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Chime ―チャイム―   作者: 夏影
第一章 キッカケ
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第七話『月影亭』

「よぉ~しっ、着いたよ~!!ここが30泊するホテルなのだー☆」

「ひゃっほーーーー!!!!」

 スペードマウンテンの事件のあと、リープさんの蜂蜜探しでは蜂を全滅させた上で蜂蜜泥棒ごっこなるものをしてみたり、またもや星空を破壊した。

 タンポなんかにも乗っていたが、本当に後ろにジェット機のようなものを着けて飛んでいた。

 さらにダイヤダスト城に入るなり「ここのシャンデリアとか安っぽいね!ダイヤモンドのに替えちゃうぞ☆」といって大改造をする始末。


 色々あり無事とは言いがたいものだったが、貸し切りは終了した。また明日もやる可能性があるが、今日はもうホテルで遊ぶことにした。

 貸し切りの制限時間は16:00までで、終わる五分前から一分前までに全員が園内を出た。皆はあれでも時間は気にしていたのだろう。

 目の前の月影亭の自分の部屋に、水玉なら三十秒も経たずにはいれるのだろうが、ゆっくり歩いて行きたいと言う人がいたので、八分ほどかけてフロントの前に来た。

 水玉がフロントの係員に話しかけるが、

「柑月学園Z組です☆三十七部屋予約したよ!!」

「え…お、お客様…?」

 水玉の背が低すぎて、見えなかったのだ。係員は初めての事態に少し戸惑っていたが、

「あの…鍵を下さりますか?」

 春雨のフォローでなんとかなった。

 じゃらり、と三十七個の鍵をデスクに置かれ、春雨は一度には持てそうにないと思ったようで、振り返って苦笑いした。

「一人一部屋用意したから皆鍵は適当に選んで持ってってね!では各自移動開始っ☆」

「なんか水玉が仕切り始めた!?いや水玉が予約して一番よく知ってるんだしおかしくはないのかもしれないけど…」

 見渡すとやはり全てが高そうだった。有名処なので、当たり前だろう。

「あたし235室だった!」

「え、オレ234だぜ?でコイツが236」

「両側男子かよ」

「じゃあ交換してくれよ…」

 交換しだす生徒も出始めたのだが、ここで水玉がひらめいた。

「あ、そーだ!!鍵でくじ引きしない?数字によっては水玉が賞金出しちゃうぞ☆」

「やろう!!!」

 ロビーでバラバラに座っていた皆が一斉に駆け寄ってきて、鍵を水玉が全て回収した。

「あれ?和ちゃん粟倉くんタマシーくん来ないの?」

「みたまだよ…うう」

「何で泣いてんの?あと水玉くじ引きやめて」

「…なかるてっあにまあまらなねか」

 この三名を除いて皆盛り上がっている。水玉がロビーの低い机に飛び乗り、

「では番号隠しとくから皆どれか取ってね!!あと参加したくなくても鍵がないと困るから参加してね☆」

「強制かよ!?」

 しかし、確かに鍵がないと部屋に入れない。仕方なく和は鍵を受け取った。211室だ。

「えーごほん!!では七等から!!」

「そんなにあるの!!?」

「七等は…ジャカジャカジャカジャ…」

「速くしなよ…」

「ジャン!下一桁が7の方!!」

 水玉はご丁寧に発表用にボードを持ってきていた。

「お、あたしだ!!」

「でもちょっと残念だなー」

「計四名だねー!あ、七等は十万円だよ!」

「宝くじみたく300円かと思ってたわ」

「いや七等十万て多くない!!?」


*****


 こうして水玉は順に一等まで発表していって、ついさっき終わったところだ。皆騒ぎながら去っていき、静けさを取り戻したロビーに一人残された和だけが呆然と立ち尽くしていた。


 一等一億円が和に当たってしまったのだ。

二等五千万と三等二千万円は二人に、四等千万円から六等百万円は三人に当たり、合計十八名というクラスの約半分、細かく言うと48.648648...%になるのだがそれだけ当たっているということだ。ちなみに先生は三等、粟倉は二等だ。

