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此岸の大地~現実に実在しうる異世界転生~  作者: KVIN
第四章 南部小大陸編
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第28話 強襲!迎え討つ!

(けい)ーー(ちゅう)ーー!!」


 騎士たちに(げき)を飛ばす高位騎士の声が、野営地に木霊する。その片隅で、ルティは騎士たちの前に立ち、祈りの言葉を捧げていた。


「我々は敵の動きを察知することに成功した!」

「今日!! この作戦を!! 成功させれば!! 帝国の勝利は──」


「あんなに大声で、大事な作戦を言っていいものなのかねぇ」


 グラハムが肩をすくめる。


 ナギは小さなため息をつくと、黙々と準備する。


「聖オーランの御加護を!」


「「 (おう)!!」」


 ──騎士たちが土埃を巻き上げ、勇ましく出陣した。


 † † †


「ごっはん♪ ごっはん♪」


 サーナがご機嫌に歌う。


「皆さん、食べ物に困っているのに、私たちだけ食べていいんでしょうか?」


「いやいや、ルティのご飯、小鳥の餌か? ってくらい少ないじゃん」

「そんなんじゃ、リディ好みの体型になれないゾー」


「ボフゥー」


 真顔のまま吹き出すライデル。


「……ライデル……准司教??」


 ルティが、ジーーーっとりした目で見つめる。


「ごっ、ごかっ、ごかいだよぉ!」


(プクク、こんなに焦ってるリディ、はじめてみるかも♪)


 † † †


 ──アーニャが鼻をピクピクさせる。


「ん? アーニャ、どした? ──ッ!!!!」

「みんな! 伏せて!!」


「あうっ!」

 サーナがルティの腕を掴み、強引に荷馬車の陰に引き摺り込む。


「こっちだ!! 隠れろ!!」

 その声に反応したグラハムが、巨大な樫のテーブルをひっくり返し盾にする!


 次の瞬間──

 空から火矢の嵐が襲った!


 火矢がテーブルの盾に突き刺さり、昼食のサラダが宙を舞う!


「敵襲――! 敵襲――!」


 あちこちで火の手が上がり、野営地が一気に慌ただしくなる。


「あっぶなー」

「ありがとう、サーナ! グラハム! 助かった!」


「ラプトル騎兵だーー! 速いぞ!!」

 遠くで誰かが叫ぶ!


 火矢を放ちながら移動しているのだろう。

 立ち昇る焔がその道標となる。


「……行ったかな?」


 ──軽微な、被害……?

 いや、アーニャがまだ警戒を解いていない!


「──ッ!! 陽動!? なら本隊は?」


 サーナがアーニャに飛び乗り指示を出すと、アーニャは積み上がった木箱の上に、ヒョイッと飛び乗った。


 見渡す緋色(ひいろ)の瞳に、砂煙が映る!


「──ッ! 北に敵影! 騎馬隊! 大型の軍馬! 数、二十騎以上!!」


 そして戦慄する!


「距離三百! 守備隊を呼び戻して!! あっちは陽動!」


「そんなん! もうおせーよ!!」

 ──グラハムが右手で、椅子にしていた長い丸太を担ぎ上げ、


「迎え撃つぞ!!」

 ──左手で剣を抜いた!


「距離! 二百!」


「ナギ!! ルティを連れて守備隊の方に走れ!」


「距離! 百!」


 ライデルも剣を抜き、軍馬に飛び乗る。


「承知!」

「皆、気を付けて!」


 大地が揺れる揺れる揺れる揺れる!!


「距離! 五十! 来るよ!!」


 † † †


「ウオオオオオオオオオ!!!!」


 凄まじい咆哮を上げ、グラハムが丸太をぶん投げた!!

 回転しながら飛ぶ丸太が、柵をなぎ倒し侵入した敵騎兵を襲う!!


「よーーっし! まずは三つだ!!」


 † † †


 ライデルは、敵左翼に狙いを定め、身を隠していた。


 奇襲をしたはずが、丸太の逆襲を受け、浮足立つ敵騎兵。

 その隙を見逃さない!


「やぁーー!」


 敵の左手側面を、撫でるように切り裂いていく!

 敵は利き腕の逆側から横撃され、反撃ができない。


「ひとりっ! ……ふたっ……ふたりっ!!」


 三騎目を落馬させたところで引っかかる。


「リディ! 止まるな!! ダメならすぐ離脱しろぉおおお!!」


 テーブルを盾に、グラハムが突っ込んでくる!


「おらぁあああああ!!!!」


 一当てしたテーブルを、そのままぶん投げる!


 そして目の前の敵を、馬ごと叩き切った──


 † † †


「アーニャ!」


 集積地の荷馬車を縫うように駆ける駆ける!

 荷馬車の、切れ間から……鋭く一射!!


 死角からの不可避の一撃!

 アーニャと、自身の馬の速度が乗った矢は、敵騎兵の心臓深くに突き刺さった!!


「これで二人目っ!!」


 アーニャから見張り台に、ピョンっと飛び移る!

 集積地の向こう側で、グラハムが三騎に囲まれているのが見える!


 サーナは指笛でアーニャに合図を送り、弓に次の矢を(つが)えた。


 † † †


 東に抜けたライデルを三騎が追う!


 最初の奇襲返しで約半数が倒れ、既に敵の作戦は瓦解していた。

 だが、既に指揮官が倒れ、撤退の指示は来ない。


 ……先頭を駆ける、勇敢な指揮官だったのが災いした。

 いまは丸太の下敷きだ。


「ここまで来るのにだいぶ脚を使ったね。この馬には追いつけないよ!」


 前方からナギが守備隊を引き連れて来る!


「これで終わりだ!!」


 ライデルは、敵騎兵が守備隊とぶつかるのを確認すると、旋回しグラハムの下へ向かって駆けていった!


 † † †


 三騎に囲まれるグラハム。


 誰かが先に突っ込めば、残りのふたりで、殺れる!

 だが、それができない。


「死ぬのは怖いか!? 怖いよなぁ! 俺は怖くないぜ…… 来いよ!! 全員道連れにしてやる!!」


 ──次の瞬間!


 アーニャとラプトルたちが、後ろから敵騎兵に飛びかかった!!

 サーナの指示で回り込んでいたのだ。


 喉を食いちぎられ、ハラワタを掻き出され、そして息絶えた……


「グラハムッ!!」

「リディ! 無事だったか! ははっ! 死に損なったぜ」


 そういってライデルと、グラハムはガッチリ握手を交わした。


 † † †


 ──その後、遅れて駆け付けた守備隊により、残りの敵兵力も殲滅されるのだった。

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