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【完結】偽りのチェックメイト-チェスのカードが導く断罪の儀-  作者: 慧依琉:えいる


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第17話:破滅と再生。突然の出来事に輝夜たちは……………。



黒と白、お互いに敵視しているはずなのに、狛犬たちはお互いを尊重してとても仲良くしている。その事に疑問を持った満流が二人に質問したのだ。


「そうだねー。僕たちは多分、一つの目的のために存在してるからじゃないかな?」


「一つの目的?」


二人は深く頷いた。



「君だよ、輝夜。僕たちは君が産まれる前から、君のお母さんが頑張っていた頃から君のこともずーっと見てきたんだ。そんな君を傷つけようという考えにはどうしても至らなかったよ。」


「うん、そうだよ。僕らは二人、一番近くで君を見てきたからね。」


その二人の言葉に多くの気持ちがこもっているのを輝夜は感じて思わず涙ぐんでしまった。そして輝夜は満流を見て言う。


「だったら……………、もし、満流が黒のキングであっても私と敵対することはないよね。」


満流は輝夜を見て〝キュン〟となった。


「あ…!当たり前だろっ!」


照れながらそう答える満流に輝夜は安心した。狛犬の二人も同じように安心しているようだった。だが、悠一だけはそこまで満流の事を信頼しているわけではなかったので一歩引いた感覚で彼等を見ていた。








暫くは何事もなく日々が過ぎて行った。雪も降り、間もなく春を迎えようというくらいに長く悪鬼たちにも遭遇せずに日々が過ぎて行った。




「もう3月になろうかというのにすごく冷えるわね…。」


あまりにも毎日が平凡に過ぎて行くために悪鬼との闘いの日々が嘘のように感じていた。3か月近く共に寝起きしていたからだろうか、満流と悠一もそれぞれ少し心を開いたのか、相変わらず輝夜を巡っては喧嘩を勃発させはするが、それでも仲良くなったように見えた。





それから更に日々が過ぎていき、春になり、輝夜たちも高校3年生になった。



「今年は受験生なのね~。どこの大学に行こうかしら…。」


「お前は自分が思うように進めばいい。」



満流はいつだって輝夜の背中を押してくれる人だ。輝夜はそんな満流の存在に支えられてきた。



「うん、だけど、今年中に決着をつけたいね。でなきゃ私達みんな離れ離れになっちゃう…。」


輝夜がそのことを憂いてシュンとなった。


「大丈夫さ、すぐに飛んでくるから!」


「そうですよ、輝夜さん。僕ら特殊能力で一瞬ですからね!」


彼等のその言葉を聞いて安心する輝夜。


「うん!そうだね!」








────そんなある日の夜…。



「眠れない…。」


そう言って境内へとやってきた満流。ゆっくりと狛犬たちのそばに腰を下ろし、空を見上げた。

どうやら満月のようだ…。ぼんやりと月を眺めて満流は考え事をしていた。


〝あれから…悪鬼たちは気配を消しているのか、見かけなくなった。あと1体だからか?それにキングの行方もわからない、輝夜の封印解除も、それに黒のクイーンの存在もだ。何一つ解決しないままもう半年近く経とうとしている…。なのにこの平和さが感覚をおかしくしていきそうだ…。〟


