転移
「こんにちは。神です。近所の世界が大変みたいなのであなた達を派遣することに決めました」
いきなりだった。朝目が覚めるとそこは白い空間で、知り合いは何人かいた。学校で見かけたことがある奴もいるし、肉屋の姉ちゃんもいる。
全員が目の前にいる羽を生やした女を注目していた。事情を問いただそうと何人かがつっかかろうとした時にこう言った。
何か言おうとしても口が動かない。威圧?というものだろうか身体が震えている。
「他の世界に派遣しますが、能力を1つだけ与えます。後でどういった能力がいいのか聞くので教えてください。では、本題に入ります。皆さんには異世界に行って『敵』を倒して下さい。倒したら帰れます。それだけです。他は何してもかまいません。では、転送します」
有無を言わせない転送が始まった。身体が白い光に包まれていく。
「どんな能力がいいですか?」
「死にそうで死なない能力でお願いします」
「わかりました……。ご武運を」
気づくと雪山の洞窟だった。寒い。猛吹雪というわけではなく、少し雪が降っている程度だ。それでも日本に比べれば寒い。することもないので、とりあえず能力的な何かを確認することにした。
神田 黒
16歳 レベル1
魔力 250
スキル
「超回復」 傷を癒す
魔法
なし
称号
攻撃犠牲 攻撃に魔力を使えないかわりに回復系
統の魔法の強化
見た感じは確かに死にそうで死なない能力ってのは伝わってるみたいだ。攻撃犠牲は辛いけど。これからどうするか……。ここを出てもいいけど、魔物みたいなのが出ると戦えないからな……。とりあえず戦えるくらいは強くなろう。
ここで考えたのは、一般的な強さを持っていても面白くないので、指を鍛えることにした。
石を持ってきては指で穴を開ける。最初のうちは折れるは、曲がるは、裂けるはでその度にスキルで治していた。治るとはいっても痛いのは変わらないので、涙を流しながら、ひたすら指を突き立てていた。一日中続けると穴が空くようになって、とても嬉しくなった。強くなっていく感覚を感じながら、異世界生活が楽しみになった。