第28話 強襲!迎え討つ!
「傾ーー注ーー!!」
騎士たちに檄を飛ばす高位騎士の声が、野営地に木霊する。その片隅で、ルティは騎士たちの前に立ち、祈りの言葉を捧げていた。
「我々は敵の動きを察知することに成功した!」
「今日!! この作戦を!! 成功させれば!! 帝国の勝利は──」
「あんなに大声で、大事な作戦を言っていいものなのかねぇ」
グラハムが肩をすくめる。
ナギは小さなため息をつくと、黙々と準備する。
「聖オーランの御加護を!」
「「 応!!」」
──騎士たちが土埃を巻き上げ、勇ましく出陣した。
† † †
「ごっはん♪ ごっはん♪」
サーナがご機嫌に歌う。
「皆さん、食べ物に困っているのに、私たちだけ食べていいんでしょうか?」
「いやいや、ルティのご飯、小鳥の餌か? ってくらい少ないじゃん」
「そんなんじゃ、リディ好みの体型になれないゾー」
「ボフゥー」
真顔のまま吹き出すライデル。
「……ライデル……准司教??」
ルティが、ジーーーっとりした目で見つめる。
「ごっ、ごかっ、ごかいだよぉ!」
(プクク、こんなに焦ってるリディ、はじめてみるかも♪)
† † †
──アーニャが鼻をピクピクさせる。
「ん? アーニャ、どした? ──ッ!!!!」
「みんな! 伏せて!!」
「あうっ!」
サーナがルティの腕を掴み、強引に荷馬車の陰に引き摺り込む。
「こっちだ!! 隠れろ!!」
その声に反応したグラハムが、巨大な樫のテーブルをひっくり返し盾にする!
次の瞬間──
空から火矢の嵐が襲った!
火矢がテーブルの盾に突き刺さり、昼食のサラダが宙を舞う!
「敵襲――! 敵襲――!」
あちこちで火の手が上がり、野営地が一気に慌ただしくなる。
「あっぶなー」
「ありがとう、サーナ! グラハム! 助かった!」
「ラプトル騎兵だーー! 速いぞ!!」
遠くで誰かが叫ぶ!
火矢を放ちながら移動しているのだろう。
立ち昇る焔がその道標となる。
「……行ったかな?」
──軽微な、被害……?
いや、アーニャがまだ警戒を解いていない!
「──ッ!! 陽動!? なら本隊は?」
サーナがアーニャに飛び乗り指示を出すと、アーニャは積み上がった木箱の上に、ヒョイッと飛び乗った。
見渡す緋色の瞳に、砂煙が映る!
「──ッ! 北に敵影! 騎馬隊! 大型の軍馬! 数、二十騎以上!!」
そして戦慄する!
「距離三百! 守備隊を呼び戻して!! あっちは陽動!」
「そんなん! もうおせーよ!!」
──グラハムが右手で、椅子にしていた長い丸太を担ぎ上げ、
「迎え撃つぞ!!」
──左手で剣を抜いた!
「距離! 二百!」
「ナギ!! ルティを連れて守備隊の方に走れ!」
「距離! 百!」
ライデルも剣を抜き、軍馬に飛び乗る。
「承知!」
「皆、気を付けて!」
大地が揺れる揺れる揺れる揺れる!!
「距離! 五十! 来るよ!!」
† † †
「ウオオオオオオオオオ!!!!」
凄まじい咆哮を上げ、グラハムが丸太をぶん投げた!!
回転しながら飛ぶ丸太が、柵をなぎ倒し侵入した敵騎兵を襲う!!
「よーーっし! まずは三つだ!!」
† † †
ライデルは、敵左翼に狙いを定め、身を隠していた。
奇襲をしたはずが、丸太の逆襲を受け、浮足立つ敵騎兵。
その隙を見逃さない!
「やぁーー!」
敵の左手側面を、撫でるように切り裂いていく!
敵は利き腕の逆側から横撃され、反撃ができない。
「ひとりっ! ……ふたっ……ふたりっ!!」
三騎目を落馬させたところで引っかかる。
「リディ! 止まるな!! ダメならすぐ離脱しろぉおおお!!」
テーブルを盾に、グラハムが突っ込んでくる!
「おらぁあああああ!!!!」
一当てしたテーブルを、そのままぶん投げる!
そして目の前の敵を、馬ごと叩き切った──
† † †
「アーニャ!」
集積地の荷馬車を縫うように駆ける駆ける!
荷馬車の、切れ間から……鋭く一射!!
死角からの不可避の一撃!
アーニャと、自身の馬の速度が乗った矢は、敵騎兵の心臓深くに突き刺さった!!
「これで二人目っ!!」
アーニャから見張り台に、ピョンっと飛び移る!
集積地の向こう側で、グラハムが三騎に囲まれているのが見える!
サーナは指笛でアーニャに合図を送り、弓に次の矢を番えた。
† † †
東に抜けたライデルを三騎が追う!
最初の奇襲返しで約半数が倒れ、既に敵の作戦は瓦解していた。
だが、既に指揮官が倒れ、撤退の指示は来ない。
……先頭を駆ける、勇敢な指揮官だったのが災いした。
いまは丸太の下敷きだ。
「ここまで来るのにだいぶ脚を使ったね。この馬には追いつけないよ!」
前方からナギが守備隊を引き連れて来る!
「これで終わりだ!!」
ライデルは、敵騎兵が守備隊とぶつかるのを確認すると、旋回しグラハムの下へ向かって駆けていった!
† † †
三騎に囲まれるグラハム。
誰かが先に突っ込めば、残りのふたりで、殺れる!
だが、それができない。
「死ぬのは怖いか!? 怖いよなぁ! 俺は怖くないぜ…… 来いよ!! 全員道連れにしてやる!!」
──次の瞬間!
アーニャとラプトルたちが、後ろから敵騎兵に飛びかかった!!
サーナの指示で回り込んでいたのだ。
喉を食いちぎられ、ハラワタを掻き出され、そして息絶えた……
「グラハムッ!!」
「リディ! 無事だったか! ははっ! 死に損なったぜ」
そういってライデルと、グラハムはガッチリ握手を交わした。
† † †
──その後、遅れて駆け付けた守備隊により、残りの敵兵力も殲滅されるのだった。




