表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無限ホテルの雑務員。  作者: AO
禁書
40/53

記憶 0



白い布が裁たれるように皮膚が割れ、赤い液体が滲んだ。

腕を掠めた感触で確信する。

これは紛れもなくメチルの'触手'だ。

(なぜこの目の前の気持ち悪い何かがこの魔法を使えるのか知らないが…今は目の前の攻撃に集中するのが先決か…)

レベルスが「防御結界」を展開する。

テスラは攻撃を全て防ぎ切った。

一通り終わると、彼女はかけだした。

痛みを感じない彼女にとって、攻撃でパフォーマンスが落ちることはない。

出血もレベルスの影響で止まりやすいので、致命傷だけ回避すれば良い。

それは相手の視線を正確に読み取れる彼女にとっては容易いことだった。

「防御結界」を閉じさせ、刃を突き立てる。

刃が触れた瞬間に「落雷」を発動させ、相手の体に電気を流す。

手応えは全くない。

目の前のこの赤くてグロい'何か'は相変わらずその気持ち悪い鼓動を響かせ、半端に開いた口から空気が入ったり出たりを繰り返している。

地響きのような音が耳に残る。

実のところテスラは一抹の不安を抱えていた。

が、それは自分が'これ'に負けることではなく、この怪物がまさかメチルではないのかということだ。

見た目ー身長、顔、足の長さ、手の形、腕の細さ、毛の本数、全てが違うが、ならばなぜ彼の魔法が使えるのかという疑問が拭いきれない。

動きだけはメチルにそっくりだ。

そんな疑問は当然杞憂なのだが、彼女は今メチルがどこで何をしているかなど知らないから当然とも言える。

ヒュン、ヒュンと触手が伸びてくる。

テスラはそろそろきめにかかるべく、「光速」を発動して距離を詰めた。

レベルスを掲げ、そのまま振り下ろす。

が、敵はメチルにそっくりなだけあり、あっさりと防がれた。

触手が腹に直撃し、おおきく後ろに下がった。

レベルスは赤く染まっている。

顔を上げた時、目の前には2本の触手が迫ってきていた。

レベルスが反応できないほどの速度。

(死ー)

彼女は目を瞑った。


少し待ったが、顔には何の感触もない。

おそるおそる目を開ける。

「……だいじょぶ?」

(知らない男だ。…いや、どこかで見たことがあるかもしれない。)

白い剣のアクセサリー。保安チーム最強職員たち、「八剣」だ。

茶髪の彼の後ろから触手が伸びる。

が、発砲音と共に触手が引っ込んだ。

どこから持ってきたのかわからないが、いつのまにか彼の手にライフルが一丁握られている。

「……。僕はリッカ。保安チーム。」

あまり多くを喋りたがらないタイプのようだ。

が、喋ることが嫌いなわけではなく必要に応じて、という感じだ。

(仲良くなれそうだな…)と思った。

「あれなに?新手の寄生虫患者?化け物?メチルさんの弟?あのひと兄弟いないと思うけど。

まあいいや。ここは僕らが対処するよ。」

向こうから足音がいくつか聞こえた。

赤い制服を着た人間たちがこちらに走ってくる。

保安チームの一般職員らしい。

テスラはその場に思わず座り込んだ。

その時、ふっと肩に誰かが触れた。

顔を上げるとー


「テスラさん、戻っていいよ。あとはこっちでするから。」

リッカは言った。返事はない。

「リッカさん、誰と話していらっしゃるんですか?」

職員の1人が言う。

「誰ってー」

彼が振り向いた時、そこには誰もいなかった。

二冊の本が、遺書のように置かれていた。


一方その頃。

同じく港町の、港に面するあたりにレーカードはいた。

後ろに数名の職員を率いている。

「…この化け物は、何なんだ?」

彼らの前にも同じく、赤い何かがいた。

が、テスラが遭遇したものとは違い、身長がかなり低い。

何も喋らない、目の焦点が合わない、皮膚が爛れている。

この気味悪いなにかを前に(さてどうしよう)と流石のレーカードも困惑した。

その瞬間だった。

すっと奴が両手らしきものを前に出した。

嫌な予感が冷たくレーカードの皮膚を伝う。

「総員準備!」

と叫んだ。

が、遅かったようだ。

空が割れるような音がして、大量の弾丸が一斉にレーカードらに襲いかかった。

「ちっ…」

悲鳴を聞きながら彼は魔法障壁を展開した。

金属片が雨のように降り注ぐなか、彼は考えた。

(……この魔法、シャルロッテの「亜空間支配」じゃないか?)

記録チーム特別指定職員、シャルロッテ。

彼の魔法、「亜空間支配」は自分だけの亜空間を所持、具現化、転用する。

あまりあったことがないのでわからないが、記録チームの鉄壁な守備は彼の影響が大きいと聞く。

(となると…)

雨は止んだ。

あたりは元のような静けさが戻ったが、空気は以前と確実に変わっていた。

後ろの職員は数名死亡したようだ。

2級らは流石に大丈夫そうだが、4級以下はもう戦闘できないだろう。

無理もないかもしれない。

なるべく早く戻らなければ、無限ホテルの方がまずい。

だが残念なことに彼は知っていた。

「亜空間支配」の真骨頂を。

ガチャ、ガチャという嫌な音がする。


「なんなんだよ、こいつマジで!」

アルガーが叫んだ。

彼女も保安チームの一翼である。

大きな斧をなんども振り回すが、合わない。

逆に、敵の攻撃も当たっていない。

彼女の相手をしているのは、赤い直方体型の何かだ。

さっきからヒュンヒュンと動き回るだけで、全く攻撃が当たらない。

「ちっ……」

「おい、助けようか?」

そばの男が問う。

ローテル一級。「八剣」の1人だ。

が、彼女には届かないらしい。

(…はあ、どうして彼女はこうもまあ話を聞かないんだろう…)

彼は諦め、おとなしく待つことにした。


そこは静かな空間だった。

白い木の椅子に座っていた。

声が聞こえた。

聞き覚えのある声だった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