第1話 ゆびきり
おはようございます。こんにちは。こんばんは。
サラトです。
連載中の作品があるのにもかかわらず、どうしても描きたいネタがあり、気持ちに任せて書きました。
今回の作品はpledgeという誓いや固い約束などといった意味を持つ英単語をコンセプトとしていきます。少しでも興味を持ってくださったのであれば、是非、お手隙のときに読んでください。
それでは、あとがきでお会いできることを楽しみにしております。
「ねえ、約束して。私は絶対、君に逢いに来る。いつになるかわからないけど、ずっと待ってて」
「うん、わかった。でも…我慢できなくなったら、僕から迎えに行っちゃだめ…かな?」
「ううん、そんなことないよ。凄く嬉しい。じゃあ待ってる。巧くんからそんなこと言ってくれるなんてびっくりだよ」
「じゃあ、約束しよ。指切り。奏がこの前、教えてくれた約束のおまじない」
白い雪が降り積もった真っ白な世界で、2人の少年少女は小指を絡めて、固い約束を結んだ。その指をゆっくりと離し、お互いが、少しだけ後ろに下がった。
「これで、絶対だよね?奏」
「うん、絶対だよ。あ、そうだ」
不意に何かを思いついた少女は、自分の首の後ろに手を回し、なにかを探っていた。
「はい、これ。私の大切なネックレス。次に会うときまで持っておいて」
先ほど取った距離を小さな歩幅で、そっと詰めると、少年の首に手を回した。
「よしできた!うん、似合ってるよ。じゃあ……私、そろそろ行くね」
「奏が教えてくれた。別れは笑顔で…だよね」
「別れじゃないよ。絶対また逢える。逢いにいく。逢いに来て。この約束は、なにがあっても永遠だよ。でもやっぱり、今は君の笑顔が見たいな。じゃあ、また今度…だね」
「うん。奏、また今度!」
巧と呼ばれた黒髪の少年と、奏と呼ばれた赤色の長い髪をなびかせる少女は、涙を浮かべながらも笑顔を見せた。そして少年に背を向けて歩き出す少女は、服の袖で涙を拭きながら、降り続ける雪の中に姿を消した。
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強い想い。それはときに、生物を突き動かす最大の力と化す。
この世界は想いが特別な力へと変わる世界。強い想いを抱いたとき、誰もがその力を発現させ、それを行使することを許される。
嫉妬…憎しみ…憎悪…怒り…喜び…憧れ…そんな正も負も関係ない。感情が人一倍強い者のみが、特別な力を得る。それは人に限ったものではない。
想いから生まれる力を、人は「ルーン」と呼んだ。
すでにルーンを発現させた者は、全人類の中で3割にも満たない。つまり、発現条件が分かっていたとしても、ルーンを手にするのは、容易ではないということだ。更にルーンは女性の方が発現率が高いと言われている。その所以は、女性の方がより強い想いを心に秘めているからとされているからだ。
一定以上の感情が一瞬でも生まれれば、ルーンは発現するが、その感情が大きければ大きいほど、ルーンの力も比例して大きくなる。その者が秘める想いによってルーンは、姿形を変え、進化する。
ルーンを発現させた者は「ノルンの光」と呼ばれる神々しい光を放つ。それ以降、発現したルーンは進化することは有れども、死ぬまで消え失せることはない。そしてノルンの光を放ち、ルーンを手にした者は「ノルニル」と呼ばれる。
ルーンの発現とともに、人の身体はルーンに順応し、大幅な運動能力向上が得られることが実証されており、ノルニルという存在が生まれる。ノルニルを神として信仰する者もいれば、悪魔だと恐れる者や、同じ人間だと唱える者もいる。
嫉妬などといった負の感情によって、ノルニルへと覚醒した者は、殺人やテロなどを起こす可能性がある。無論、正の感情によって、ノルニルへと覚醒した者も例外ではない。正の感情が消えたとしてもルーンは失われないためだ。
人間もノルニルも、抱く感情に差異はない。その者が抱く感情など、容易に変わる。実際に正の感情で手にしたルーンを悪用する者もいる。
これはそんな世界で交わされた一つの約束の物語。絶対にまた逢うために結ばれた2人の小指が紡ぐもの…。
この度は、エターナル・プレッジ 〜永遠の誓い〜を読んでいただきありがとうございます。
どうだったでしょうか。未熟ながら、読者様に伝えたいことを伝えるために必要な土台をちょっとずつ、ちょっとずつ言葉にしていくつもりです。
あらすじや、本編を読んで、少しでも興味持ってくださった方がいれば、次回もお願いいたします。
次回「十束剣」