表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
此岸の大地~現実に実在しうる異世界転生~  作者: KVIN
最終章 グリンセイランド編
35/40

第35話 雌雄の行方は

 カンカンカンカン──!


 帝国軍の陣地に、警鐘けいしょうが激しく打ち鳴らされた。

 川辺に布陣した三千の兵たちの緊張が、限界まで高まる。


「敵接近ッ! 全軍、備え!!」


 馬上で叫ぶ伝令。地鳴りのような足音が、東から押し寄せる。鎧を打つ武者震い。槍の穂先がわずかに揺れている。


 ──そして、地平線の向こうから、黒い波が姿を現す。


 その数、一万以上──三倍以上の敵勢。果てしなく続く戦列。見ただけで心が折れそうな、圧倒的な兵力差だった。


「ウェミナールきょう、長くは持ちませぬ…… どうか、お急ぎを……」


 モルニエール卿は、その戦列を見つめ唇を噛みしめた。


 † † †


 同じ頃──川上の水門 二ノ門


 それはいつもの退屈な守備任務のはずだった。遥か南では、大きな合戦があるらしいが、こちらには関係がない。 ある者は昼間から酒を楽しみ、ある者は談笑している。


 その日常を──


「何だ? 今日は鳥がやけに五月蝿うるさいな……」


 矢の雨がが貫いた──


「うわぁぁああ!!」

「敵襲か!? て、敵襲だーー!!」


 簡素な柵をなぎ倒し、騎馬隊が一気に雪崩込んてくる!


「進め! 進め! 進めぇ!!」

「工兵を守れ! 一気に制圧しろ!」


 ライデルが勇ましく吼えると、嵐のように守備隊を一気に殲滅せんめつする。


「回せ! くさびを打て! 水門を破るんだ!!」


 工兵が楔を打ち、水門の破壊に取りかかる!


「よし! 次の水門に先行する! 二十騎ついてこい!」

「残りは周囲を警戒しろ! 工兵を守れ!」


 ライデルは馬を乗り換えると、次の水門へと矢のように駆けていった。

 程なくして、背後から雷のような轟音がとどろき、地鳴りが追いかけてきた。


 † † †


 川下──帝国軍布陣地


 東部平野では、川辺に布陣した帝国軍が粘っていた。 数の上では絶望的だったが、地形を活かした巧みな布陣が功を奏し、残党軍の進軍を寸断している。


「帝国……なかなかしぶといな」


 ダインザールは、戦列後方から冷静に戦況を見つめていた。


「ダインザール様……何かの間違いかもしれませんが、念のため……北の空に、救援を求める狼煙のろしが……」


「………大水門か?」


「いえ、それよりも、更に北です」


「……なんだと?」


 ダインザールの眉がぴくりと動いた。


(大水門じゃない? 何かの手違いか?帝国に水計の兆候ありとの連絡を受け、大水門の守備兵を増やしていた。大水門を開いて増水させ、渡河とがを妨害してくると読んだんだがな……)


 ダインザールは深く息を吐き、思案を巡らせる。


(まあ、この戦力差で、戦力を分散してくれるなら、願ったり叶ったりだったんだが)


 † † †


 ──ライデル・ウェミナール


 帝国に突如現れた勇者。

 いまここで帝国軍を率いているのはあの男か……


 二年前、シャクティ=プラムで出会った神官。

 いや、十年前、このグリンセイランドで殺し損ねた、


 ──『妹君』と言うべきか。

 まさか、あの顔立ちで男とは。


 奴が俺の前に立ちはだかることになるとは……


「ダインザール様、救援を求める狼煙が再び…… 同じく大水門より北側、先ほどより東寄りです」


(また? 間違いじゃない……このタイミングで……? 明らかに何かの意図がある)


 もう一度、北の空を見上げ、思案を巡らす。


「……いや……まさか……そうか……やるじゃねぇか。あの坊主」


「やべぇな。本陣に馬を飛ばせ!」

「だが、指示は待ってられん。独断で動くぞ! 五十騎用意させろ!」


「ガイル!! ここの指揮は任せた! 五十騎、俺についてこい! いくぞ!!」


 吼えるように叫び、馬に飛び乗る。

 十年前、逃したその影が、今また、自分の前に立ちはだかるとは──


「彼奴め! 今さら過去が追いかけて来やがった」


「いいぜ、坊主! こんな戦争は、はじめてだ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