第二話『佐倉財閥』
今回は和視点という感じです。何かと物騒なようですがただのギャグです。
今まで平和だったZ組。
今日もいつも通りの、平和で平凡な一日。…だと思っていたのだが、Z組の教室に入ってきてそんな考えは一気にぶっ飛んだ。
だって――――――
日向がチェーンソーを持って腰には刀ささしているのだから。
「何か面白い物を持ってきたーどうだーかっこいいだろー」
「いや持ってくなよ!!!」
戦国武将に憧れた、とかそんなことではないのだ。そもそも日向はチェーンソーや刀とどういうものか分かっているかすら怪しい。日向は昔から、多くの行動は何となくで出来ている。
でもこんなにも物騒な物を持ち込むなんて思っていなかった。いつも皆は想像の上をいく校則違反をしてくる。
そして、これは私にとっては最悪な出来事だが他の一部の生徒にとってはとても面白い事なのだ。私の予想では誰かが目を輝かせる。
「あ、日向~」
「カッケー!!!それどこで手に入れたんだ!?」
本当に目を輝かせてる人が約一名いた…。
「ん~菊野うるさい~~もう少し静かに喋りなよ~」
「…グスッ、じゃあ白夜は高校逝けよ…グスッ」
眠そうにしながら菊野を泣かせたのは月舘白夜。そして、チェーンソーを見つめて目を輝かせていたのはその従妹の立科菊野だ。
ちなみに白夜は高校二年生なのだが、何故かクラスメイトのように毎日Z組にいる。
最初の頃は従妹の菊野が心配なのかな、と思ったが心配している様子は無く、色々と謎な人である。
菊野は見た目が不良っぽい。それを怖がる人もいるが、実際はとてもメンタルが弱い。
私がZ組に来た頃、菊野の見た目にびっくりして少し避けてしまったら、『…グスッそんなに嫌いなの…』という感じで大泣きされてしまったこともある。それでも基本的には明るく、好奇心も旺盛な子だ。
「…で、それどこで手に入れたんだ!!?」
また菊野の目がキラキラと輝きはじめる。
「…家に落ちてたー」
「へーすげぇな!!!」
「いや、落ちてる訳無いでしょ!?」
本気で落ちてたら日向の家は怖すぎる。
「じゃあさその刀見てみたい!!!!」
「え…」
私は額に汗を浮かべる。
「ん?いいぞー」
どうしよう。抜くのはまずい。
「えーといろいろとアウトだから止めといてよ!!」
「見えなければ大丈夫だ」
「なんのはな…」
白夜が強引に話す
「なんの話してんの~?」
「…被ったし…グスッ」
「とりあえず引っこ抜くぞー」
「駄目だってばー!!」
その瞬間、刀の刃先がギラリ、と銀色に光り…なんてことはなく…
「あれー?そう言えばどうやって抜くんだっけー?」
安心はできないが、とりあえず良かった。
「あれは使えないとして…そっちは使えるのか~?」
今度は白夜が日向の持っているチェーンソーを指差す
「えーっと…使えるぞー」
「普通、そっちも使えないとかじゃないの!?」
普通なのかはわからないけど、チェーンソーの方が危ないからせめて使わないでほしい。
「ていうか何に使う?」
「壁や床を開ける」
イライラしてきた。
『ピクピクッ』
「開けてどうすんの?」
「通り抜ける!」
「……」
…イライラ。
『ピクピクピクッ』
「通り抜けて?」
「楽をする!」
「……」
イライライライラッ。
『ピクピクピクピクッ』
…こんなにイライラしている自分が馬鹿っぽく思えてきた。同じようなこと聞き返しても、同じような答えが帰ってきて繰り返されるだけだ。
それよりもつっこみたいことがある。
「ねえさっきからピ」
「とりあえずさっきからピクピク言ってるの何なの!!?」
「…グスッ言われた」
菊野が何か小さく呟いた。そして何故か涙目だ…
「あと菊野…日向とは関わらない方が良いと思うよ…」
「グスッ…和が言うなら」
一応従ってくれるらしいけど納得はしていないようだ。
きっと、『あんな良さそうな人なのに何でだろう』とか思っているだろう。
『ピクピクピクピクッ…ガバァッ!!!!!』
「「!!!!??」」
「ゲームやりたい!!」
「えぇーーーー!!??」
その大きな願望の声で、白夜は不満気に目を覚ます。
この子は佐倉水玉。身長が132cmというクラス内で一番小さい女の子だ。
模様のような名前だがそうでもないらしい。本人に聞けば分かるのだろうけど、答えてくれるかは怪しい。
「何で学校でゲームしちゃいけないの?お金で校則を…」
「いや学校は勉強する所だからね!!?」
「ごもっともだね~」
白夜に共感されたのは結構意外だ。
「白夜が言うか…」
「黙れ。」
「…グスッ」
菊野は本当によく遮られる。あと白夜が菊野に言うときはいつものゆるい口調からはかけ離れた感じだな、と思う。
そしてその時が一番生き生きしてるようにも見える。もしかしたらSというものかもしれない。
しかし…水玉って小学生の男子っぽいかんじがある。実際見た目も可愛らしい、ピンクのカエルのフードでいかにも小学生だ。いや、服装から考えると園児かもしれない。
そして、さっきも『お金で校則を…』と
言っていたが、水玉は日本中で有名な佐倉財閥の一人娘なのだ。どこから沸いて出るのか、というくらい、軽く100万円くらい渡してくる。
ちなみにこの事は柑月学園の全校生徒どころか、地域の住民も皆知っている。
だが、だからといってお金で校則をどうにかしようなど許してはいけない。まあ何故かこの学校はとても裕福みたいなのでまず聞き入れられることはまず無いのだが…
「どうすれば…普通の学園生活を送ってくれるのか…というか、なんで中二になってまで何故こんなことに…」
「難しい事は考えなーいっ、考えなーいっ♪」
「うるさいっ!!ていうか聞いてたの!?」
「まぁねっ♪さて、家に帰ったらまずあっちのむらへお引っ越し、そして店を開いてあっちのゲーム機は捨ててハムさわくんをあっちのゲーム機に移動それからあれを青いアルパカに押し付けて~…」
「何を語り始めたこの人!?」
「え、ゲームのことだよー?」
「ていうかどうやったらそんなにやりたくなるのかな!?」
「だってやりたくなるじゃんキラーン☆…いや、こは『ドヤァッ』? それとも『シャララ』? 違うな~…んじゃあー…」
「いや話ずれてるからね!!?」
「あれれ~?本当だ~☆そういえば思ったんだけど白夜さんって案外謎がおおいよね~☆なんで高校じゃなくて中学にいるのかとか、きくのんとなんでこんなに仲が悪いのか~とかね☆」
「それ口に出したるなよ…」
「そりゃ菊野がおもし」
「…グスッ」
「まだ何も言ってねだろ~この豆腐メンタルが」
「まあ佐倉財閥の情報網とかだったら簡単に調べられると思うけどねー!佐倉財閥の情報網なめんな☆」
…正直言ってしまうとこの子が入ってくる
と場がめちゃくちゃになって収拾がつかなくなる。もしもこの子が何かを仕切ることになったらどうなってしまうのか……とても心配である。
…いやいや、そうならないように私がいるんじゃないか!
財閥が出てきましたが、このお話では明治より前くらいから歴史が少し違います。