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いい夫婦生活への第一歩

作者: あまね

「私と仕事どっちが大事なの」


 この手の質問がとても苦手だ、いやもうなんで聞いてくるのか、その気持ちは分からない、分からないから離婚につながったのだろう。

 

 また、あらたな出発をするにあたり、仕事一辺倒ではなく、まだ見ぬ彼女との時間をつくれる職業にするか、それとも仕事をやっている俺に、魅力を感じてもらうかと思案した。


「それではアナタの志望動機を聞かせてください」

「はい、私と仕事どっちが大事なのという彼女に、地球の平和とお前どっちが大事と言い返せます」

 

 俺が受けたのは、正義の味方の組織である。

 

 正直三十手前だし、もう身体のあちらこちらに、ガタはきているが、気力でカバーできる、そして何よりあの質問にたいして、お前と地球どっちが大事と言い返せるというなんてすばらしい職業だ。


「いや、そんな動機ですか」

「はい」

「地球の平和を痴話喧嘩の言い訳にするために入りたいと」

「はい」


 面接官が首を振る、どうやら不合格のようだ。


「その理由では、正義の味方になることは難しいと思います」

「そうですか」

「だいたい、痴話げんかする前に彼女と話し合ってください」

「それができなかったから離婚になったんですよ」


 夜遅く帰ってきても寝ている、朝早くに出勤、たまの休日は返上で仕事、休みがあったら、元妻は、仕事、仕事、仕事、もういい加減にしてとしか口にださず、話し合う事もなく、元妻は怒りを俺にぶちまける生活が何ヶ月、何年と続いてきた。


「そりゃあアナタが仕事一辺倒で家族を大事にしなかったのでしょう」

「仕事しないと養えない、これは真理です、その点正義の味方なら仕事一辺倒でも怒られない」

 

 正義の味方は色々とサービス残業が多いと聞くし、仕事が世界の平和につながる、仕事一辺倒となってしまっても文句も言いづらい最高の職場だと思った。


「正義の味方は大変なんです」

「それでも愛ある結婚生活のためには必要なんです、お願いですもう一度考えてください」


 頭をさげて、再考してもらえるように拝むようにして頼むと、面接官は急に小声になり顔をちかづけ耳うちのような状況になった。


「此処だけの話、正義の味方は家庭が崩壊する可能性が高いんです、我が社でも数十組離婚しています」

「えっそうなんですか」

「もちろん上手くいく人はいます、ただそれ以上に悪の組織の襲撃を警戒しないといけない、何かあったら休みなんてないですし、仕事一辺倒になりますので、そんな状況で愛を育むことはできません」

「そうだったんですか」

「えぇ もしアナタが、愛ある結婚生活を過ごしたいのなら、大きな声ではいえませんが、悪の組織のほうがいいです、あちらさんは好き勝手やっていますからね、まぁ当然秘密を抱えますし犯罪にもかかわるというリスクはあります」

 

 面接官のアドバイスに、なるほどと思いつつ耳を傾ける。

 

「それにですね、私と仕事どっちが大事なんて正義の味方でも聞かれます」

「えっ 地球の平和を守るのにですか?」

「地球の平和を守れるなら、私の心の平穏も守って当然と相手はかんがえるでしょうからね」


 どうやら俺の新たな出発は、やっぱり仕事と私どっちが大事と聞かないような人を探すことらしい。



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