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霊能者のお仕事  作者: 津嶋朋靖
嫌悪の魔神

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261/263

悪い悪霊はお仕置きです

 悪霊が弾き飛ばされた後、寒太の身体は力を失い、樫原の腕に抱えられた状態で手足をだらりとぶら下げていた。


 一方、寒太の身体から弾き出された悪霊には、形がなかった。


 黒い霧のような霊体が、ブヨブヨとアメーバーの様に(うごめ)いているのだ。


 だが、よく見ると表面に顔のようなものが見える。


 男なのか女なのかは分からない。


 ただ、その表情は怨嗟に満ちていた。


 って、見とれている場合じゃない。


「寒太! 今がチャンスだ! 身体に戻れ!」

「お……おう……」


 寒太は、樫原に抱えられている自分の身体に向かって飛んで行く。


「おのれ! おのれ! 渡してなるか!」


 悪霊も寒太の身体へと向かっていこうとする。


 そうは行かない!


 僕は退魔銃を、悪霊に向けて撃ちまくった。


「ぐぎゃあ!」


 退魔弾を数発食らった悪霊は弾き飛ばされた。


 その間に、寒太は自分の身体に入り込んだ。


「樫原さん。寒太君の霊体は身体に入った。もう降ろしても大丈夫だよ」

「おお、そうか」


 樫原は、そっと寒太の身体を地面に横たえた。


 そうしている間にも、悪霊は身体を取り返そうとしつこく迫ってきた。


 寒太の霊魂が完全に定着するまでは、まだ身体を奪われる心配があるので油断できない。


 悪霊が近寄るたびに、僕は退魔弾を浴びせて撃退していた。


「ええい! 小僧! 邪魔をするな!」

「やだ。徹底的に邪魔してやる」

「おのれ、おのれ! これ以上邪魔するなら、おまえを(のろ)ってやるぞ!」

「やれるものなら、やってみろ。寒太の身体は、おまえには渡さない」

「やかましい! その身体を使う権利は、俺にあるんだ!」

「おまえに、そんな権利はない」


 不意に背後からかかった渋い声に、悪霊の動きはピタッと止まった。


「今の声……おまえか?」


 悪霊の質問に、僕は無言で首を横に振った。


「それじゃあ、ひょっとして……」


 悪霊は、そうっと後ろを振り返る。


 そこには、ロックさんが腕を組んで立っていた。


「ひえええ! し……死神! お……おたすけ!」


 逃げだそうとする悪霊の前に、シーちゃんが立ち塞がり鎌を突きつける。


「逃がしません! あなたの様な悪い悪霊は、霊界へ連行してお仕置きです!」


 ええっと……悪い霊を『悪霊』と言うのだから『悪い悪霊』って、日本語としておかしくないだろうか? 

 

 なんて考えている間に、シーちゃんは投網のような物を、逃げる悪霊に向かって投げつけていた。


「ひええ! 霊界は嫌だ! 助けてくれえ!」


 悲鳴を上げて逃げ回る悪霊は、投網に絡め取られる。


(ばく)!」


 シーちゃんがそう叫んだ途端、悪霊を絡め取った網はみるみる小さくなっていく。


 網はやがて黒い小石になっていった。


 シーちゃんは、小石を拾い上げるとポシェットにしまった。


「捕縛完了です」


 どうやら、終わったようだ。 

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