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【完結】刻の檻刀シリーズ①偽りのチェックメイト-チェスのカードが導く断罪の儀-  作者: 慧依琉:えいる


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第11話:満流はどこ?目の前の満流は?




「輝夜はそっちな、俺こっちするから。」




朝一番に澄んだ空気と凛とした空間を満喫するのが輝夜の日課の一つだった。それがこんなに賑やかな朝になるとは…。満流の存在は大きく、そして…やかましい。輝夜は頭を抱えていた。


「ねえ、満流。朝一番ってこの神気を楽しむ時間なのに、あんたの声で台無しじゃないの!」



輝夜が満流に不満を言うも肝心の満流はというと豪快に笑い飛ばす。


「ハハハッ。いいじゃん、神様も賑やかな方がきっといいって!」


「ホント、情緒ってものを知らないのね…。」


そう言って輝夜はため息をついた。これから毎朝、この調子だと思うと気が重くなってきたのだ。



そう、何故こんな朝早くから満流が輝夜の所の夜月神社の境内にいるかというと、昨日輝夜が満流に悪鬼に単独で襲撃された話をしたがために悪鬼撲滅まで常に行動を共にしようと提案されたのだ。もちろん、双方の父が断ると思っていたのに、あっさりと許可されたせいだ。


〝ただでさえ、これから日中は暑くなってくるから貴重な朝の時間なのに……………。ホント、あり得ない。年頃の男女が一つ屋根の下で暮らすなんて…。〟


輝夜はドキドキしていた。満流はただの幼馴染ではあるが、こうも距離感が近いと輝夜はどうしたらいいのかわからなくなってくるのだ。


〝私一人がドギマギしてるの?悔しいなぁ…!〟


そう思いながら輝夜は満流を睨みつけていた。だが、平気そうにしてる満流の方が実は輝夜以上にドキドキしていたのだ。満流は幼い頃から輝夜に絶賛片思い中だからだ。



〝チェッ、アイツ本当に鈍感なんだからな。俺一人ドキドキしてるって、何か腹立つ。〟


満流はそう思いながら輝夜をジッと見ていた。輝夜のそばには狛犬たちの石造だ。満流があまりにも真剣に輝夜を見るものだから、狛犬たちは満流に対して〝ニッ〟と笑った。


〝アイツら~~~~~~‼〟と心の中で苛立ちながらサッサと掃除をすることにした。


〝こんなんでやっていけるのかな、俺…。〟




────その時!

神社の境内全体に只ならぬ空気に包まれた────



「────輝夜っ!?」


「ん、大丈夫!」


満流はすぐに輝夜のそばにかけつけた。


「確か境内には神様の結界があるはずだよな?」


「ええ、だけど一部その力が弱くなってるところがあるみたいだわ…。」


二人は顔を見合わせてその場所へと向かった。





「────女の子?!」



そこには女の子が倒れていた。


「しかもここ…。どこからこの子は来たの?」


輝夜が女の子に手を伸ばそうとした時


「ダメだ!輝夜っ‼」


そう言って満流が輝夜の手を払った。



すると倒れていたはずの女の子が〝ムクッ〟と立ち上がり


〝ジャマスルナ…。ワシハソイツニ ヨウガアル。〟


「用?用ってなんだ!?あわよくば輝夜を連れ去ろうとしただろ!?」


満流が輝夜をかばいながらそう言った。



〝オマエハナニモノダ?ワシノ シコウガ ワカルノカ?〟


「用があるなら正々堂々とやってくるだろ?こんな卑怯な手口を使うのは他に目的があるからだ!」


輝夜は満流の洞察力に驚いていた。


〝ソウダ。ヨウガアルノハ ソノムスメ。ワシラノジャマニナル。ダッタラ ソノ ミナギルヨウリョクヲ イタダコウト ナルノハシゼンダロ?〟


「はん!お前らに輝夜は渡さねえ!」


そう満流は叫んで霊札を取り出しすかさず放った!


──────────シュッ、ダ・ダ・ダンッ!



