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二人の桃太郎  作者: 森林
8/10

鬼門

拙い文章ですがよろしくお願いします。

 桃太郎を乗せた舟は鬼ヶ島の入り江に入っていた。

 入り江の岸には大きな門が、来るものを威圧するようにそびえていた。


「門番の一人も居ないなんて随分と不用心じゃないかしら」


 あたりを見渡しても誰も見当たらず、隠れている気配すらない。


「鬼からしたら怖がるものなんて一つもないんだ。外で殺そうが中で殺そうが一緒なんだろうさ」


 桃太郎たちは陸に上がり門の前で考える。


「いえ、それはおかしいのではないですか? だったら門すら要らないことになります」


「確かに……でも考えたって意味ないよ。どっちにしろこの門を通らないと中に入れない。だったら門を開けるだけでしょ」


「それはそうですが、罠という可能性もあるのではないでしょうか?」


 イヌの言ったことは至極正しい。敵の本拠地に潜入しているのなら最悪を想定して行動すべきである。


「というかこの門、内側から鍵が掛かっているのかビクともしねぇぞ」


「ちょっ! サルまで! 不用心ですよ! 開けるなら前もって言ってください!」


「おいおい、大きな声を出すんじゃねえよ。それこそ大変なことになるぜ」


 確かにとイヌは猛省して、口を閉じる。


「あなた達は私の存在を忘れているのかしら」


「え?」


「『え?』じゃないでしょう。私が飛んで辺りを偵察してきますわ。何も無いようだったらそのまま鍵を外してきますわ」


「なるほど。その手がありましたね」


「いやいや、こんなの最初に思いつく手でしょうに……」


 桃太郎とサルは純粋に馬鹿だし、イヌは頭が硬く、一つの物事に囚われてしまうのだ。


「お願いするよ。気をつけて」


「了解しましたわ」


 キジは小さく頷き、優雅な羽音をたてて飛びさった。そしてしばらくのち、先程となんら変わらぬ姿で戻ってきた。


「罠らしいものはありませんでしたわ。この近くには鬼の姿もありませんでしたし」


「なんと不用心な……」


「鍵も開けてきたので鬼が来る前にとっとと潜入しちゃいましょう」


「そうだね、じゃあ手筈てはず)通りにキジはここでお爺さんを護ってて。お爺さんもここまでありがとう。帰りもよろしくお願いします」


「ええ、気をつけて」


「楽な戦いにはならん。何があっても心だけは折れぬように心がけるのじゃぞ」


 お爺さんも言葉は忠告というよりも予言の意味合いが強い気がした。

 しかもそれは桃太郎を除く全員が、これから桃太郎に降りかかる試練を予期していた。


「うん」


 桃太郎はこれから起きることを理解しているわけではないが、お爺さんが嘘をついて居ないのは分かった。




 今回、桃太郎たちが鬼退治をするにあたって立てた作戦はこうだ。


 イヌとキジが派手に暴れ、多くの鬼の気を集め、足止めをする。そして桃太郎がこっそりと鬼の大将のところまで行き、そして倒す。という至極簡単な作戦だ。

 この作戦の良いところは桃太郎でも覚えられること。悪い点は完全な腕っぷしの戦いとなることだ。

 イヌとサルは多くの鬼を足止めする技量が必要になり、桃太郎は一対一で鬼の大将を討ちとる強さが必要になる。

 鬼の強さがわからない以上、これは作戦というより博打に近い。

 鬼が強ければ、イヌとサルは鬼の一匹すら足止め出来ず殺されるかも知れないし、桃太郎はタイマンで負けたとなると死は免れないだろう。

 要するに出たとこ勝負ということだ。




「じゃあ開けるぞ」


 サルはその厳かで禍々しい門にゆっくり手を合わせる。

 他のみんなはそれを見て静かに頷く。


 サルは力一杯に門を押す。

 門はギシギシと音を鳴らしながら動…………かない……?


「うぎぅううううっ……! あっ開かねえぞ!?」


「そんなことはないわ。ちゃんと鍵は外したもの」


「あっ! もしかしてこの門って……」


 そう。


 この門は押すのではなく引くのであった。

 

 

 

お読み下さりありがとうございました。

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