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LostNumber  作者: 霧紙 レイ
それぞれのはじまり
1/4

人狼好きな女大生

書き始めってむずいよね

 マンションの5階一人暮らしには十分な1LDK。

 寝室にしている部屋で目を覚ます。

 望月麗華「もちづき れいか」

 21歳、女大生。得意科目はプログラム。趣味は人狼ゲームだ。

 湿度が気になりだした梅雨の時期の朝6時、今日も大学に向かうための準備をしていた。

 バックには教材の他、お気に入りのノートPCと人狼ゲームのカード達が入りっぱなしだった。

 一人暮らしに慣れ、淡々と朝の活動をこなし、大学へと向かう。

 変わり映えのしない現代の街並み。消えた街灯。静かな朝。

 大学に入るとクラスメイトが何人か来ていたが、全員青白い顔をしていた。

 人狼で鍛えた観察眼はクラスメイトの異常を見流さず、生気が無く、まるで亡霊が憑依して体を動かしているように見えた。

 確かに奇妙な状況だが、それを理由に大学を早退するほどでもないと、問題を切り捨て、授業を受ける。

 授業は問題なくいつものスピードで進んだ。

 教授も生徒同様青白い顔をしていたことが、麗華の正気度を奪っていく。

 この状況に対し、発狂でもしたのだろう。まるで、クトゥルフ神話TRPGのようだと麗華は興奮し、探索者としてのロールプレイを演じることにしてみた。

 ダイスはない、持ち前の観察力と言いくるめだけが彼女の持つ武器だ。

 青白い人たちを幽霊と呼称し後を着けると、全員が、敷地内の別棟へとゆらゆら移動していることが判明した。

 幽霊たちを観察し続けると、どうやら大ホール1。別名展示エリアへと集まっているようだ。

 大ホール1は、全校集会でも使われるほどの広さがある多目的スペースであり、現在は芸術学科が、【より良きアイデア、外からの知恵展】が行われているはずだ。

 ますますクトゥルフ染みてきたなと興奮しながら、一般生徒を装って侵入する。

 中に入り、まず目を付けたのはMAPだ。

 室内の中心から同心円状に展示物が置かれているようだ。また、中心にいくほど抽象的な製作物が展示されているようで、外円にあたる今の場所から確認できるものは総じて写真や、風景画が多かった。

 MAPを確認している間でも、幽霊たちは、中心へと目もくれずゆらゆらと移動を続ける。おそらく、元凶は中心にあるだろうと確信を持った状態でこの凶器の展示会を見て回る。

 MAPの記載通り、中心にいけば行くほど抽象的なものが増え、目をロマネスコのように規則的に配置した【心眼】や、肉を模した赤い粘土と巻き時計が融合した【覆われた偽り】など、まるで意味の分からないものが展示されていた。

 そのような狂気的な物に背筋が凍るが、さらにその狂気を増幅させているのが幽霊たちだ。

 皆、枯れた声でぼそぼそと何かを唱えている。息継ぎのタイミングすら完璧に揃った声たちは、まさに邪心崇拝の祝詞のように暗い希望を紡いでいた。


「「「「iyha,iyha,lethsria!!,althrha,jyutth.aeliiyt,aeliiyt,lethsria!!」」」

「「「「iyha,iyha,lethsria!!,althrha,jyutth.aeliiyt,aeliiyt,lethsria!!」」」

「「「「iyha,iyha,lethsria!!,althrha,jyutth.aeliiyt,aeliiyt,lethsria!!」」」


 その声の集まる中心にあったのは、球と円柱で構成されたオブジェだった。

 麗華は、そのオブジェを観察する。

 円柱同士を球で接続しているという規則性があり、ランダムに接続された円柱は、どこから制作されたのかが全く分からないほどに複雑な作りとなっていた。

 終点や始点を探そうとすればするほどに、堂々巡りとなる造形。そんな制作物に幽霊たちは、地に伏してどこの言語かすら不明な祈りをささげていた。


 麗華のミスは多くあったが、重大なものを一つ挙げるとすれば、祈りの対象、その造形を直接見たことだろう。

 目がその造形の始点を探して止められない。

 思考が、その造形を理解しようと止められない。

 終わりのないループにとらわれ、次第に目が乾き、脳が過熱する。

 頬が放熱のために赤くなり、不要な思考を止めたせいで体が動かない。限界を迎えた脳からの痛みすら処理を放棄するほどの情報量。


 次第に耳鳴りが聞こえ、ハウリングの様な高い音が響き渡る中、限界を迎えた脳がやっと処理完了する。

 それは、アイデア。暴力的な負荷を伴う一つの原則だった。

 暴力的なアイデアが麗華の脳を焼き付ける。

 あえて言語化するのであれば、人間がバイナリデータを1分で理解し読めるようになるような負荷。

 あえて言語化するのであれば、たった数分で世界中の本の知識を詰め込まれるような負荷。


 麗華はすでに認識の外だが、自身の鼻からは鼻血が垂れ、瞬きを忘れた瞳はピンク色に見えるほどに充血していた。

 また、筋肉を制御できていないため、魚のように時折体をびくつかせていた。


 未だ麗華の意識はあのオブジェへと向いていた。

書き終わりってどこで切ればいいんだろうね。

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