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【完結】偽りのチェックメイト-チェスのカードが導く断罪の儀-  作者: 慧依琉:えいる


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第3話:友情を操る男―山名直人― 結城美南の場合



────結城美南(17歳)。青葉学園高等部に通う輝夜と同級生で満流と同じクラスだ。


吹奏楽部に所属している彼女は毎日楽しそうに部室へと走って行く。満流を迎えに行く時に目立ったよくすれ違う顔立ちが整って目立つ女の子だ。



「満流。今日は部活何時まで?」


「おう、今日は17時には終わると思う。」


「そっか。満流が練習してるとこ、見てると飽きないわ。」


「恥ずかしいっつーの!どこか見て回ってこいよ。」



〝ふふ、照れちゃって。〟輝夜はそう思いながら満流を見送った。教室で持参した本を読んでいたところ、吹奏楽部の練習している音が聞こえてきた。


〝あぁ…。吹奏楽部ね。確か満流のクラスの結城さんも吹奏楽部だったわね。何の楽器だったかしら?〟


そう思って吹奏楽部の部室の方を見た。



〝あ…れ?何か揉めてる?〟


よく見ると結城美南が他の子に囲まれて口論になっているようだった。



〝1:複数…か。揉め事なのか、いじめなのか…。〟


そう思いながら見ていると何やらもう一人出てきて結城をかばっているようだった。


〝ふぅん、ちゃんと間に入ってくれる人がいるんだ…。〟




そして輝夜はまた本に視線を戻した。


それからかなり時間が経ってから、各部活が終わったようで辺りは静かになった。輝夜も満流を迎えに行くために教室を出た。満流の部室近くまで行った時、


「……………よね。」  ヒソヒソ話が聞えてきた。


「アイツ、絶対に許せない!真紀がずっと片想いしてたって知ってるはずなのに‼友達なのに…‼」


「そうよね、同じパートだからって先輩に色目使って奪うなんて…!結城のやつ‼」


輝夜はハッとした。〝…………!結城?〟



〝あぁ、それでさっき揉めていたのね。て、片思いなんでしょ?付き合ってるのを奪ったとかじゃないのに?それで揉めるの?何それ……………。〟


輝夜はゾッとした。

話をしていた人たちはそのまま帰っていったようでもう話が聞こえなくなった。



満流の部室からも何人か出てくる。この部活はあまり活動してる人数が少ないようだ。出てくる人たちの中に満流はいない…。まだ中で着替えてるのだろうか…。




〝満流、今日は遅いな、何かあったのかな?〟


輝夜は目立たないように近くで待っていた。すると後ろから〝ポン〟と肩を軽くたたかれた。振り向くとまだ部室にいると思っていた満流だった。


「え、満流?まだ部室にいたんじゃ……………。」


満流は首を横に振った。


「ごめん、ちょっと早めに切り上げてたんだ。クラスメイトから相談にのって欲しいと頼まれて…。」


「そうなんだ。それで?相談はうまくいったの?」


「あぁ、お前にも共有しておくよ。帰ってから話そう。」


そう言って満流はそそくさと部室から遠ざかった。スタスタと早歩きする満流。輝夜は〝ちょっといつもと違うわね、どうしたのかしら?〟と思いながらもその後ろを付いて行った。

