第15話:解除すべき封印が何かわかった日
転校生、砂山悠一にとり憑いていた悪鬼を退治した時に現れたカードを見て驚く輝夜と満流の前に気を失っていた悠一が目を覚ましそうになったが、起き上がって輝夜たちに近付いてくる彼の様子はおかしかった。
まるで夢遊病のようにフラリ、フラリと足取りが不安定なのだ。
そして肝心の彼の表情はというと
〝目は開いているのに焦点が合っていない?!〟
輝夜も満流もどういう状況か把握し辛かった。
「砂山君?」
輝夜がそっと声を掛ける。だが悠一は返事をする様子もなくただスッと右腕を上げて満流を指さす。
「キミハ ダレダ…。ナイトハ ボクダ。」
そう言って悠一はその場に崩れ落ち、再び気を失った。
輝夜も満流も何が起こったのかよくわからなかったが、倒れた悠一を支えて
「砂山君、大丈夫?」
と声をかける。
「だめだ。まだ気を失ったままだ。俺が背負っていくよ。ちゃんと休ませよう。」
そう言って満流は悠一を背負って二人で夜月神社へと向かった。
ちょうど境内に出ていた父に二人は出会い、悠一を目が覚めるまで寝かせたいことを説明した。
「客間を使いなさい。あとで私も様子を見に行こう。」
「ありがとう、お父さん!」
社務所へと向かう輝夜の後ろ姿を見送る父。そしてそばには狛犬の二人。
「僕、あの子…、知ってる気がする。」
ケンがそう言うとダナもうなずいていた。
「そうか、だとしたら彼も何かの役割があるのかもしれぬな。」
そう言って輝夜たちを見守ろうと改めて誓った。
社務所の中にある客間に悠一を寝かせたあと、輝夜と満流は黙ったまま悠一を見ていた。
〝さっきの砂山君、満流を指してナイトじゃないって言ったわ。どういうこと?ナイトは二つ。駒ちゃんたちが二人で一つだとして、もう一つ分は満流じゃないの?〟
輝夜は目の前の満流を信じると決めたのに、また満流に対して不安材料が出来てしまったのだ。
〝それにナイトは自分だと言っていたわ。本当にどうなってるの?カードを集めるだけじゃないの?〟
輝夜はわからないことだらけで頭の中がグルグルしていた。そしてそれは満流も同じだったようだ。二人は暫く無言だったが、ポツリと満流の方が口を開いた。
「なあ、輝夜……………。」
弱弱しく輝夜に話を切り出した満流。輝夜が満流の方を見ると
「さっき、コイツ、自分がナイトだって言ったよな、そして俺のこと、ナイトじゃないって…。」
そう言って満流は珍しく下を向いた。
「……………うん、そう言ったよね…。一体どういうことだろうね。」
「もしかしたらコイツ、それ以外にも何か知ってるのかもしれないな…………。」
輝夜は満流のその言葉に〝ハッ〟とした。
〝そっか、そういう可能性もあるんだ。何か手がかりを知っているのかも…。〟
そして二人は悠一が目を覚ますのを待っていた。暫くすると悠一が目を覚ました。
「ん…、ここは…。」
「あ、目が覚めた?大丈夫?ここは私の家よ。」
悠一は優しく自分を心配する輝夜の声を聞いて驚いた。
「よ…夜月さん!」
びっくりして飛び起きた。
「残念だけど、俺もいるぜ?」
満流の声に驚いて振り返る。
「君も…!」
そして満流は続けて悠一に声をかける。
「なあ。お前、気を失ってたんだが、その…、記憶は残ってるのか?」
満流なりに気を遣いながら話したようだ。
「え…、あ。そうだね…。僕の中の僕が何か君たちに言ったようだ。何となく覚えてるよ。」
輝夜と満流は彼のその言葉を聞いて彼自身、まだ目覚めてないのかもしれないと思った。
とにかく、満流と彼は分からないが、少なくとも輝夜とは仲間であると判断してもよさそうだ。
「ねぇ、砂山君自身は、……その、そういう世界とかについて、なにか知ってるの?」
輝夜は言葉に詰まりながら悠一に尋ねた。
「あー、うん、僕のここに、生まれた時からこんな痣があるんだ。」
そう言って悠一は左肩を見せた。
「──────────!!」
驚く事にそこには黒のチェス、ナイトの形の痣があった。
輝夜は自分にはそんな痣がなく、満流だって多分、ないはずだ。それは悠一が特別なのか、それが普通なのかすらわからない。
「私がクイーンだと聞いたわ。だけど、私にはそんな痣ないわ。それに多分、満流にだって…。」
輝夜が動揺しつつ悠一に言う。
「そうだね、君は間違いなくクイーンだよ。僕の中の僕がそう呟いている。初めて会った時からすごく訴えてくるんだよ。ハハッ。」
「そうなの?!そんな前から知っていたの?」
「うん、だけど肝心な僕はまだ覚醒出来ていない。封印を早く解いて欲しいんだ。」
悠一がそう言った。覚醒してるということは封印が解けてるということのようだ。
〝そうか…、だから石造である駒たちがあんな形で私達の前に現れることが出来たのね。え、でも…どうやって彼等の封印を解いた?〟
輝夜はふと、気付いてしまった。
〝確か、あの時は7枚目を手に入れた…?〟