「どうしよう…」

 和は一億円をどうするべきか悩んでいる。

「帰ってからなんとかしようかな…でもな…」

 不意に修学旅行は三十一日間あることを思い出した。ずっと大金を持っているのもどうかと思った。

「水玉に返すべきかな…とりあえず部屋行くか」


*****


 和は荷物を整理して、一億円を持って廊下に出た。

「ねえ菊野、水玉ってどこにいる?」

「んー…さっきそこの部屋に入っていったぞ?」

 そういって指を指したのは207室だ。七等の発表の時にその数字を見せたのは確か粉雪こなゆき 紫陽花あじさいさん。

 このクラスの中では随分控えめで、水玉の次に背が小さい。

 歩いてホテルに行きたいと提案したのもその子だ。


 それで、水玉はその紫陽花さんになんの用があるのだろう。

「んで、いまからあたしもその部屋入る!」

「あ、そう…私も行くけどさ」

 菊野は207室のドアを押す。その後ろに和が除き混むように立っている。

 小さくドアが鳴いて開いた。


 目の前は白い何かが大量に飛び交っていて部屋の中が見えない…。

「閉めて」

『バタン』

 その光景が目に飛び込んでからの和と菊野の行動は速かった。ドアが開いていたのは僅か0.6秒だった。

「気を取り直して…あたしが飛んでる白いやつぶっ飛ばしながら入るわ!」

「うん、ありがと……」

 言葉の通り、菊野はわくわくしながら猛スピードで飛び交う白いものを蹴飛ばしていく。その感触から飛んでいるものが何か分かった。

「枕かよ」

 すると、水玉が枕を飛ばすのをやめて振り返り、

「おっ、きくのんやっほー!!ところで参加する?」

「今度はなんだ!!?」

 菊野の目がキラキラしている。

「そりゃあもっちろん…」

 水玉が菊野に枕をぶん投げる。

「まっくらなげたいかーい!だよ!!」

「ギャアアァァァァ!まっくら!!?」

「枕だって…」

「あ、そか…!びっくりしたー…」

さっきまで顔が真っ青だった菊野が「じゃああたしも参加する!」と元気に言ったあと

「よぉ~っし、枕投げ大会すったーと!!」

「おーーぶっ」

「ちょ…え…早速やられてますけど!?」

水玉がホイッスルを吹いた瞬間、菊野が他の子の顔面に枕をクリーンヒットさせたのだ。

…水玉がどこからホイッスルを出したかは問わないでほしい。理由にならないがいつもこんな奴だから。

「おーきくのん流石!」

 そう言いながら水玉は二十個ほど枕を持って構えた。

「よっしゃあ!水玉勝負だ!!」

「おっけーい☆」

 菊野が燃えている。枕投げは修学旅行の定番だし、興奮するのも無理はないのかもしれない。たださすがに熱くなりすぎだ。

「そりゃああぁぁぁぁっ!!」

「うらああぁぁぁぁっ!!」

 お互いに枕を避ると、枕がぶつかった壁にめり込んだ。いや、やりすぎじゃね

 元不良の血が騒いでいるのだろうか。皆に菊野の構えがなんとなく不良っぽく見えてくる。

「先に当てた方の勝ちにすっか!!」

「りょーかいッ」

「『わたくし達もやりたかった』と妖精が呟いております。」

 バキバキと床が音をたてているので男子達も寄ってきた。

「僕もやります!」

「春雨様!!」

 菊野の投げた枕の餌食になって倒れていた水色の髪の子がむくっと起き上がる


「私も春雨様の応援を!!」

「俺様勝ったらポキポキ食うぞー」

「負けても食べるだろ…」

 そんな風に盛り上がりだしてしまった。その間にも水玉と菊野はメキメキと音をたてる壁を気にもせず投げ合っている。

「粉雪さんの部屋ボロボロじゃん…」

「わ、私のことは…いいよ……」

 和はその声をようやく聞けた。

 予想以上に恐ろしい枕投げを目の当たりにして震えている紫陽花さんだ。

「あの…粉雪さん…なんで枕投げやることになったの?」

「わ…えーっと…その…修学旅行っぽいかなぁって思って水玉さんを呼んだんだけど…」

「水玉はちょっとやめといた方がよかったんじゃ…」

「え、えーと…人の好き嫌いは…」

「そうじゃなくて…」

 紫陽花さんは修学旅行など学生らしいことに憧れているのだろう。しかしクラスメートがこれでは紫陽花さんの望むような修学旅行はできそうにない。

―――そういえば修学旅行なんだったわ

 水玉達の非常識度は和がそれを忘れてしまうほどなのだから。

「俺様も投げるー」

「これで終わりだ、さらばきくのん!!!」

 楽しげな水玉は時速300kmは軽く越える枕を投げ、それは一直線に菊野の足元へ向かっていく。

「うわっ!!?」

「ちょ…ちょっと待って…こんな枕投げ皆が落ちちゃう!!」

 紫陽花さんが咄嗟にそう叫んだのも虚しく、枕は隕石のように床に激突し、床を突き破った。

「ギャアアアァァァァァァ!!!」

 隕石枕の一番近くにいた二人の男子がが落ちていった。

「…ってミタマ!?メサ!!?ちょ…これマズくない!!!??」


*****


 和の予想通り、マズいことだった。

 メサは床への落ち方が悪く、足を軽く骨折。ミタマは隕石枕の上に落ちたことで無事だった。


「…何を言っている…ボクは指を…捻挫し…たん…だ…ぐへぇ…」

「嘘つけ!!」

聞き覚えのない名前が出ましたが今はそんな関係ないので気にしないでください。

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