そして夜月神社まで帰ってきて、2体の狛犬の石造のそばで二人は腰をかけた。そして満流はおもむろに話しだした。


「俺のクラスの結城って女子いるじゃん。あの子がさ、今クラブで揉めてて、そのせいで一部のクラスメイトから嫌がらせをされてるんだってさ。」


「うん、私もさっき満流の部室へ行く途中で誰かが話したのを聞いたわ。その子たちは部活内でってことなんだけど…。クラスでもそうなの?」


「あぁ、今うちのクラス、それで険悪でさ、俺ら見かねて間入ってんだけど、どう考えても言いがかりなんだよな。」


「同じ部活の子が片思いしてるのを知ってて奪ったとか何とかって……………。」


「そうなんだよ!そんなん、おかしいじゃん?!しかも言い寄ってきたのは先輩の方だしさ、結城は別に悪くないじゃん?」


「そうだよね、私もそう思った。けど、満流?なんか、すごく熱がこもってるね。気があるの?」


「はぁ?なんでそーなるんだよ。バカ。」


そう言って満流はむくれた。満流にとっては輝夜はただの幼なじみではないからだ。



「でも、私たちがどうのこうの言っていても解決にはならないよね。その先輩に直接文句言いにいく?」


「んー、そういうわけにもいかないしな。」


満流は困りはてていた。


「輝夜、ちょっとトイレ行ってくるわ。」


「あ、じゃあ私、ちょっと社務所に用事に行くわ。」


「おー。」







ここは皆が帰ったあとのとある部室。

スマホの画面を見て〝ニヤリ〟と笑う男が一人、部室に残っていた。


「これ一枚で俺の思うつぼだ。女なんてみんな同じ、どんなに仲良くしてたってこれ一つで思いのままだ。ハハハ…!」


そう言って笑っているのは今渦中の山中直人、結城のパートの先輩だった。つまり、ここは吹奏楽部の部室だった。


山中が手にしているスマホに映っていたのは真紀(白川真紀)の胸元が見える写真だった。どうやら部活の合宿の時に着替えの最中に偶然撮ったものだろう。山中はそれを使って真紀と友人であった結城にみんなにばらまくと言って交際させたのだった。結城のことを特に好きだからではなく、山中は仲が良い人間関係を壊すことでストレスを発散するような悪趣味な人種だったのだ。







満流に相談した結城は真実まで打ち明けることが出来ずに悶々としていた。


〝真剣に聞いてくれていた満流くんに悪いけど、流石に真紀の写真のことは言えなかった…。真紀にも真実を言えなくてごめん。だけどこのままだと…。どうしたらいいの…。〟


トボトボと歩く結城の影が一瞬だけぐらついた。しかし、そのことに結城は気付いていなかった。




しばらく歩いているとふと、夜月神社の道票石が目に入った。


〝夜月神社…?夜月…。満流くんとよく一緒にいるあの子と同じ名前だわ。〟


そう思った結城は神社に向いて歩き出した。石段を登って鳥居を通り、参道を歩いて社殿へと進む。そしてそのまま手を合わせて


〝どうか現状が回復しますように…。〟


とお願いした。




そして向きを変えて帰ろうとした時に社務所付近で輝夜と満流がいるのを目にする。


〝あの二人、本当に仲がいいのね…。〟


そう思った時に結城の影がグラリ、グラリと大きく揺れた。


「えっ!」


驚く結城をすぐさま影が巨大化して牙をむ剥こうとした!



遠くから結城の存在を認識していた輝夜は咄嗟に結城に駆け寄った。



「──────────結城さんっ!」


その声に影は結城を襲うのをやめて輝夜の方を向いた。輝夜にその鋭い爪を剥きだしにして向かって来る‼



「────悪鬼‼」


輝夜と満流、二人そろって声をあげ、同時にその場所から離れた!



刹那、悪鬼の鋭い爪が二人がいた場所へと突き刺さった!




