トドメは僕に任せて下さい
「ぐおおおぉぉぉ!」
悪霊髑髏の一体が叫びながら、木の枝を投げつけてきた。
ミクちゃんの式神アクロがそれをブロックするのだが、次から次へと物を投げつけてくるので、式神はその防御に追われて攻撃ができない。
なんとか僕が退魔銃で攻撃をかけるのだが……
「被弾した者は、後方へ下がれ。回復した者は前へ出ろ」
悪霊髑髏の中に、無駄に指揮能力の高い奴がいて群霊を組織的に動かしていた。
そのせいで、最後の一体がなかなか仕留められないでいる。
悪霊髑髏に退魔弾を命中させても、消滅するほどのダメージを受ける前に後方に下がられてしまい、無傷な髑髏が前へ出てきて瘴気を吹き付けてくる。
そいつに弾を当てても、また回復してきた髑髏が前へ出てきた。
切りがない。
「いいぞ、いいぞ。このままいけば、いずれ奴らの矢弾は尽きる」
矢は使っていないが……
しかし、退魔弾の残弾がみるみる減っていっているのは確かだ。
それより……
「ミクちゃん。大丈夫かい?」
ミクちゃんの体力が心配だった。
式神三体を操るなんて、そうとう無理をしているはず。
「だ……大丈夫。あたしはまだ……」
あまり、大丈夫そうじゃないな……早く決着をつけないと、ミクちゃんが保たないぞ。
正面から瘴気を吐いている悪霊髑髏に、僕は狙いを定めた。
拙い! 残弾があとわずか。絶対に外せないぞ。
「優樹君!」
ミクちゃんが、左端にいる一体の髑髏を指さしている。
髑髏の頭には、ミクちゃんのウサギ式神が乗っていた。
「式神に、弱っている髑髏を探させたの。あいつが一番ダメージを受けているわ。あいつを狙って」
「分かった!」
左端の髑髏に、狙いを向けた。
「食らえ!」
しかし、二発命中したところで弾切れ……あと一発で消えそうなのに……
その時に、髑髏の上にいたウサギ式神がすっくと立ち上がった。
「優樹様。トドメは僕に任せて下さい」
え? ウサギ式神は、情報収集には優れているが、戦闘力はほとんどないのでは?
悪霊髑髏もそう思ったのか、頭上にいるウサギ式神にあざ笑うように言う。
「ははは! 『トドメは任せろ』だと? 貴様のような弱っちい式神に何ができる!」
式神は、かまわず髑髏の頭頂部に噛みついた。
「ぐおおおお!」
噛みつかれた場所から、ドス黒い煙のようなモノが噴出する。
「き……貴様! 俺に何をした?」
「秘孔を噛んだ。おまえはもう死んでいる」
「なに? いや、まて! 俺は三十年前に、すでに死んでいるのだが……」
そこまで言ったところで、髑髏は黒い霧となって霧散した。