そして輝夜は悠一を見た。
「さあ…、僕は封印の解き方を知らない。だけど、封印が解けたら僕は〝導きのナイト〟になるらしい。どういう意味かはわからないけど…。」
「導きのナイト…?」
輝夜と満流はお互いに顔を見合わせた。ナイトと言えば騎士だ。キングやクイーンを護る立ち位置だ。その騎士が導く役目?どちらかというとビショップがその役目をしそうなのに…。
「それから…。君、」
そう言って悠一は満流を指さした。
「お前っ、人を指さすなっ!」
「ああ、ごめん…。君、ナイトじゃないよ。何者なんだ?」
満流はビクッ!とした。〝さっきのコイツがいう、コイツの中のコイツに言われた言葉だ。俺がナイトじゃない?〟
「それはどういう意味だ?俺はちゃんと〝ナイト〟としての記憶があるぞ?」
満流は自信を持って悠一に言う。だが、
「その記憶…、間違いないの?」
「……………?!どういうことだ?俺は…、輝夜が覚醒した時に思い出した記憶だぞ?!」
その言葉を聞いて悠一は少し考えこんだ。
「今の僕はまだ凡人(未覚醒)だから詳しくわからないけど、その時の記憶…何らかの間違いってことになるんじゃないかな…。」
沈黙のあとに発した悠一の言葉はあまりにも頼りなかった。それをそのまま信頼するまでに至る根拠がどこにもないからだ。
「あの時以来、満流は霊札を使って私を援護してくれてるわ。」
輝夜が満流をかばうかのように言葉を発した。しかし悠一は
「霊札だけ?ナイトは結界も張れるし、弱いが、相手に攻撃も出来る。ただの足止めだけなんて〝ナイト〟とは言えない。」
「なん…っ‼」
悠一の言葉に満流は食って掛かろうとしたが、それを輝夜は静止した。
「ダメよ。ここで仲間割れするのは本意じゃない。」
冷静に言い放つ輝夜。そしてそれに悠一は同調した。
「ああ、僕も同じ考えだ。とにかく、君の正体がわからないが、夜月さんに害をなさない事だけはわかる。今、大切なのはその事だし、僕の封印を解いて、そのあとにキングとクイーンの封印を解くんだ。それが重要事項だよ。争うのはそのあとだよ。」
「────チッ。」
満流は新しく仲間に入る悠一が自分よりも知識がある事、それら全てが気に入らなかった。一番気に入らないのは輝夜に対する奴の見る目だった…。
〝あんな目でアイツを見やがって…。〟
要はヤキモチだ。
「もう大丈夫なんだったら早く家帰れば?」
満流が悠一にそう告げる。
「君は?」
「は?俺?俺はここに修行ってことで来てる。」
「ふぅ~~~~ん、じゃあ、僕もお願いしよっかな。」
「は?!お前は一般人だろ?俺は一応、神凪神社の跡取りとしてだな…」
「フフッ…」
そんな二人の会話を聞いてとうとう輝夜が噴出した。
「アハハハッ!」
「か、輝夜?!」
「満流、いいじゃん、仲間なんだし。ね、砂山くん、この部屋使ってよ。」
「ありがとう、夜月さん。」
「あ、そうそう。〝輝夜〟って呼んでよ。私も〝悠一くん〟って呼ぶから」
「わ…わかったよ…輝夜さん。」
輝夜はニッコリ笑った。が、そばにいる満流は面白くない。
〝俺以外で「輝夜」って呼ぶなんて…!〟
「そうだ、仲間なんだから駒たちを紹介しなきゃ!」
「ああ、石造の狛犬たち?彼等もナイトなんだよね。」
悠一は即座にそう答えた。
「え…わかるの?」
「うん、覚醒してなくても僕の中の僕がそう教えてくれる。ただ、僕本来の能力を使えないだけなんだ。」
「そっか……………。」
輝夜と悠一が少しシンミリとしてしまったので満流が駒たちを呼び出すことにした。
すると駒たちは素早くやってきて悠一を見て驚いていた。
そしてあまりにも驚きすぎて駒たちは大人の姿になってしまった。そこまではよかったのだが、動揺しすぎたのだろうか、ダナが女性の姿でなく、男性の…本来の姿で登場してしまったのだ。
「────え?」
もちろん、輝夜は固まった。てっきり女の子だと思っていたからだ。幸い、着替え等ダナがいる時にしていなかったものの、もし…と瞬時に考えてしまった。そして同時に
「あの時の────!」
そう、輝夜が単独で狙われた時に怪我をしていたところを治してくれた銀髪イケメンの彼だった。
「あぁ…、バレちゃった…。」
ケンとダナは焦っていた。が、満流は笑っていた。そして悠一はキョトンとしていた。
「悪意があったわけじゃなかったんでしょ?それなら怒らないわよ。それにあの時、助けてもらったし…。」
そう言って輝夜はポッツと頬を染めた…。
「……………ん?」
その瞬間を見逃さなかった満流。そしてダナの方へ視線をやると、ダナもバレたことが逆に嬉しそうにしている。
「────チッツ。」
輝夜の周りは皆輝夜の魅力に気付いている。満流のヤキモチはまた大きくなりそうだ。
ご覧下さりありがとうございます。今回はバトルなしで謎解きのような回になりました。輝夜を好きな満流はライバルが登場してヤキモキするのでした。




