救援
悪霊はしばし、警戒するような視線をネズ子に向けていたが……
「ふん! どうせはったりだろう。ほとんど戦闘力のない式神に何ができる?」
「何ができるかって? 例えば、ここの扉の鍵を開いて……」
ネズ子は、扉に掛かった鍵を解除した。
「救援を招き入れるくらいの事は、あたしでもできるでちゅ」
ネズ子は扉を開いた。
「なに!? 救援だと?」
ドタ! ドタ! ドタ!
誰かが階段を駆け上がってくる音が響く。
扉から現れたのは……
「優樹! 大丈夫!?」
「社君! 助けに来たわ!」
樒! それに先生!
「何が救援だ! そんなもの!」
無数の蔦が、樒と先生の方へ群がっていく。
だが……
「な……なに!」
蔦は二人の身体に触れる事もできず、その数十センチ手前で消滅してしまっていた。
「結界だと!?」
そういえば、樒はいつも強力な神具を携帯していると聞いていたな。それがあの結界を張っているのか。
たぶん、先生も似たような物を持っているのだろうな。
「おのれ! なんて強力な結界。だが、そんなものでいつまでも守れるなどと思うな」
魔入さんの結界はあっさり壊れたから、それを期待して言っているのだろうか?
しかし、二人の結界は簡単に破れそうにない。
そうしている間に、樒がスッと右手を前に突き出した。
指で空中に格子を描きながら叫ぶ。
「臨・兵・闘・者・皆・陳・烈・在・前」
樒の九字切りを受けて、魔入さんの身体から悪霊が弾き飛ばされるように離れた。
続いて先生が、マシンガンのような銃を構える。
もちろん、日本の法律でそんな物騒な物を一般人が持てるわけがない。
以前に先生から見せてもらったから知っているが、あれは電動式のエアガンで、退魔弾を毎秒十一発連射できるらしい。
「よくも私の可愛い教え子を虐めてくれたわね! 許さないわよ! この変態悪霊!」
先生がトリガーを引いた。
無数の退魔弾を浴びて悪霊は消滅していく。
しかし、まだ完全には消滅しない。
「おおおおおお……おのれ……」
消えかけている悪霊に向かって、樒がガラス瓶のような物を向けた。
「あああああ……吸い込まれる!」
悪霊が瓶の中に吸い込まれていく。
完全に吸い込まれたところで樒は瓶に蓋をした。
「封印完了」
あのガラス瓶、悪霊を封印できるようだが、樒ってあんなアイテム持っていたかな?
あれ? 手足が動く。
いつの間にか僕を拘束していた蔦は綺麗さっぱり消えていた。
さっそく、立ち上がってみたが……
あかん! 立ち眩みが……
倒れる!