「チッ、悪鬼め。結城さんを襲おうとしたのか。それっ!これでも食らえ‼」


そう言って満流は霊札を悪鬼の足元に投げて動きを封じた。


「今だ!輝夜っ!」


「オッケー!影切刀!抜刀‼」


そう輝夜が言った瞬間、輝夜の左手から神刀影切が現れた。輝夜は影切刀を構えて悪鬼の影を打ち抜いた‼


「悪鬼!────断つ‼ 」


強い光と共に悪鬼が大きなうめき声を出して輝夜の霊力によって浄化されていく…。そして光の粒となって消えていったのだった。



二人がその様を見上げていると、またもやカードが舞い落ちてきた。満流が拾い上げてカードを見て言った。



「……………今回もボーンだ。」


「本当に何だろう、これ…。何か意味があるのかしら…。」


二人はそのあとの言葉に詰まった。そしてそっとそのカードを輝夜は胸ポケットに忍ばせて結城のそばに行った。





「結城さん!」


輝夜はすかさず結城を見ると、どうやら気を失っているようだった。


「よかった…。」


「驚いたな。結城に悪鬼が住み着くなんて…。」


「今回の件、余程心が苦しかったんでしょうね…。」



輝夜は結城を移動させようと身体を起こそうと結城に触れた時、結城を通して輝夜に映像が流れこんできた。


「な………に…、これ……………。結城さん…あなた……………。」


満流は輝夜に何が起こっているのかわからずポカンとしていたが、


「満流、結城さんを追い詰めた原因がわかったわ。」


輝夜が満流をジッと見つめて言ったため、


「そうか。わかった。とにかく結城を社務所へ移そう。俺が変わるよ。」


そう言って満流はいとも簡単に結城を抱きあげた。そして二人で社務所に行き、輝夜の父に事情を話して結城を休ませることにした。そして輝夜と満流はある場所へと向かった。








遅くまで部室に残っていた山中。校門を出たところで待ち構えていた輝夜たちに遭遇する。


「なんだ?お前たちは……………。」


「山中先輩、今度は私と遊びませんか?」


輝夜はそう言って山中に声をかけた。満流は不満そうだ。


「先輩、私の友達と付き合ってるって聞いたのだけど、私その子のこと、本当は好きじゃなかったのよ。あの子の歪んだ顔を見たくて……………。」


山中は〝ニヤリ〟と笑った。


「そうなのか。残念だけど、僕は彼女を好きだから無理だよ?それよりそっちの男とはどういった関係なんだ?」


山中は満流に視線を向けた。



「輝夜!お前っ、俺というものがありながら………‼」


山中はまた〝ニヤリ〟と笑った。


「あぁ、いいよ。やっぱり君と付き合うことにするよ。あんな素敵な彼氏がいるのに君はいけない子だねぇ……………。」


そう言って山中は輝夜の手を掴もうとした。その時、輝夜はすかさず山中のもう片側の腕を掴んで


「満流っ!」


と叫んだ。そう、山中がその手に持っているのは例の画像が入ったスマホだった。




「な………!何をするっ‼」


山中が慌てた時にはもう遅く、満流が素早くスマホを奪って行った。部活で鍛えてるだけあって満流はひょいひょいっと山中から距離を簡単に取った。


「返せ!そんな事をしたお前、窃盗だぞ!」


そして満流はスマホをちょいちょいと触って問題の画像を探し出し、「削除っと。」と言って画像を削除した。


他にも


「あれ?これは〇組の〇〇。こっちは〇〇だ。うわっ、〇〇に〇〇も……………!どんだけ………‼ 何やってんすか、先輩!全部消しますね~~~~~~!」


そう言って生徒と思われる画像と動画を全て削除した。



「お前っ!勝手にして!訴えてやる!」


山中は大声でそう言いながらスマホを満流から奪い返した。



「あら、先輩。お気遣いなく。もれなく今までの流れをちゃ~~~~んと録画してますので。」


輝夜はそう言って自身のスマホを見せた。そして



「先輩!あなたがしたことは恐喝に値しますよ?覚悟なさって下さいね。」



そう言い放ち、満流と二人で校舎に入って行った。




翌日、部室で生徒に説明があった。


「山中直人さんは、生徒のプライベート写真を使ってその関係者を恐喝するという行為をしていたことが発覚し、退学処分を受けました。本人を恐喝するのではなく、その友人を恐喝して無理強いをしたことも判明しております。この部活でも数人、被害に遭ってますね。私たち顧問が気付かなくて本当にごめんなさい。」


それを聞いた真紀とその取り巻きはそれぞれ顔を見合せた。


そしてその後のパート別練習になった時、真紀は結城に近付いた。


「美南、さっきの説明、もしかしてあなたもそうだったの?」


「真紀……………。」


結城は静かに頷いた。



「ごめん、私。そんな事になってたなんて知らなくてあなたを責めてしまった。どうか許して!」


「いいの、あなたを守れたならそれでいいのよ。」


二人は和解したようだ。




「よかったわね、結城さん。」


輝夜は遠く離れた教室からその光景を見て二人が和解したことを理解した。そして読んでいた本へと視線を戻し、満流の部活が終わるのを待っていた。






ご覧下さりありがとうございます。今回、少し長くなってしまいました。段々話を書いていくのが辛くなってきました。1話完結型って難しいですね。その中に全部盛り込まなきゃならなくて、題材となるものをか1話ずつ考えないといけない。ここが一番難しい。

今回、結城だけならいつものペースだったのですが、山中の分も盛り込んだ為、長くなりました。


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