ワシも若い頃は貧しくてな。でかい家を見る度に、嬢ちゃんと同じ事を言っていた」

「そ……そうですか……」

「嬢ちゃん、なかなか見所があるな。なんなら、後でワシの金儲けのノウハウを伝授してやろうか」

「え! マジすか!?」


 あかん。樒の奴、目に$マークが現れている。


「コホン!」


 芙蓉さんが咳払いをしたのはその時。


「権堂さん。今日は、樒さんの就職斡旋をしてもらいにきたのではありませんので」


 就職斡旋とは違うような……


「私たちは、権堂さんの大切なお命を守りに来たのです」

「わかっとるよ」


 権藤氏は、面倒くさそうに芙蓉さんに答えると、樒の方に向き直る。


「背の高い嬢ちゃん。ワシを守り切ってくれたら、さっきの話進めてもいいぞ」

「はい! 今夜は気合い入れて、守らせていただきます」


 金が絡むと、樒はがぜんやる気出すな。


「まあ、立ち話もなんじゃ。中に入ってくれ」


 権堂氏に促され、僕たちは屋敷内に入っていった。


 案内されたのは、僕の部屋の十倍はありそうな広いリビングルーム。


 シャンデリアや大理石のテーブルなど、豪華な調度品の数々に樒は目を奪われた。


「わーい! 気持ちいいカーペット」


 ミクちゃんは、豪華な絨毯の上で転がり始める。


「やめなさい! みっともない」


 たまりかねて、芙蓉さんがミクちゃんをつまみ上げた。


「そうよ。ミクちゃん。このペルシャ絨毯、高いのだから。汚したら大変よ」

「にゃおおん」


 樒にまでたしなめられ、ミクちゃんは猫化する。


「樒。これって、ペルシャ絨毯なのか?」

「たぶん……」


 そこで樒は、権堂氏の方を見る。


「そうですよね?」

「いかにも。先日、六本木に行って百八十万で買ってきた」

「ひゃ……百八十万」


 値段を聞いて、ミクちゃんもさすがにひきつった。


「そこの小さい嬢ちゃん。絨毯は、気持ち良かったかね?」

「は……はい。とっても……」

「そうか。大枚はたいて買った甲斐があったわい。嬢ちゃん、遠慮せんで転がって良いぞ。なに、『汚したから弁償しろ』などというケチな事は言わんよ」


 そうは言われても、値段を知っては気持ちよく転がれないだろうな。

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