第三話『柑月学園』
後書きはおまけですが、一応次の話に繋がります。本文は和視点。後書きは第三者視点。
この学園にはとんでもない問題児がいる。その名前は佐倉水玉。佐倉財閥の一人娘。
何でもお金任せで良いようにされたらたまったもんじゃない。それを直し、他の子を改心させる。それが私の役目。
最初はあまり気が進まなかったけどこのクラスに入って思わされた。これは直さなければいけない、と。
「あんた達、いい加減にしなさいよ。」
そして我慢してた。
言いたかったけれど、ずっと我慢していた。きっと言っても聞かないし通じない。ある意味諦めていたのかもしれない。
けれど、いい加減に早く言わなければならない。
言わないと、何か大変なことが起こるような気がした。
「あんた達の…」
一度呼吸を整え、言葉を考えた。
「あんた達の勝手な行動で…もしも学園に何か大変なことがあったとしたら…
あんた達は責任がとれるの?
ねぇどうなの!!!!!」
少し、言い過ぎたかもしれない…。
だけど柑月学園に何かあってからでは………遅いんだ!!!!!!
「……………」
日向達は口を閉じたままだ。
私が次の言葉を口に出そうとした…その時だった。
「「「責任?ナニソレおいしーの?」」」
と、口を揃えて言ったのだ。
「…って…え!!!!??いやあんた達 本気で言ってるの!?っていうか再来年から高校生でしょ!!?」
「ん?俺様 高校行く気ないぞー?」
「いやそういう問題じゃなくって…!」
でもそうか、こんなのも人生の中では短い時間なのだ。私の二年間の過酷な学園生活は、あと一年七ヶ月で終わるのだ。
…ってまだ学園生活の半分くらい残っているが、ここまでの一年頑張ってきたのだから、最後までやりきりたい…
「あ、今考えたんだけど… 『楽をする』といえば、“車の上に乗って登校”って楽でいいんじゃないか?」
「車の上に乗って登校かぁーいいなー」
「え?」
「菊野のわりにはいいアイデア出すじゃん~」
「ちょ…白夜さん!??」
「いいけどゲーム!!」
「皆!!?良かないよ!!?」
「それよりポキポキ食べないか?うまいぞー?」
「別にいいよさっきラムネ食べたし」
「水玉は水玉アメ舐めたーーー!!」
「Zzzz…」
「………はぁ」
こんなZ組の生徒の変な発想で学園が変な方向に凄くなっていくのを想像すると恐ろしい。皆に振り回されまくっても、果たして私一人で持ちきらせられるんだろうか…
私は人に頼るとか、協力するという発想が無い。ずっと、今も独りなのだ。
不安だけどやらなくてはいけない、そんな使命感に操られるように歯をくいしばる、そんな中学生活を私は既に覚悟した。
三年Z組の生徒は36人。
人間なのだから、勿論好みの違いなどがある。
「やはりポキポキはうまいなー」
いつものようにそう呟くこの左目を眼帯のようにアイマスクで隠している少年は、一葉日向だ。
いつも真顔だが、沢山の真っ赤なパッケージを抱えて何だか満足そうに見える。
「ポキポキ考えた人天才だよなー神様なのかなー?とにかくポキポキは俺様のこの力の源で悪の組織オーニオーーンに唯一対抗できる最高の食……」
ちなみにこの少年、若干中二病である。
「あ、日向、またそんなにポキポキ持ってるんですか?」
可愛らしい声の黄色い髪の毛のこちらの少年も、中二病感染者だ。そして…
「美味しいですよね、ポキポキ!!僕も仕事で疲れた時にはよくポキポキ食べます!!」
「水玉に貰ったんだーお前も食うかー?」
「はい!!」
この少年も日向ほどでは無いがポキポキが好きである。
そしてまた…それを不満気に見つめる少年もいるのだ。