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此岸の大地~現実に実在しうる異世界転生~  作者: KVIN
最終章 グリンセイランド編
37/40

第37話 唸る拳

 グゴオオオオオ……


 巨大な水竜の咆哮ほうこうが周囲に響き渡る。土砂を巻き込み、岩を砕き、木々をなぎ倒しながら、それはあらゆるものを押し流す。


「見えたぞ! 三ノ門だ!!」


 グラハムの鋭い視線が、水門の姿を捉える!


 三ノ門では、異変を察した守備隊がすでに動き出していた。混乱しながらも、慌ただしく土嚢どのうを積み上げているのが見える。


 巨大な水竜を引き連れたまま、馬を駆ける!

 ダインザールの放った敵騎兵が、少し遅れて対岸を追走する!


「チィッ!! 工兵はすぐ閘門こうもんの破壊に取り掛かれ!」

 ──水竜の頭が三ノ門に到達する!


「十騎は守備隊を蹴散らせ! 工兵の邪魔をさせるな!!」

 ──激しい水しぶきが上がり、大地がきしむ!


「残りは敵騎兵を迎え撃つ! ついてこい!!」

 ──混乱する守備隊に一瞥いちべつもせず、これを振り切ると、水門に架かる橋を渡る!


「工兵を狙え! 水門を破らせるな!!」

 ──橋の反対側から敵騎兵が突っ込んでくる!


「「ウォオオオオオオ!!」」

 騎士たちの咆哮が木霊こだまし──


 両軍の騎士たちは、橋の中心で激しくぶつかった!!

 稲光がその影を、水面に映し出す!!


 ──約束の刻まであと半刻!!



 † † †



 ライデルとダインザールは、馬上で剣を激しく切り結ぶ!


「水門の連鎖破壊れんさはかいとは、考えたな! だがやらせねぇ!!」


 雷鳴のような剣戟けんげきが幾度も響き、銀の刃が閃光を描く。


「お前さえいなければ……!」

「そうかよ。なら殺してみろ!! 坊主!」


 両軍の騎士たちは川からあふれ出る水竜の尾を踏まぬよう、互いに移動しながら打ち合う!


「敵を討ち取れ! 水に怯むな! 続けぇ!」


 川辺に広がる、ぬかるんだ平原に敵味方が入り乱れる。馬が跳ね、兵が倒れ、戦場はもはや誰が味方かもわからぬ混乱。


「陣形を保て! ウェミナールきょうを援護しろ!」


 ライデルとダインザールの剣が交錯するたび、騎士たちに緊張が走る。


 そのとき──


 上流から流されてきた巨木きょぼくが、轟音ごうおんとともに戦場へ突っ込んできた!


「回避しろぉおおお!!」

「クソッ!!」


 メキメキと激しい音を上げ、巨木が騎士たちをぎ払う!!  馬が宙を舞い、薙ぎ払われた騎士たちが、水竜の背に叩きつけられる!!


 周囲の景色は一変し、少し離れたところにいたライデルとダインザールが分断された形となった。


「くっ、被害は……」

 ──帝国側の被害は……小さい!


「ギュスターヴ殿! こっちはもういい! グラハムを追え!!」

「承知した! 無事な者はついてこい! いくぞ!!」


「くそっ! 俺の馬が! お前達は奴らを追え!!」


 剣戟の音が、震える大気を切り裂く。


 約束の刻はすぐそこまで迫っていた──


 † † †



「はぁ……はぁ…… これで最後だ!」

 グラハムが剣で薙ぐ!


「あああぁぁぁ………」


 敵兵の身体は、受け止めた剣ごと吹き飛び、水竜の腹の中へ落ちていった……


「状況はーーー!?」


 グラハムに対岸の工兵に、叫び問いかける!


「閘門の蝶番ちょうつがいを破壊! くさびもすべて打ち込みました! 間もなく冠石かんむりいし陥落かんらくし、流出がはじまります!!」


「よーーっし!! あと一息だな!」


 グラハムは荒く息を吐きながら、拳を握りしめた。


 そのとき──


「ぎゃぁあああ」


 矢の嵐が工兵を襲った!!


「敵襲――! 敵襲――! 弓兵だ! 森に潜んでいるぞ!」


 こちらと同じく、ダインザールも両岸に兵を配置していた。遅れて到着した西岸の敵兵は森に潜み、反撃の機会を伺っていたのだ。


「間に入れ!! 工兵を守るんだ!!」


 矢の嵐は収まらない──


 † † †


 ──騎士たちが森の中に入り込み、弓兵を迎え討つ。

 森のざわめきが収まった頃、生き残った工兵は誰もいなかった……


「クソぉおおおおおお!!」


 グラハムの雄叫びが響き、それを水竜の咆哮がそれをかき消した。


 約束の刻は、既に過ぎていた──

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