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無限ホテルの雑務員。  作者: AO
禁書
35/53

シリウス対エラルド




観客はほとんどエラルドのことなんて忘れていた。

当然である。雑魚処理したらスタジアムの端にポツンと立っていただけだから。

シリウスはもう息も絶え絶えだったし、メチルは気絶しかけている。

(…ごめん、シリウス。)

「そうだった。まだ君がいたんだったね。ごめん、忘れてたよ。」

シリウスがエラルドに向き直る。

「謝らなくていいよ。当然のことだから。」

と言いつつ、魔法術式を発動させる。

「落雷」。

視界からふっとシリウスが消えた。

体を大きく右に逸らす。

レベルスの刀身が見えた。

「メチルの後とはいえ、レベルスのおかげで結構体力も回復したんだ。

さっきのような一撃はもう撃てないけどね。」

シリウスの声が聞こえる。

青い軌跡が自分の足を掠めたのがわかる。

だが…

「明らかに遅くなってるけど」

エラルドはしっかりとシリウスの腕を掴んだ。

そしてそのまま壁に放り投げる。

壁が崩れていくのが見える。

ポケットに手を入れ、ふっと息をつく。

「…投げたのは愚策じゃない?」

後ろから声が聞こえる。

シリウスの声だ。

「ああ、君はそう思うかもな。」

剣の冷たい感触が首を伝って頭にまで流れた。

「おとなしく降参しろ。そうすれば、痛い目に遭わずに済むぜ。」

シリウスの声がぐるぐると頭を回って響く。

目を閉じる。

「…なあシリウス。俺はね。」

視界の端で、倒れたメチルを見る。

(今の所は全部作戦通りだ。)

エラルドは信じることにした。自分の可能性を。

「なによ。」

シリウスが聞く。

「俺は、約束を守る主義なんだ。」

そういうと、彼女の腕に激痛が走った。


「……!」

彼女は大きく後ろに下がった。

(これは…)

「シリウス。ちゃんと倒すよ。そうしていないと、あいつの友人を名乗れないからな。」

エラルドの魔法術式「術式保管」は、自分が今まで戦った相手の魔法を10個まで保管し、自分の魔法として使える。

今彼が使ったのはー

「…「魔跡」…。なぜ君がこれを?」

魔法「魔跡」。自分がかつて通った領域内に攻撃を自在に付与する。

「…。いや、何でもない。」

シリウスの腕が取れそうだ。

「なんだ、十分に強いじゃないか。正直舐めてたよ。」

彼女はせめてもの時間稼ぎで笑った。

が、当然そんな時間は与えられない。

次の攻撃が飛んでくる。

頬を、首を、肩を、血が伝う。

「もうお前こそ降参しろよ。いい加減殺すしかなくなる。」

エラルドは言った。

思えばおかしかった。

だが、最初に必ず一つ、ランダムに魔法を得られる。

その魔法を使って他者を撃破することでさらに使える魔法を増やしていくのだ。

だから最初に得る魔法が何かによって全てが決まる。

シリウスは、最初の彼の魔法は「落雷」かと思っていた。

自分やメチルが魔法に選ばれた運命だとしたら、彼は幸運そのものに選ばれた存在だ。

「失われた魔法」である魔跡。

古代、はるか昔に使われた魔法だ。ある時を境に使用者ぱったりと消えてしまった。

使えるのは唯一彼のみだろう。

「…降参、ね…。それはどうかな!?」

エラルドは背中を何かが貫いた感触に襲われた。

「私は、というかレベルスは転移もできるんだ。君の攻撃を避けるなんて容易いさ。」

「関係ない。通った道を全て切り裂くだけだ。」

シリウスの姿が消えた。

背中の傷は浅い。

彼女が現れは消えを繰り返しているのが魔力感知でわかる。

早い。早すぎる。

(が…範囲攻撃で潰せばいいだけの話。)

エラルドが「魔跡」を発動しようとした瞬間。

レベルスの刃が、しっかりとエラルドの肩を切り裂いた。


シリウスは勝利を確信した。

エラルドは間違いなく切られた。

が、その瞬間、彼女はありえない感触に襲われた。

切った感触が人間ではない。

(…これは、まさか…)

そう思った時には彼女はすでに壁に激突していた。

「さっき連中と戦った時、1番最初に倒したやつからもらったぜ。分身人形をね!」

そう叫ぶ声が聞こえる。

「いくぜ、シリウス。「滅跡」!」

滅跡。

空間ごとえぐり相手を木っ端微塵にするエラルドの「必殺技」である。

直撃した。

また砂埃が上がったせいでよく見えない。

目を凝らすと、そこに倒れたシリウスがいるのがわかる。

「…勝った…のか?」

エラルドはつぶやいた。

かくして決着はついた。

特別魔法科の優勝が決まった。

エラルドはそっとメチルを抱き起こした。

「…お疲れ。見てたぞ、試合。」

メチルがそうつぶやいたのが聞こえた。

「お前こそ。寝ててもいいぞ。」

「いや、大丈夫だ。もう一人で歩ける。」

若干ふらついているが、ある程度は歩けるようだ。

「そっか。」

そうエラルドは笑って腕を頭の後ろで組んだ。

実況がようやく彼らの勝利を伝えた。

二人は仲間の待つ準備室に帰っていく。


「おかえり。」

アゲハが言った。

「ああ、ただいま。ちょっとトイレ行ってくる。」

エラルドは返事をし、ささっと出ていった。

「今から表彰式だっけ?」

ポライトが面倒くさそうに言った。

「悪かったな、何もできなくて。」

レーケルが謝る。

「別に大丈夫だ、勝てばよし。

表彰式はだるいからパスで。」

とメチルはいった。

そしてそのまま椅子に座ると、寝てしまった。

その時だった。

ポライト、レーケルは妙な顔つきでそっとその場を離れた。

マルトスもメチルを抱えて若干ニヤつきながら後ろの通路から外に出ていった。

残されたのは、アゲハだけだった。

「あいつらどこに行ったんだ?」

エラルドが帰ってきた。

困惑している。

「あの…」

アゲハが顔を赤くしながら話しかけた。


























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