第24話 ただいま
第三章 エピローグ──
† † †
シャクティ=プラム──
見上げてごらん、夜空の星を。
それは、一千万年前の旅人が見た夢。
見渡してごらん、大河の岸を。
それは、一千年前の旅人が見た景色。
巡る、巡る。星と季節。
廻る、廻る。魂と輪廻。
ここは、二柱の神が眠る、古き大地。
そして今も──新しき命に問いかける。
「あなたはこの宇宙に、何を想う?」
それは、終わりなき常世の楽園か。果てなき地平の牢獄か。
「わたしはこの宇宙に、何を願う?」
それは、永遠の輪廻か。救済の終焉か。
終わらぬ問い。終わらぬ旅。
それでも、歩き続ける。どこまでも、いつまでも。
さあ、帰ろう。わたしたちの家へ。
目指すは、遥か東──アーシャ=ヤーム。
あの日見たのは、此岸の夢か。彼岸の記憶か。
答えはまだ、彼の中で眠っている。
† † †
夜明け前まで降り続いた雨が上がり、朝日が雲の切れ間から差し込む。 朝日を浴び、サロウェラの湖が黄金色に輝いていた。
空には虹がかかり、
天と地が、英雄たちの帰還を祝福していた。
──その湖畔に、懐かしい影が立っていた。
「「ルティ! ナギ!」」
「ルゥーーティィーー!!」
サーナとアーニャが駆け出す。ルティの胸に思いきり飛び込んだ。
リィィン──
懐かしい鈴の音が鳴り、空へと舞い上がる。
「おかえりなさい、サーナ!」
ルティの頬がふわりとほころぶ。
「おかえりなさい、グラハムさん……リディ……」
「おう、帰ったぞ!」
グラハムが照れ隠しのように頭をかく。
「……ただいま、ルティ」
三か月ぶりの再会は、まるで何年も会っていなかったかのように、ぎこちない。
お互いに視線を合わせられずにいた、そのとき──
「ドーーン」
「ひあ!?」
ルティがサーナに突き飛ばされ、ライデルの胸に飛び込む。
「ご、ごめんなさいっ……!」
赤面して離れようとするルティを、ライデルはそっと抱きとめた。
「……ただいま、ルティ」
「……おかえりなさい、リディ」
二人の影が重なったとき、朝の虹が少しだけ濃くなった気がした。
† † †
「そういえばサーナぁ! さっき突き飛ばしましたねー!」
「ピューピュピュー♪ 何のことぉ~?」
「リディも何か言ってください!」
「ははは…… このやり取り、懐かしいなあ」
「グラハムさんも笑ってないで助けてください!」
「そういえば、お土産買ってきたよー」
「あ、もしかして誤魔化そうとしてますねー」
「じゃーん! “背徳のクッキー”と“冒涜のクッキィー”」
「ううん!? 気になるけど神に仕える身として、背徳とか冒涜とかは……」
「これ、とっても美味しいよ、ルティ」
「リディ!? 食べちゃったんですかぁ!? もぉ~~!」
笑い声が風に乗って、湖の向こうまで届いていく。アーシャ=ヤームの空に、穏やかな日々が戻ってきた──