〝クッツ…!〟どうやら悪鬼を捕獲したようだ。見た目が幼い女の子なだけに悪鬼自体も動作が鈍かった。満流はあまりにも手応えがなさすぎて驚きはしたが、ここで手を抜くわけにはいかない。




「輝夜っ!」


「うん!」


輝夜は神刀、影切刀を召喚して両手で構えて悪鬼に向かった。


「悪鬼!────断つ!」


思いっきり影切刀を振りかざしてその影に刺す!




〝グゥォォォォォ……………!〟



うめき声と共に悪鬼は昇天し光の粒となって消えた。




輝夜と満流の間に落ちてきたカード……………。

残るはキングとクイーンとポーンだ。


「きっとポーンだ。」


満流が呟いた。輝夜もそう感じた。キングやクイーンはきっともっと強いのだろうと思っていたからだ。


「ほら、ポーンだ。」



それを見て輝夜は思った。


「ねえ、ひょっとして取り憑く相手によったりするのかな。」


「うーん、それもあるかもだけど、ソイツ自身のレベルって可能性もあるんじゃね?同じレベルの人間にしか取り憑けないとか…。」


「ありえる……………。」


妙に納得してしまった輝夜。満流の考察は続く。



「それに、コイツが神の結界を破ってまで入って来れるとは思えないんだよな。」


満流の言う通りだ。邪悪な存在の悪鬼が結界を破って入るにはかなりの大物でしかありえない。だが、いとも簡単に見つかり、至近距離で霊札で影を固定される程の弱い相手だった。


「近くに……………大物がいる、とか?」


「さあな。だが用心したに越したことはないな。」


「そうね……………。」



そして輝夜はその欠けた結界を塞いで二人は学校へと向かった。




狛犬たちは


〝オカシナハナシダ。〟と考えて警戒した。狛犬たちは既に覚醒しており、結界が破られる時に気配を感じていてもおかしくないのだ。それが気配を感じずにいとも簡単に侵入されたからだ。







放課後、満流の部活が終わるのを待つ輝夜。その時、部活の指導者が輝夜に話かけてきた。


「君、神凪君とよく一緒にいる子だね。」


「……………?はい…。」



輝夜は指導者の方をチラっと見て返事をした。相手は輝夜を確認した上で話を続けた。


「彼、調子はいいのか?」


「はい?」


「この前の遠征の時、休んでいたからな、部活中もよく調子を崩すようで抜け出してるんだよ。親しいなら何かしっているのかと思ってな。」



指導者は冗談を言ってるようには見えなかった。だが、輝夜は彼の言葉が理解できなかった。



「あ…あの?満流……………、いえ、神凪君が途中で抜けたり一昨日の遠征を休んだのですか?」


輝夜は訝し気に指導者に聞き返した。昨日、遠征から戻った満流と一緒に帰宅し、遠征中の話を本人からも聞いていたからだ。


「あれ?彼から何も聞いてないのか?ほら、今だってグランドにいないだろ?」


そう言って指導者は満流の姿がグランドにない事を指摘した。だが、輝夜の瞳には満流がそこにいて仲間とわいわいと話している姿が見えるのだ。


「え、先生?満流はあそこにいますよ?ほら、他の人たちと話をしてます。」


そう言って輝夜は体育館近くの方のグランドを指さした。だが、


「ん?そこには誰もいないぞ?」


指導者はそう言う。


〝何かがおかしい……………。この先生、本当に先生なの?〟


輝夜は指導者を疑った。そんな時、満流のクラスの結城が教室を覗いた。




「あ、山上先生。皆さんが探してましたよ?」


そう言うと指導者は


「ああ、すまない。……………あ、君、ちょっとこっちへ来てくれるか?」


そう山上に言われ、不思議そうな顔をして結城は近付いてきた。



「あの場所に神凪君が他の生徒と一緒にいるらしいのだが、君には見えるか?」


山上は結城に唐突にそう尋ねた。結城は山上が指さした方向を見て


「誰かいるんですか?」


と、答えた。輝夜は驚いた。輝夜の目には今でもそこに満流がいるのだから……………。



「おかしいな、彼女がそこに神凪君たちがいると言うのでね……………。」


そこで結城は輝夜を見た。


「あら、夜月さん……………。そもそも神凪君ならさっき慌てて校舎を出て行きましたよ?」


結城のその言葉で輝夜は更に驚いた。


〝一体……………。何が起こっているの?〟


輝夜は今、自分の目の前でやり取りされてる出来事に眩暈を感じた。そしてそのまま輝夜はどうやら意識を失ったようだ。結城の輝夜を心配する声が遠くなっていき、薄れていく意識の淵で感じていた……………。






