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霊能者のお仕事  作者: 津嶋朋靖
呪殺師は可愛い男の子が好き

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指名料

「あなたたちは、呪殺師ヒョーという人物をどの程度知っていますか?」


 僕の知っている限り、呪殺師ヒョーと言ったら、年齢国籍性別不明の非情で冷酷な殺し屋。奴に呪われた者は助からない。


 呪術界のゴルゴ13というイメージだが……


 問題は……


「芙蓉さん。その予告状って本物ですか? 僕の聞いた話では、呪術って現場を人に見られたり、呪っている事を相手に知られたりしてしまったら効果が無くなるということでしたが」


 そうだとすると、予告状を送った時点で呪詛はできなくなる。


「私も槿むくげさんから呪術を少しだけ習ったけど、優樹と同じ事を聞いたわね」


 やはりそうか。それに呪術の一番の利点は、科学的に立証できないので法的に裁けないこと……ただし、呪術を行ったという事実が発覚すれば、脅迫罪が成立する可能性がある。


 だから、術者は呪詛を行った証拠を残してはならない。それなのに、こんな予告状を送ってくるだろうか?


「優樹君。樒さん。ヒョーは悪名高いだけに、なりすましも多いのです。だけどこの予告状は本物です」


 だから、どうしてこれが本物だと?


「この事は内密にお願いしたいのだけど、協会のある方が、ヒョーと会ったことがあるのです」


 なに?


「実はヒョーの名を騙る者があまりにも多いので、対策を立てたいと本人から申し出があったそうなのです。その時に現れた人物は、ヒョーしか知らないはずの事をいくつか語ったので本人と認定しました」

「なんでその時に捕まえなかったの?」

「樒さん。会見はあくまでも一対一が条件だからです。十二の式神を操るヒョーを、一人で相手できる人は協会にいません」


 なるほど。


「ヒョーはこの時に、印鑑を用意してきました。自分がもし協会に文書を送るとしたらこの印鑑を使う。印鑑のない文書は偽物だと」


 印鑑? 役所ではこれから印鑑は廃止していく方針だというのに……

 

「この予告状には、そのときの印鑑が押してあります。だから、悪戯の可能性は低いです。それと、二人が言うようにほとんどの呪詛は、かけていることを相手に知られたら効果が無くなるのは確かですが、呪殺師ヒョーは式神を使います」


 式神?


「二人とも知っての通り、私も式神が使えます。式神なら、相手に知られていても関係なく使えます」

「それは分かりましたが、なんで僕が指名されるのです? 樒みたいに九字が使えるわけでもなし、ミクちゃんみたく式神が使えるわけでもない」

「だから、それは私が聞きたいぐらいです。でも、優樹君を指名したという事は何かあるはずですよ」

「優樹。いっそ指名料請求してやれば」

「風俗じゃあるまいし」

「あら? 知らなかったの? 協会の規定では、霊能者の指名料は請求できるのよ」

「え? そうだったの?」

「まあ、私は指名されたことないけど」


 だろうな。


「樒さん。優樹君。指名料は確かにあるけど、これは一部の霊能者にばかり仕事が集中するのを防ぐ対策です」

「え? という事は、人気のある霊能者ほど指名料が高くなるの?」

「そうですよ。樒さん」

「ねえねえ! 私の指名料はいくら?」

「樒さんの指名料は0円です」

「なんでよ!?」


 当然だろ、おまえ需要ないし……


 確かに樒は能力高いけど、態度悪いし不正請求するから、一度でも樒に仕事をしてもらった人は、二度と樒に仕事を頼もうなんて思わないのだよ。


「じゃあ、優樹は?」

「優樹君は、一万円です」


 え? そんなにもらえるの?


「どうして優樹はそんなにもらえるのよ!? 除霊もできないのに」

「当然でしょ。優樹君は不正請求しないし、礼儀正しいし、不正請求しないし」

「不正請求って、二度も言わなくても……」

「大事な事は、二度言うのが規則ですから」


 そんな規則ないって……


「私だって、最近は不正請求していないわよ」

「過去にやったことが問題なのです」


 信用を失うという事は、そういう事なのだよ、樒。


「それに指名料は儲けるために設定しているのではなく、指名をさせないために、わざと高く設定しているのです。優樹君は本来学業優先なので、あまり仕事をさせる訳にはいきません」

「私だって学業優先でしょ」

「ええそうですよ。だけど、樒さんを指名した人は今までいなかったので……ああ! 一回だけありましたね」

「やっぱりあったんじゃないの」

「ありましたけど、樒さんマイナスポイントが多いので、一回だけでは指名料は発生しません」

「なによ! マイナスポイントって」

「ということは、今まで僕を指名した人がいたのですか?」


 芙蓉さんはコクっと頷いた。


「何人かいました。ただし、指名料一万と聞いて諦めてくれましたが……一人だけ指名料を払った人がいましたね」

「え? 誰が?」

「あなたたちの学校の先輩、六星さんです」


 なるほど。じゃあ樒を指名したのも六星先輩か。ちなみに協会から僕への報酬は、通常口座振り込みになっている。


 口座は母さんが管理しているので、そういう臨時収入があっても僕には分からなかったわけだ。


 ちなみに憑代の報酬は、その場で請求できることになっているのだ。


「他の方は、指名料一万と聞いて諦めてくれました」


 ヒョーも一万円と聞いて諦めてくれないかな? 無理だろうな。相手はプロの殺し屋だし、必要経費は惜しまないだろう。ていうか、なんで僕なんかを指名するんだ?


「芙蓉さん。僕、行かなきゃダメですか?」

「優樹君は、行く必要ありません。すでに協会のホームページには、ヒョーへの返事に『指名するなら指名料十万円を請求します』と書き込んでおきました」


 え! 十万円!


「ちょっと芙蓉さん! 優樹の指名料は一万じゃなかったの?」

「一時的な処置です。指名料は指名をさせないための料金設定と言ったでしょ。いくらヒョーでも十万円なら諦めるでしょ」

「なるほど」


 だが、ヒョーはその日のうちに十万円を出してきた。

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