満流は冷静に考えていた。自身のこともわからないままだ。今のところ、黒のキング説が濃厚なのだが、確かに自分にはナイトとしての記憶があるのだ。


頭を抱えたまま満流は月を眺めていた。すると


〝グラリ…〟


「────?」


満流は目をこすった。月が歪んで見えたのだ。




「おかしいな、今、月が歪んで見えたぞ?俺疲れてるのか?」


そう思った時だった。


後ろから肩をポンと叩かれて振り向くとそこには輝夜がいた。




「満流…、眠れないの?」


「輝夜……………。」


輝夜はふっと笑って、それ以上何も言わずに満流のそばに座った。



「わぁ、綺麗な満月ね。」


輝夜がそう言った。満流は静かに「あぁ…。」とうなずいて、それからは二人で静かに月を眺めていた。するとまた満流には月が歪んで見えたのだ。


「なあ、輝夜。お前、あの月が歪んで見えることってあるか?」


「ん?月が?……………普通にまん丸だね。なに?満流歪んで見えるの?目の調子が悪い?」


「そうだよな、普通、歪まねえよな……………。」


満流はそう言って少し苦しそうにしだした。


「ハア、ハア……………ハア……………」


息が上がる満流。




「満流?息が…苦しいの?」


流石に輝夜も気付くくらいに満流の息遣いが荒くなって苦しそうにしていた。


「満流っ!大丈夫?」


心配そうに声を掛ける輝夜に対して満流は




「──────────だめだ輝夜!……………っ、離れろ、俺から離れろ!」


「えっつ?」


満流は輝夜を〝ドン!〟と押しのけた。



「きゃっ!満流?」



輝夜は戸惑うばかりだが目の前で満流が異様に苦しんでいた。



すぐさま狛犬たちは人間の姿になって輝夜を取り囲む。その眼差しは満流を心配していた。そして異様な気配に気付いたのか、悠一も境内へとやってきた。父はたまたま神社協会の会合で泊りがけになっていて留守だった。


「輝夜さん!大丈夫ですか?何やら異様な妖気が…!」


「悠一くん、」


悠一は輝夜の視線の先にいる満流に視線が走った。



「────満流?!」



流石に悠一も驚いていた。苦しんでいる満流がいつもの一回り大きくなっていて、彼の影は彼の動きとは別に動いているのだ。



「────まさか!君が最後の悪鬼を宿していたのか!?」


悠一がそう叫ぶ。輝夜はただオロオロするばかりだ。



「謎が解けたよ、輝夜さん!この悪鬼のせいで彼は自分がナイトだと思いこまされていたんだ!彼は普通の人間だよ。」


悠一のその言葉に輝夜はホッとしたものの、少し寂しい気もした。だが、満流が持っていた霊札や霊気は一体……………。疑問は残るが、今は目の前の満流を悪鬼から解放しなければならない。


ラスト一枚はポーンだ。だがみんなが違和感を覚える。



ポーン……………。兵隊。満流の実力でポーンだとは到底思えないのだ。


もしや、キングのカードか?!みんなが固唾を呑む……………。



「みんな、一応、用心して!」



輝夜の一言で戦闘態勢を取る。────緊張が走る────





満流の影は満流自身を覆い、彼を動かす。これは厄介だ。


「輝夜さん、辛いが彼ごと刺さないと皆がやられてしまう!」


悠一がそう言う。輝夜もそれしか方法がないのだろうと思っている。だが、輝夜には満流を討つなんて出来ない。


「わかってるの。わかってるのよ……………。だけど、出来ないっ、私には満流を討つなんて出来ないっ!」


みんな、輝夜の気持ちは痛いほど理解出来た。だが、このままでは満流は罪もない人間を襲うだろう。


輝夜が油断した隙に満流が近付いてきた!が、その様子は悪鬼ではなくいつもの満流だった。


「輝夜……………。」


「満流…?」


────いつもの満流に戻ったの?



輝夜は満流の前で気が緩んだ。


「ダメだっつ!輝夜さん!」


悠一が叫ぶ。だが輝夜の目の前にいるのはいつもの満流だ。輝夜は一歩一歩と、満流に近付く。


「満流、満流だよね?私あなたを刺すなんて出来な…………うっ、」


輝夜がそう満流に話かけていたが、やはり満流は悪鬼に操られていたようで輝夜を正面から満流の霊札で刺した。その部分は輝夜の唯一、霊気が流れていない場所で妖気が溜まりやすい場所でもあったのだ。

妖気が溜まる…つまり、そこに霊力、霊気を注げば猛毒を注ぐのと同意だ。

ゆっくり輝夜の身体を毒が駆け巡る……。


「チェックメイトだ…。輝夜……………。俺は黒のキングだ。」


そう言って満流の顔をした悪鬼が輝夜の霊札が刺さった胸に軽く口づけをした。霊力の中に混じる微かな妖力……………。一般人である満流が何故妖力まで持ち合わせているのだろうか……………。そんな疑問すら今の輝夜には手に余る状態だった。


満流の顔で満流の声で満流の言葉で輝夜に向けてとても冷ややかにそう向けられた。ただでさえ全身に毒が回り、体中が冷えていくのを感じている輝夜にとって操られた満流を思うと全身から怒りが湧きおこってくるがもうあまり上手く身体を動かせそうになかった輝夜。


