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霊能者のお仕事  作者: 津嶋朋靖
事故物件2

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口では言えないようなひどい目

 人質を取ったのはいいものの、この後どうすれば……?


「おい。わらわを人質にして、どうするつもりじゃ?」

「と……とりあえず……ひどい目に遭わせる」


 どんなひどい目に遭わせるか聞かれても困るが……ていうか、悪神とは言え、こんなちっちゃい子に乱暴な事できないし……


「なに! わらわに、エッチな事をするのか!?」

「ちっがーう! とにかく、ひどい目と言ったら、ひどい目だ」

「だから、どんなひどい目に遭わせるのじゃ?」

「そ……それはだなあ……」

「ま……まさか!」


 今度は、何を言い出すのだ?


「わらわの眼前で、おまえが白目をむいて『どうだ。ひどい目だろう』というギャグをやる気か?」

「誰がするか! そんなしょうもない事!」

「そうか! では、口では言えないような、ひどい目に遭わせるというのじゃな?」


 そういう事にしておこう。


「そ……そうだ。ひどい目に遭いたくなければ、あの悪霊を僕に近づけさせるな」

「分かったのじゃ。おい、ショウブ。こいつに近づくな」

「タンハー様。私はショウブではなくアヤメです」

「え? ええっと……とにかく近づくな。近づけば、わらわは口では言えないような、ひどい目に遭わされるそうじゃ」

「そんなあ……せっかく、その坊やを口では言えないような、ひどい目に遭わせたかったのに……」


 な……何をする気だったんだあ!?


 とにかく、この降着状態を脱するには、奴になぜ退魔弾が効かなくなったかを調べないと……


 タンハーを捕まえたまま、僕はスマホを取り出し氷室先生に電話をかけた。


『社君、どうしたの? こんな時間に』

「先生。夜分にすみません。実は……」


 事情を話した。


『社君。人間に憑依した悪霊には、退摩弾は効かないわ。奴を身体の外に追い出さないと……』

「ええ! どうやって?」

『とにかく、助けに行くからそこを動いちゃだめよ』

「分かりました」


 スマホを切ると、タンハーが怯えた眼差しで僕を見つめている。


 罪悪感が痛い。


 こうして見ると、普通に可愛い子供なのだが……しかし中身は魔神だ。


「社優樹よ。今、誰に電話していた? まさか、大女を呼び出したのか?」


 樒が来ると思って怯えていたのか。


「違うって。僕に退魔銃をくれた人に、電話をしていたんだよ」

「本当じゃな? 大女に電話したのではないな?」

「樒には電話なんてしていないよ」

「なあんじゃ。電話はしていないのか」

「うん、電話なんかしていない。メールを送っただけだから」

「そうか。電話じゃなくてメール……ちょっと待て! そのメールに何を書いた!?」

「ここで起きている状況を手短に書いたのだが」

「それを見た大女は、ここへ来るのではないのか?」

「来るだろうな」

「ひょええええ! 頼む、わらわを逃がしてくれ。大女が来たらイジメられる」

「じゃあ、悪霊に命令しろ。門を覆っている蔦をどけろと。僕がここから出られたら、逃がしてやる」

「その前に、わらわのスマホを返すのじゃ」

「ダメだ。これを返したら、また何か悪いことに使うのだろう」

「わらわは悪神じゃ。悪い事をやって何が悪い」

「悪いに決まっているだろう」

「頼む。返してくれ。スマホを取り返せないと、わらわはお仕置きされるのじゃ」

「おまえ、前に『母上にだって殴られた事ないのに』って言ってなかった?」

「母はそんな事はせん。姉からお仕置きされるんじゃ」

「どんな?」

「そりゃあ、口では言えないような惨いお仕置きじゃ」


 ううん……ちょっと可哀想な……


「あ! 今おまえ、わらわの事を可哀想だと思っただろ」


 こいつ、心が読めるのか?


「可哀想だと思うなら、スマホを返してくれ。頼む」


 ここは、心を鬼にして……


「ダメだ。返すわけにはいかない」

「おまえは鬼か!? う!」


 今度はなんだ?


「おしっこが漏れる! ここで漏らしてもいいか?」

「うわあ! やめろ! 向こうの茂みでやれ!」


 思わず僕は、タンハーを捕まえていた腕を放した。


「分かったのじゃ」


 そのままタンハーは、トテテと茂みへ駆け込んでいく。


 は! タンハーを手放してしまったという事は……


「つーかまえた」


 しまったあ!


 気が付いたときには、背後から伸びてきた腕に僕は抱きしめられていた。

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