流砂
自分はこれから死ぬ、らしい。
これから死ぬと言っても、そうすぐには訪れず、実際にはまだそれが分かっただけなのだけど、しかし、自分には何も無かった。時が流れるのは必然なのだけど、死が分かっただけで、自分だけ全てが流れ落ちると言うのはどうも腑に落ちない。しかし、依然として己の底には大きな口が開いていて、全てを壊そうとし、されどその感覚がどこか懐かしく心地いいような、奇妙な言葉を放っており、それを一言、二言吐いては、ひとつ、ふたつと確かに、ゆっくり口の中へと吸い込んでいった。こうして自分の世界は壊れていった訳なのだが、こうも簡単に壊れてしまう辺り、結局のところ、ここへの道中で既に、どこに対しても大きくて複雑な罅が入っていたのかもしれなかった。ただどちらにせよ無くなってしまったものは仕方がなく、代替品なんてあるはずもなく、自分は夜明けに辿り着けなかったように思われる。それが幸であるか、不幸であるかなんて気にするものではなくて、もっと広々とゆったりと、歩いていくだけで、それはもう明るみが、周りに滲み出ており、極彩色の綺麗な星空を思い浮かばせるような、そんな気分になれると思う。だから分からないけど歩くのは嫌いじゃない。どこに流れ着くのか分からない砂の一粒であっても、また虹色に塗りたくればいい。
今の自分を何かに喩えるとするならば、透明な花畑にいる蜜蜂、だろうか。