次に目を覚ましたのは保健室だった。


「大丈夫か?」


そう声を掛けたのは満流だった。じんわりと彼の顔が汗ばんでいた。最近気温が上がってきてるというのに、走ってきたのだろうか……………。


「満流……………。」


輝夜が微かに満流の名前を呟いた。



「驚いたよ、結城が知らせてくれたんだ。」


そう言う満流は部活の服を着ていた。


「満流……………、ごめん、部活中だったのに……………。」


「いいって。それより、大丈夫なのか?お前が倒れるなんて滅多になかったからな。」


そう言う満流はいつもの満流だった。輝夜は倒れる前の話を満流にすべきかどうか悩んだが、何故だか言葉に出来なかった。

満流の姿を誰もが確認出来ていないわけではない。という事は満流自身は存在するということだ。輝夜は一瞬、満流は自分が作り出した幻想なのかと思ったのだ。

ただ、時々、満流は輝夜以外の人間には姿が見えていないということなのだ。それは一体何故なのか……………。輝夜はどう考えてもわからなかった。


〝こんな話……………、満流だってきっと気持ち悪いって思うだろうな、私だって信じられないのだから…。〟


輝夜がそう考えている時、満流は無言で輝夜を見つめたままだった。満流は輝夜の調子がまだ悪そうだったので


「もうちょっと休んで、回復したら帰ろうぜ。何なら負ぶってってやるけど……………。どうせ一緒のトコ帰るんだから…。」


そう提案をしてみた。



「……………!だ、大丈夫よ!着替えてきて!その間に用意するから!」


「ハハハ!残念!」


そう笑って満流は部室へと向かった。



その後ろ姿を見て輝夜は

〝ふふっ、きつもの満流だわ。〟と目を細めて心の中で思った。

そして保健室のベッドから起き上がり、帰るための身支度をした。



保健室の先生を探したが見当たらず、仕方なく黙って帰ることにした。



満流は…と辺りをキョロキョロして見渡したがまだだった。輝夜は満流の部室方向へと歩いて行こうとした時、少し先に満流と山上先生の姿が見えた。



〝あら…。二人で何を話してるのかしら。〟


輝夜は思わず隠れてしまった。



〝別に隠れる必要なんてなかったのに…。〟


どうして隠れてしまったのか、自分でも分からなかった。そして何故だかドキドキしてきた輝夜。


〝隠れるって…何だか悪いことしてるみたいね…。〟


そしてそっとその場で二人が話を終えるのを待とうとした時、微かに二人の会話が聞こえてきた。




「神凪君、あの遠征の日、どうしたんだ?前から体調を整えるように行ってあったが?」


「すみません。充分気を付けていたのですが、前日に食べた物にあたったみたいで…。」


「もう平気なのか?」


「はい、お陰様で。すっかり良くなりました。」


「それは良かった。だが、君は最近良く部活中に抜け出してるようだが?」


「すみません、夜にあまり眠れてなかったもので目眩がしたので…。」


「そうか、わかった。」


満流はホッとした。



それで山上との会話は終わったものだと思った矢先、山上が満流に声をかけた。


「ああ、君と仲のいいさっきの子だが、君がそこに居ないのに居ると言ってたんだ。彼女も疲れてるんじゃないか?」


「えっ?!輝夜がそんな事を?」


「ああ、ちゃんと見てやりなさい。」


「あ、はい!」


そう言って二人の会話は終了した。



〝輝夜──────────〟


満流の表情がまるで氷のように冷たい表情になった。



その瞬間を輝夜は見逃さなかった。


〝満流──────────…。〟



二人は近くに居たのにお互いに遠くにいるかのような気持ちだった。





ご覧下さりありがとうございます。何だか訳がわからないですよね?すみません。

どうやら満流にはなにか秘密があるかのようです。


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