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ぼくのネタ帳

アイム・スイート・エンジェル

作者: あざらし

ニ○○六年

 アフロがチャームポイントであるDr.ディーテは、所謂 "平行世界" と呼ばれるものを発見した。

ニ○○八年

 Dr.ディーテは、遂に平行世界と現実世界を繋ぐトンネルの開発に成功。トンネルが開通したその瞬間、トンネルの向こう側にはDr.ディーテと全く同じ人間が居た。

それから、平行世界と現実世界は、全く同じ歴史を辿ってきたことが判明した。埃一つの動きですら、平行世界のDr.ディーテが現実世界にやってくるまで、全く変わらなかった。

ここで、二つの世界の名称が、『迎えた世界』 "グリーテッド" 、『送った世界』 "ハッドセント" に決定される。

二つの世界が交差したことで、歴史は大幅に変わる――かと思われた。

だが現実はというと、そもそも二つの世界の同一人物は、お互いに同じことを考え、同じ行動を取る。それがかなり早い段階で人類に周知されることとなり、大きな争いは避けられた。

厄介な揉め事を避けるため、一部の人間を除き、二つの世界の人間は接触を避けるようにした。

それ以降、人類の当面の課題は 『二つの世界の同一人物を融合させることで、居住スペースや資源のキャパシティを増やす』 という方向にシフトした。

ニ○一一年

 人物融合装置が完成。

『二つの世界の人間は全く同じ存在であるため、意識や記憶まで融合させても大した問題はない』 という結論の元、早速同一人物の融合計画が開始された。

問題はないのだが、それでも融合を拒む人間は居る。その場合は 『自分の出身世界』 から外へ出ないという制限付きで、融合しないことを容認された。

このように、全人類が融合するということには至らなかったが、しかし同一人物間で意見が別れることはなかったので、融合計画はスムーズに進んだ。

しかし、ここで一つの問題が生じた。

グリーテッドの成木 聡司(なるき そうじ)と、ハッドセントの成木 蒼子(なるき そうこ)。この両名の存在である。

彼らは平行世界の同一人物でありながら、性別と名前、容姿が違っていたのだ。

人違いではなく、成木 聡司はハッドセントには存在しないし、成木 蒼子はグリーテッドには存在しない。

この発見は、計画の上層部を震撼させた。

この件は民衆には伏せられつつ、装置の故障ということにして融合計画を中断。二人の調査が開始される。

経歴を調査したところ、二人の経歴には、男女の差こそあるものの、他に違いは見受けられなかった。

遺伝子調査の結果も同様で、容姿と性別以外は、全くの同一人物だった。

なぜこのようなことが起きたのかは、わからない。彼らの親類は全くの同一人物であり、違うのは彼ら二人だけだ。

ニ○○四年

 結局原因がわからなかったので、この件は保留とし、融合計画は再開された。

が、二人には新たな課題が与えられた。

『この二人が互いに干渉し合った結果、何が起こるのか』

これを確かめるため、二人はグリーデッドにある聡司の自宅で同居することになった。



 全く信じられないことに、成木 聡司は成木 蒼子と同居することになった。

 彼女は平行世界である "ハッドセント" 出身であり、この 『成木 聡司』 の同一人物だ。

 意味がわからないとは思うが、自分でもイマイチ理解できていない。とにかく、同一人物なのだ。

 まあ、それはもういい。彼女と引き合わされてから、かれこれ一年。確かに自分と同じ人間であることは、嫌という程思い知らされた。

 彼女は自分のことを全て知っているし、自分も彼女のことを全て知っている。なぜなら、同一人物だからだ。

 見た目だって、自分を少し女っぽくすれば彼女になるし、彼女を少し男っぽくすれば自分になる。

 最初は苛立ったものの、半年も立った頃には大分相手の存在を容認できるようになった。どうせこの調査が終わればもう二度と会うことはなくなる。そう思ったからだ。

 しかし、その予測は外れた。

 途中までは、予想通り、引き離されるはずだったのだ。それがなんだ。神罰 栄子(しんばつ えいこ)とかいうわけのわからない科学者が、 『この二人が互いに干渉し合った結果、何が起こるのか』 などという寝言を抜かしたせいで、再び蒼子と引き合わされることになってしまった。

 しかも、今度は同居だ。

 成木 聡司は別にナルシストというわけではないのだが、自分のことは気に入っていた。イケメンだし、運動もそこそこできるし、成績も悪くない。性格も、そんなに悪く無いと思う。

 そんな聡司は、自らと同じでありながら違う存在である蒼子のことが、とても気に入らなかった。

 特に、言葉にできるような理由はない。なんだかよくわからないが、とにかく気に入らないのだ。

 そして、それは蒼子も同じである。こんなことまで同じという事実が、更にムカついた。

「クソッ、部屋まであたしと同じなのかよ……!」

 部屋に通して早々、蒼子が悪態を吐いた。

「嫌なら他の部屋に住んでもいいんだぜ?」

 挑発するように聡司が言うと、蒼子はムッとして言い返す。

「ふざけるな、あたしもこの家に住んでたから間取りぐらい知ってるんだ。他に使えるような部屋がないこともな」

「お前の家狭いなぁ」

 聡司は追い打ちを掛けるように挑発を続ける。彼女の周囲を貶すことが壮大な自爆であることに気づかないぐらいには、頭に血が上っていた。

「なっ、このやろ……」

 蒼子が掴みかかってきたので、聡司も掴み返す。目の前まで近づく顔。柔らかくていい匂いがするのがまたムカつく。

 と、蒼子が邪悪な微笑みを浮かべる。

「フッ、このままあたしを殴るか? 言っておくと、あたしは女だから、何かあった時に不利になるのはお前だぞ?」

「ぐ……」

 確かに、いくら同一人物とはいえ女――それもムカつくことに美少女だ――を殴ったとなれば、聡司の立場は悪くなるだろう。

「俺と同じぐらいの腕力あるくせに……」

 聡司は手を離し、ボソっと漏らした。同一人物である特性上、蒼子は聡司と同等の身体能力を有している。故に、本気で殴り合えば恐らく決着はつかない。残るのは、聡司が女を殴ったという事実だけだ。

 そのことに気づいてしまい、聡司は落胆した。戦う前から勝負はついていたような気がして、とても悔しい。同一人物だというのに、聡司に勝ち目はないのだ。

 蒼子に悟られるのは癪なのでできるだけ態度に出さないようにしていたのだが、どうやら彼女は彼女で独自にこの答えに行き着いたらしい。急にニヤリと口の端を釣り上げ、見下したように嗤う。

「あたしの勝ちだな」

「クソッ……!」

 初日からこれでは、先が思いやられる。

 今すぐに、蒼子を追い出したい気分だった。

フォルダの奥で寝ていたので、忘れないうちに公開しておきます。

中田翔子の次に連載する予定です。

タイトルは気に入ったのでほぼ確定です。

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