パム
新しい楽器を作った男がいた。その楽器はクラリネットのような管楽器や、ギターのような弦楽器ではなく、また、ドラムのような打楽器や、ピアノのような鍵盤楽器とも違う、今までにない全く新しい楽器と言えた。
男は楽器にパムと名付けた。もっとも男からすれば、楽器の名前などは何でもよく、「ないと呼ぶ時に困る」から付けた、その程度のものであり、重要なのは楽器の音の方にあった。
パムの不思議な音色は、それまでの既存の楽器では到底出す事の出来ない、人の心を魅了する素晴らしい音色だった。
そんなパムの噂は瞬く間に国中に広まり、パムの音色を是非一度聴いてみたいという人々の為、お披露目を兼ねた演奏会が開催される事となった。
当日、パムの傍らに立つ男は舞台上から集まった聴衆に言った。
「どうも皆さん、本日はようこそお越し下さいました。これから皆さんを、今までに聴いた事のない、パムの奏でる素晴らしい音の世界にご招待致します。それは、必ず皆さんが満足する音の世界です…」
自信に満ちた男の言葉に、聴衆は一体どんな音なのかと期待する。男はパムに向き直り、演奏の体勢に入った。
「それでは、お聴き下さい。せ~の…」