死を予感した輝夜は恐る恐る満流を見上げ……………ゆっくりと手を伸ばし、満流の顔を撫でて


「私……………あなたが好きだったみたい。」


そう言って満流の唇にキスをした。

どうせ死ぬのなら大好きな満流に最期に触れたい…。ただ、それだけの想いが輝夜を動かしたのだった。



黒のキングはどうやら輝夜が目の前で弱っていく姿を見て完全に気が緩んでいたのだろう…。輝夜のキスをそのまま受け入れてしまったようだ。一瞬、唇に触れた、それだけだが輝夜の唇から満流への想いと共に微かに流れる輝夜の霊力……………。悪鬼をその身に宿した黒のキングにとってそれは猛毒だ。刹那、二人は青白い炎に包まれてその場から姿を消した!




「輝夜さんっ!満流っ!」


悠一は咄嗟に二人に手を伸ばしたが、目の前で消えてしまったので何も出来ずにいた。そしてそれは狛犬たちもそうだった。彼等の目の前にいた悪鬼も輝夜たちと共に消えていったのだ……………。


ヒラリと〝ポーン〟のカードが舞い落ちた…。



「こんなカードだけが残っても意味がない!輝夜さん、君たちがいなければっ!満流!輝夜さんのためにもちゃんと目覚めろ!黒のキングを押さえつけて戻ってこい!」


悠一は悔しそうにそのカードを手にとりながらその場に蹲っていた。







一方、消えた輝夜たちは生と死の間を彷徨うかのように何もない空間で意識を失っていた。



「うっ…。俺…。」


先に目を覚ましたのは満流だった。そしてそばに輝夜がいたので


「輝夜っ!輝夜‼」


満流は輝夜を揺さぶり名前を呼んだ。悪鬼に操られていた時の記憶が薄っすらとあったからだ。


「輝夜、ごめん、俺のせいで……………。こんな、」


満流が輝夜を抱きしめて悔やんでいた。すると


「ん…んん……………。」


輝夜の顔色が戻り、みるみる意識を取り戻した。


「輝夜っ!」


「み…………つ……る?」


「輝夜、よかった。輝夜ごめん、俺!ごめん!」


泣きながら輝夜に縋る満流。そんな満流を見て輝夜は満流に優しく答える。



「満流…そんなに謝らないで。私達死んじゃったの?」


「わからない…。ここはどこなんだろう……………。」


そして立ち上がった時、カードがヒラリと落ちた。



「黒のキング!」


満流がカードを手に取って輝夜にキングを見せた時、


「え?!」


満流側の絵柄は「白のキング」だった。

慌てて輝夜にそのカードの裏面も見せた。



「どういうこと?!」


両面にキング!だけどそれは白と黒だった。



今までは片面にしかチェスの駒の絵が描かれていなかったからだ。そして輝夜が立ち上がろうとした時、母からのお守りが落ちた。その時、お守りに亀裂が入っていて中身が少し見えていた。


「カード?」


輝夜は〝まさか!〟と思いながらそのカードを取り出した。小さく小さく折りたたまれていたそのカードはまさしく輝夜が予想した通り、「黒のクイーン」のカードだった。だが、その黒のクイーンのカードはお守り同様に亀裂が入っていた。


そしてそのカードには黒のクイーンの下に小さな白のクイーンが描かれており、こちらは無傷だった。



「これは…。私は白のクイーンだと言われていたわね、だったらこの黒のクイーンはお母さん?」


輝夜は恐る恐る満流に尋ねた。


「ああ、そうかもしれないな。コッチ(黒)がお前のおふくろさんだとしたら、この小さいのはまさしく、おふくろさんが生きていた頃のお前だろうな。」


「やっぱり…そう考えるのが自然よね?」


満流は頷いた。


「さて、俺たちだけじゃ限度があるな。皆の元に帰れるかな?」


「ほんと、ここどこなのかしら……………。」


輝夜たちがいる場所は果てしなく続く光の空間だった。






ご覧下さりありがとうございます。一時はどうなるかと思いましたね。ですが、一気にカードは揃うわ、封印は解けるわで大忙しの回でした。

次回もお楽しみに!

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